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仲良くなりたい放課後デート

「んー、あ、この『ベリーベリーホイップ』ください!」


「かしこまりましたー」


「一ノ瀬さんは何にするのー?」


「え、えーと……じゃあこの『ストロベリーチーズケーキ』で」


「かしこまりましたー」


こんにちは、一ノ瀬です。


私は今、白月さんとデートをしています。

なぜこうなったかは自分でもいまいちよく分かっていません。


これは遡ること数十分前――




「一ノ瀬さーん!」


授業が終わって帰りの支度をしている私のところに、クラスメイトの白月さんが私の苗字を呼びながら小走りで近づいてくる。


「はい、どうしましたか?」


「今日の放課後って空いてる?」


「今から、ですか?」


「そうそう!」


「そうですね、テストも近いですし今日は帰ってテスト勉強でも、と思っているところです」


「うへぇ、真面目だなぁ……こほん、まぁそれはいいとしてつまり空いてるってことだよね?」


「えっと、まぁそうですね。空いてますよ」


「よしっ、じゃあ一ノ瀬さん!」


「はい?」


「今からデートしよっか!」


「……はい?」




と、そんな感じで今に至ります。

それで今はクレープ屋さんに来ています。


「お待たせしましたー」


全然待っていないけど、そう言ってお店の人が私達が注文した商品を渡してくれる。


クレープってこんなに早く出来るんですね。ビックリです。


「はい! 一ノ瀬さん!」


白月さんが私の分も受け取ってくれたみたいでそのまま渡してくれます。


「あ、ありがとうございます」


「ううん、こっちこそごめんね。急にデートしよ、なんて言っちゃって」


「い、いえ、確かに驚いたけど嬉しかったですよ」


「そっか、それなら良かった」


「はい」


そんな会話をしながら近くのベンチに二人で座る。


「じゃ、食べよっか!」


「そうですね」


「いっただっきまーす!」


「いただきます」


そしてクレープを一口。


(あ、美味しい)


 一口食べた瞬間、そんな感想が出た。


生地は出来たてなこともあり、もちもちで、具はチーズケーキにイチゴのソースみたいなのがかかっているだけのシンプルなものだが、生地に包まれているので、それぞれの味の主張が抑えられ、程よい甘さになっている。


「美味しいね!」


「そうですね!」


「流石トーヤ。いいお店見つけるのが上手い!」


「そうなんですか?」


「うん。トーヤって甘いものが好きで美味しいスイーツのお店とかいっぱい知ってるんだー!」


「へぇー! そうなんですね!」


(星成さんってスイーツ好きなんだ……以外かも)


自分の気になる人の知らない一面を知れて嬉しい半面、本人の口からではなく他の人からの情報なのが少しモヤモヤする。これは嫉妬なのだろうか、なんて考えていると隣の白月さんからとんでもない事を聞かれた。


「ところで一ノ瀬さんってトーヤのこと好きなの?」


「う゛ん゛゛!? けほっ、けほっ」


「だ、大丈夫!? 一ノ瀬さん!?」


慌てて白月さんが鞄から飲み物を取り出す。

それを受け取って流し込む。


びっくりしすぎて食べていたクレープが喉に詰まってしまった。


あぶない、あぶない。危うく死んでしまうところだった。


「ご、ごめんね。変なこと聞いちゃって」


「い、いえ……大丈夫です……」


本当は大丈夫ではなかったが。


「そ、それで、なぜそう思ったのですか?」


「うーん……なんとなく?」


「そ、そうですか……」


まだ誰にも言ってないし、そもそもこれが“好き”という感情なのかわからない。


生まれて約16年。一度も“恋”というものをしたことの無い私は恋愛感情というものを知らない。


もし仮に、それがあったとして想いを伝えるにしろ、まだ高校に入って、それもまだまともに話したのが昨日の放課後だけなのに、そんな関わりの薄い人間に告白されても迷惑なだけだろう。

それが今の一ノ瀬の考えである。


(それに、あの日のことも覚えてないだろうし……)


「それでそれで? どこが好きなの~?」


「うぇ!? い、いや、まだ好きとかわかんないですし……」


一ノ瀬の顔を赤らめて俯いてモジモジする仕草に寧々花は内心『うわ何この子超可愛い! お嫁にしたい!』なんて思っていた。


「そ、それより! 今日誘ったのは恋バナするためなんですか!?」


この空気に耐えられなくなった一ノ瀬は露骨に話を逸らした。


「えー? 教えてくれてもいいじゃん~」


「言いません!」


「も~、つれないなぁー。ま、いっか。デートの目的だよね。確かに三分の一くらいはそうかな」


そう言いながら白月さんは前を向く。


「残りの三分の二は?」


「残りはねー……」


そこまで言うと白月さんは再び私を見て


「一ノ瀬さんと仲良くなりたかったから!」


そう言って笑った。


「仲良く、ですか」


「そういうこと~♪」


「なんでですか?」


「なんでって……なんかトーヤみたいなこと聞くね……。うーん、そうだなー、単純に前から話してみたかったってのもあるけど……」


「あるけど?」


「トーヤが人の名前覚えるのなんて珍しいな~って思って」


「星成さんが?」


「さっきね、トーヤから『そういえば昼休みは行けなくてごめん~、一ノ瀬さんにも謝っといて~』ってメッセージ来てて、一ノ瀬さんの名前覚えてるんだって思って」


「そんなに珍しいんですか?」


「もーめちゃくちゃ珍しいよ! 例えるなら……ポ〇モンのストーリー中盤に野生で色違いが出たくらい珍しい」


「それ、例え方違うくないですか?」


「ま、まぁそれだけ珍しいってこと!」


「そ、そうなんですね……」


「うん。私の記憶が正しければ一ノ瀬さんで二人目かな」


その言葉を聞いた瞬間、チクリと胸が痛んだ気がした。


 私で二人目ということはもう一人いるわけで。


「ち、ちなみにその一人目って……」


「え? う、うーん……確か“さいじょう”って名前だったような……ごめん、忘れちゃった」


「いえ……」


男の子だろうか、女の子だろうか。ヤバい、なんかすごくモヤモヤする……


 “さいじょう”といえば一人、同じクラスにいた気がする。


「さて、クレープも食べたことだし、もうちょっと遊ばない?」


そう白月さんが提案してくれた。


正直、その人が誰なのかすごく気になるし、モヤモヤするけど、それを忘れるために、


「そうですね、もう少しだけ遊びましょうか」


そう言って白月さんとのデートを楽しむことにした。

危ない危ない、ギリギリゴールデンウィーク中に間に合いましたね。

いやー、忙しくてねぇ……

仕方がない、仕事だもの。(言い訳)

皆様は良い休日を過ごせましたか?

休むことは大事ですよ!


ところで一ノ瀬さんの名前がないって?


べ、別に忘れてるわけじゃないんだからね!


というのも理由はあります。後々分かると思います。

まだ先ですが。


あ、全然そんな素晴らしい名前だとかそんなのじゃないんでハードル上げないでくださいね。

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