帰宅
あー、マズったなー……
一ノ瀬さんを送ってから1人で歩いているのだがずっとさっきのことばかり考えている。
一瞬、走ったらもしかしたらネネと涼介に合流できるんじゃね? と思ったがデート中に邪魔するのは気が引けるので却下した。
もし俺が邪魔された立場だったら絶対邪魔したやつを殴る自信がある。
もう、ボコボコですよ、俺が。
いや負けるんかい。弱っ、俺。
だがふと、ある疑問が出てきた。
一ノ瀬さんが乗ったバス、俺の家と逆方向じゃね?
そうなってくるとまた疑問が生まれる。
じゃあ何で俺の家の近くにある公園のベンチにいたんだ?
いや、まぁ、あの公園、俺の家と学校どっちが近いかと聞かれると圧倒的に学校なんだけども。
そんなことを考えていると、不意に、ぐう~~~、とお腹が鳴った。
(お腹空いた……)
よく考えてみるといつもなら晩御飯なんてとっくに食べ終わっている時間だ。
一瞬コンビニに寄って何か買って食べようかとも思ったがお金が無いことを思い出す。
完全に乞食である。
あまりにもお腹が空きすぎるあまりさっきまでの疑問は冬夜の頭の中から完全に消えていた。
そんなこんなで気がつけば家にたどり着いていた。
玄関を開け、靴を脱ぎ、揃えてからリビングへ。
「ただまー」
「あら、おかえり~。随分と遅かったわね~」
部屋に入ると母の秋穂がキッチンで洗い物をしていた。
ちなみに母はおっとりとした性格で、年齢の割には見た目が若く(と言うか名前からしてもう若い)、冬夜と並んで歩くと偶に姉弟と間違われることがある。
違うんです。実の姉はもっとゴリラなんです。それはもうムカついてたら弟にプロレス技をかけてくるぐらいには。
「まぁ、ネネと涼介としゃべってたし」
勿論、一ノ瀬さんのことは伏せる。危険回避と言うやつだ。……姉貴にはバレかけたけど。
「そ~なの~、珍しいわね~」
「まぁ、たまにはね。それよりお腹空いた。今日の晩御飯何ー?」
「え、いるの?」
「え、ないの? なんで」
「え~、何でって、作る時に春ちゃんに聞いたら『今日冬夜は寧々花ちゃん達と食べてるみたいだから要らないんじゃない?』って言ってたから~」
「うそ……だろ……」
晩御飯がカップラーメンに確定した。
星成家の母は怒ると怖い……らしい。