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幼なじみの思い

前言ってたアレです。

「じゃあねー、一ノ瀬さん!また明日学校でねー!」


あの2人に手を振りながら私はりょーくんを連れて下校デートを始める。

とはいっても、ただ一緒に家に帰るだけだけど。

でもって、真の目的はそれじゃない。いや、デートももちろんしたかったけど。


だってそんな機会あんまり無いし。元凶であるトーヤは何もしてくれないし、手伝ってもくれないし。ちょっとくらいはしてくれてもいいじゃん。

そんな感じでさっき別れたトーヤにグチグチ文句を言っておく。直接言ったら絶対面倒くさそうな顔するし。


とまぁトーヤへの愚痴はたくさん思いつくんだけどなぁ……


トーヤの悪いところはたくさんある。それはもうめちゃくちゃ。いいところなんてあるの? って逆に聞きたくなるくらい。


でも私は、私達は知っている。

トーヤにはいいところもいっぱいあるんだってこと。


だって小さい頃から一緒にいるから。


今思えばかなりの年月一緒にいると思う。

さすがにりょーくんの方が出会ったのは早いけど、それでもトーヤとも幼稚園、小学校、中学校と、もう十年以上も幼なじみやってる。

加えてこれからの高校三年間。

もうそんなに経つのかと思う反面、時間が経つの早いなぁーとも思う。


そんな彼に遂に訪れた春。

私的には是非とも幸せになって欲しい。


それに相手は学年一、いや、学校一可愛いと言われる一ノ瀬さんだ。

そんな人逃して欲しくない。


けれど当の本人であるトーヤは気付いていないと思う。むしろ今のところ全然興味無いんじゃないかとも思う。


トーヤのそういうところ結構ドライなんだよな……

しかも高校に入学したての時に「恋愛しないの?」って聞いたら「最近、アニメとか観すぎて目が肥えてきた」とか何かヤバい感じのこと言ってたんだよな……

つくづく夏華ちゃんに毒されてきてるなと思う。

これは本気でどうにかしないとヤバい気がする。


そんなトーヤだけどやっぱりいい人とくっついて欲しいわけで。


幼なじみとしてちょっとしたお節介はしたい。

まぁほとんど仕返しみたいな感じだけど。


っていうかそもそも一ノ瀬さんは本当にトーヤのことが好きなのだろうか。

そもそもこれは私の勘だから実際はどう思ってるのかなんて知らない。もしかしたらこれは単に私の勘違いなのかもしれない。


もしかしたら一ノ瀬さんは何か裏があってトーヤに近づいて来たんじゃないか。

裏では女神って言われているみたいだけど、それは表の顔で、裏の顔は悪魔なんじゃないか。

利用してやろうとか思ってるのではないか。


そんな思惑があるか、単に好意があるか。

どっちかじゃないと普通はあんな第一印象最悪なトーヤに近づいたりしないだろう。


なんてそんな悪い考えまで出てきてしまった。


これはいけない。一ノ瀬さんに失礼だ。


でも、もしそうなら、

私達はトーヤを守ってあげないと。


それくらいしか出来ないから。


だからとりあえず、一ノ瀬さんがどっちなのか知らなければいけない。


だけど確かめると言っても私一人では正直不安だ。

だからりょーくんにも手伝ってもらおう、それがこの下校デートの真の目的だ。


「ねぇ、りょーくん」


「んー?」


「一ノ瀬さんのこと、どう思う?」


「え、何、なんか試されてるの?」


私が率直に一ノ瀬さんの印象について聞いてみたらりょーくんは慌てた感じで変に誤解してしまった。

これは私の聞き方が悪かったね……


「ごめんごめん、聞き方が悪かったね。一ノ瀬さんの印象について聞きたかったの」


「あー、なるほどね。」


そう言ってりょーくんはホッと安心したかのように息をついた。


何その反応……ちょっとモヤモヤするんだけど。


「そーだなぁー、印象か……確かにめちゃくちゃ可愛かったな」


「あ?」


「ごめんごめん! 言い方が悪かった! 周りの奴らが言ってただけだから! 俺は寧々花が一番だから!」


彼女である私の前で他の子に可愛いなんて言うからちょっと低い声出ちゃった。

でも一番、なんて言われると嬉しいな……ちょっと恥ずかしいど。


「ほ、他には?」


「他には……今日は初めてだったし、ちょっとしか話せてないけど、いい人、だと思う」


「そっか、ほとんど一緒だね」


「何が?」


「一ノ瀬さんの印象」


「何でそんなこと気にするんだ?」


「だって一ノ瀬さん、トーヤのこと好きじゃん」


「え、マジで?」


「まぁ勘だけど」


「勘かよ」


「うん」


「そっかー、……でも、そうだといいな」


りょーくんの答えは私とほぼ一緒。そんな些細なことでも嬉しく思う。

なんだか惚気けているようでトーヤには申し訳なく思ってきた。

頬が熱くなってきているのがわかる。


 我ながらなんと単純な……


 そんなことを思っているとりょーくんが言葉を続ける。


「それに、なんだか嬉しい」


「嬉しい?」


「だってもし仮に、寧々花の言う“勘”が当たってるとしたら一ノ瀬さんは冬夜のことが好きなんだろ? それって冬夜のいいところを知ってる人が増えたってことじゃん」


それは確かに嬉しいことだ。今までの人達は、トーヤのことが嫌いか、そもそも関わろうとしなかった。

だから私達みたいにトーヤのいいところを知っている人なんてほとんどいない。 りょーくんはそう思ったから“嬉しい”と言ったのだろう。

でも、だからこそ――


「でも、やっぱり不安」


「……うん、そうだね……」


この二人には不安があった。


冬夜を嫌ってる人も確かにいる。それは紛れもない事実だ。

でもその人達は最初から嫌っていた訳では無い。

嫌われた原因は冬夜にあるが、寧ろ初めはかなり好かれていた。

それ故に寧々花と涼介は不安になった。


“一ノ瀬さんも冬夜のことを嫌いになってしまうのではないか”と。


だから寧々花は一ノ瀬さんのことを知ろうと思った。


後に冬夜の暗い部分を知ることになっても、変わらず冬夜のことを悪く思わないか。


冬夜の支えとなってくれるのか。


私達には無理だった。


彼の支えになれる人なんてそうそういるはずもない。

幼なじみである私達にも無理だったのだから。


でももし、一ノ瀬さんがそうなれたのなら、

きっと――


私達は彼から離れた方がいいのだろう。


そばにいるなんて、友達でいるなんて、そんな資格、私達には無いのだから。


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