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猫耳フードと旅する少女 ~巡りまわる不思議な世界~  作者: 灰猫 無色
大草原と石壁世界
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大草原と石壁世界 #6

 手の甲に爪が張り付くほどの反り返りに、おじさんは驚き手を引っ込めます。


「な、なんだ!? 貴様、いったい何をした!!?」

「レコ、汚れてない?」

『ああ、大丈夫。それよりアーシェこそ平気?』

「うん! やっぱりレコが乗ってないと落ち着かないねぇ」


 驚きと恐怖と困惑に顔を歪ませたおじさんが叫び、けれどアーシェとレコは彼がいないかのように鳥居の外で身なりを整えていました。

 そしてアーシェは悲しそうに眉尻を下げて、それからペコリとお辞儀をしました。


「あのね、この街を作ってくれてありがとう。宿のご飯は美味しかったし、涼しくしてくれる箱とかお風呂とか、すっごく嬉しかったんだぁ。給仕してくれたネコちゃん、とっても可愛かったんだぁ」


 その時のことを思い出したのか、まるで幼い子供の様に笑うアーシェは、けれどすぐに悲しそうな顔に戻ります。


「でもねでもね。変えちゃった人たちと、もっとお話できなかったのかなぁ」

「黙れ」

「お外の草、全部生き物や建物だったんだよね。喋ることも動くこともできないなんてことをしなくっても、良かったんじゃないかなぁ」

「黙れ……!」

「こんな場所じゃなくって、もっと広いところで一緒に笑えなかったのかなぁ」

「黙れ黙れ黙れ黙れ黙れぇ!!!!!!!」


 バリン! と、一斉に蛍光灯が割れ、けれど何故か明るいままの洞窟で、おじさんは怒り、足を踏み鳴らします。

 そして地団太に合わせて洞窟の奥から見えない何かが、ドロリと洞窟を埋め始めました。


「もういい!! このまま、私の贄となれ!!」


 そして一気に加速したかと思うと、それはアーシェの目の前でピタリと止まりました。

 おじさんは力を込めて何かを押し込もうとしている様ですが、まるでそこに壁があるかのように動きません。


『ダメだよ、アーシェ』

「んぅー、やっぱりダメだねぇ。神様相手じゃ、これが限界かぁ」

『こんな星……いや世界なんてごまんとあるんだよ。わざわざ何かする必要なんてない』

「でもねぇ、アーシェはこの街好きだよ? お話もせずに変えられた人も体験してもらえば好きになるかもしれないし、見てみたいんだよぉ」

『この星は、コイツの創ったものなんだ。コイツが何をしようが、ボクらがどうこう言える立場じゃない』

「そうだねぇ、そうかもしれない。でもね」




「レコを、壊そう(殺そう)としたんだよ?」


 静かに、静かに空気が変わる。

 平坦で、無味で、感情を感じられない、どこか歪な囁きが、神の耳を静かに震わせる。


「なん……」


 神は思わず自問した。

 今私が感じているのはなんだ。

 怒り、憎しみ、憎悪。

 けれどそれ以上に何も感じない、理解不能を恐怖している。


「それはとっても悲しいことなんだよ。アーシェはレコと一緒に旅がしたいの、レコと一緒に遊びたいの、レコと一緒に生きていたいの。それを壊そうとする人は、とっても憎いんだよ」

『アーシェ……』


 ふわふわの猫耳フードを撫でるその姿は儚げで愛らしく、それでいて平坦で。


「だからねレコ。アセビア・マリリスが願います。どうかこの星の変えられた存在を元通りに、そして歪んでしまった神様の力を、取り除いてあげて」

『――契約者の願いを確認。起動条件、適合。実行内容、この星の変えられた存在を元通りに、荒神の力を除き、人とする。代償――触覚』


 無機質な声で、無感情に、機械的に、事務的にレコは読み上げる。

 彼女の魔力とそれ以上の、神さえ超える無限大の魔力を持って奇跡を実行する。

 それは汚泥のような神の魔力を消し去り、空気の(よど)みを払い、干渉できないはずの神の本体をも変質させていく。


「馬鹿な莫迦なバカな!? ありえん、こんなことは断じてあってはならない!!」


 完全なる上位存在であり、まず枯渇することがないであろう神の全力による抵抗が、まるで赤ん坊のように一方的に蹂躙(じゅうりん)される。


 星すら砕く力でも指人一つ動かせず。

 あらゆる魔法を扱える魔力は消し去られ。

 怪異と化した化身は抵抗すら許されず土へと還る。


「私は神だぞ!? この星を作った、外の世界から来た星神だぞ!! たかが魔女と憑き物程度に、何故だああああああ!!!!?」

『――悪いねカミサマ』


 ゆっくりと、疲れた声でレコは小さくなっていく神を笑った。


『星を創生する程度(・・)、たかが魔女と憑き物程度でも見飽きてるんだよ』

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