2人きりの会話
あの後も話は弾み、気がつく頃にはあたりは暗くなっていた。
スマホで時間を見てみると19時前だった。ざっと3時間程雑談をしていたのではないのだろうか。
3時間も水で耐えたのすごくない?
「あ、もうこんな時間」
「あ、本当ですね」
「じゃ、そろそろ帰りますか」
さすがに時間が時間なので少し急ぎ気味に帰り支度を始める。
帰り支度を済ませたら4人揃って店を出る。
「いやー、話した話したー」
「こんな時間まで友達と話すなんてさしぶりだわー」
寧々花も涼介も楽しかったようだ。
と言っても後半はほぼ寧々花が一方的に話して他の3人が相槌を打つ、という感じだったが。
「じゃ、帰ろっか」
「そうですね」
「だな」
どうやら解散するようだ。
となると、一ノ瀬さんはバス通学らしいので3人でバス停まで一ノ瀬さんを送ったあと一緒に帰る感じか。
そう思っていたのだが、寧々花からは予想とは違う言葉が発せられた。
「じゃ、トーヤ。ちゃんと一ノ瀬さんをバス停まで送ってあげなよ」
「え、」
え、みんなで行くんじゃないの? バス停近いじゃん。せいぜい5分ぐらいじゃん。なんでぇ?
「みんなで行くんじゃねーの?」
「ちっ、ちっ、ちっ、残念だけどこれから私たちは下校デートなのだよ。だから一ノ瀬さんのことは頼んだよ、トーヤ」
「と、言うことらしい。すまんな、冬夜」
そう言い残すと2人は家の方に歩き出した。
いや、下校デートて。いつもしてんじゃん。
そうツッコミそうになったが仕方がない。ここは諦めることにしよう。
リア充め、爆発しろ。
「じゃあねー、一ノ瀬さん!また明日学校でねー!」
寧々花は歩きながら振り返って手を振ってそうい言った。
明日から容赦なく絡みに行くんだろうなー……
そう思いながら横にいる一ノ瀬さんに目を向けると寧々花達にお辞儀をしたあと控えめに手を振っていた。
……うん。なんか……いいね。
何故か分からないが尊みを感じた。
「じゃあ、俺達も行きましょうか」
「そうですね」
冬夜の提案に一ノ瀬さんは少し微笑みながら頷いた。
そうして2人は歩き始めたのだが、人見知りの冬夜にはまだまともに話して数時間程の人と2人きりで話せるコミュニケーション能力なんて無く、ただ無言の時間が過ぎていた。
……やべえ、超気まずい……
そんなことを思っているとバス停が見えてきた。結局何も会話をすることはなかった。
……ネネよ。私にはまだ荷が重いでごわす。
そしてバス停に到着。
冬夜が「じゃあこれで」と別れを告げようとしたその時、一ノ瀬さんが口を開く。
「あ、あの、星成さん。今日は、ありがとう、ございました。その……楽しかったです」
「あ、えっと、こちらこそ、楽しかったです。……えっと、じゃあ俺はこれで……」
「あ⋯⋯ま、待ってください!」
冬夜が帰ろうと回れ右した瞬間、一ノ瀬さんが冬夜の腕を掴み、引き止める。
え、ちょっと待ってください。何かのイベント発生ですか? え、告白? まさか……!?
まさか引き止められるとは思っていなかったので驚いてオタク脳が稼働しだしたが、そんな事は起こるはずもなく、
「一つ……聞いてもいいですか……?」
「……へ?」
「どうしてあの日……声を掛けてくれたんですか?」
あの日……おそらく一ノ瀬さんに傘を貸した日のことだろう。
どうして、か……やばい、どうしよう。ラブコメ的な展開を期待して声を掛けました、なんて口が裂けても言えない。
質問に答えることが出来ず固まっている冬夜に一ノ瀬さんが「理由が何であれ」と言葉を続ける。
「あの日はありがとうございました。おかげで風邪を引かずに済みました」
「いや、別にあれくらい……」
どうということはない、そう言いかけたが一つ気になったことを聞いてみる。
「……俺も一つ、聞いていいですか?」
「何ですか?」
「一ノ瀬さんはなぜ雨の中ベンチに座っていたんですか?」
その質問をした時、一ノ瀬さんの表情が曇った。
「……それは……言いたくありません」
そう言った時の一ノ瀬さんの表情はいつもの一ノ瀬さんからは考えられないほど暗かった。
幾ら鈍い冬夜でも地雷を踏んだとすぐにわかった。
「あ、その……ごめん……」
「あ、いえ、こちらこそすみません……」
非常に気まずい空気が流れたがそれも束の間、一ノ瀬さんが乗るバスがやって来た。
「あ、バス……来ましたね」
「そう……ですね」
「では、また学校で」
「あ、はい、気を付けて」
そう言って俺たちは別れた。
投稿頻度遅くて、ゴメンナサイ。
っていうかこの作品、私の思いつきで書いてるんですけどどうなんでしょうか……