出会いは突然に
「………」
雨が降る中、傘もささずに公園のベンチに座る少女が一人。
こんな場面に遭遇した時、あなたはどうするだろうか。
話しかける?それとも無視する?
一つの例を見てみよう。
ここに一人の男子高校生、星成冬夜がいる。
彼の場合は――
……どうしようかな……
そんなことをかれこれ十分程考えていた。
だって悩むじゃん。こんな雨の中傘もささずにベンチに座っていらっしゃるんですよ?こんなん絶対訳ありですやん。面倒事は嫌なんだよなぁ……スルーしようかなぁ……でもなぁ……公園通り抜けないと遠回りになるんだよな……
いや、でも待てよ?こうゆう時って大体ラブコメの始まりなんだよなー。……よし、決めたぞ。話しかけよう。そうだそれがいい。
ラブコメ王に、俺はなる!
「……こ、こんなところで何してるんだ。か、風邪ひくぞ」
無理だわ。言葉詰まるし。王どころかスタートラインにも立てそうにないや。もうだめです。
しかもさ、ヒロインは大体こうゆう時って――
「あなたには関係ありません。話しかけないでください」
デスヨネー。そうなりますよね、分かります。ヒロインじゃなくても誰だって知らない人に話しかけられたらそうなるわ。俺だってそうだ。やはりスルーが正解だったか……ミスったな。負わなくていい傷を負っちゃったよ……
しっかしこの人、どっかで見たことがあるような……ないような……? 制服ウチの学校のだし。うーん、誰だっけ。
………ま、いっか。思い出せん。
それよりどうしたものか。話しかけた手前、さすがに何もしないってのはちょっとなぁー。
そうだ、傘あげよう。ここで何もせずに風邪をひかれたら目覚めが悪い。
そう思い、使っている傘を差し出す。
「ん。これ、やる。返さなくても、いいから」
あくまで優しく、これ以上警戒心を持たれないように言おう。そう思ったのだが、自身のコミュニケーション能力が無いせいか、それとも人見知りな性格のせいか、言葉が上手く出ない。
だめだ、片言になる……なんだコイツって思われてそう。
予想は的中し願いとは裏腹に、少女は冬夜の意図が解らないからなのかより一層警戒心を強める。
「いえ、別に必要ありません。お返しします」
ほらー、めっちゃ警戒されてるじゃん。どうしよう⋯⋯どうやったら受け取ってくれるだろうか⋯⋯
本来ならここで引き下がった方がいいのだろうが俺にもプライドというものがある。ちっぽけだけど。
とりあえず何がなんでも受け取って貰いたい。
夜は気持ちよく眠りたいんだよ……
「……要らない。折りたたみあるから。逆に見てるこっちが鬱陶しい」
「……っ、……そ、そうですか。では、ありがたく受け取らせて頂きます」
「ん、それで、いい」
そう言い残し、冬夜は足早にその場を去る。
受け取って貰えた。それは喜ばしいことだ。だが、冬夜の内心は――
うわあぁぁぁぁああ!!! やっちゃったよ。どうしよう……
なに、鬱陶しいって。めちゃくちゃ口悪いじゃん。もー最悪!マジで感じ悪い奴じゃん。恥ずかしすぎて思わず逃げちゃったよ!
……はぁ、あの子と学校で会ったらどうしよう。超気まずくなるじゃん……
……いや、さすがに会わないだろ。
というか待てよ?
俺、相手の顔見てねーわ。
はじめまして、みけネコと申します。よろしくお願いします。