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5 ヒーロー抹殺計画(1)

 翌日、ヒーローは私達と同じ学年に転入してきた。


 もちろん、それは偶然ではない。

 性根が腐りきった創造主によって仕組まれた必然である。


 だが、そんな創造主の身勝手のおかげもあり、私は普通に日々の生活を送っているだけで、敵のヒーローの情報を苦労することなく集めることが出来た。


 ヒーローの名前は、マーティ・ストゥ。


 今までずっと養父と二人暮らしを続けていて、学校に通うのはうちの学園が始めてだと言う。

 そんな言葉を覚えたての山猿のような人間が、なぜ私やセージョと同じ学年に転入して来れたのかというと、マーティは転入試験を長い学園の歴史の中で初めて満点で通過した人間だからだった。 


 転入した後のマーティは、あらゆる分野で私達を驚かせた。


 学業の成績は、転入して初めてのテストで私を抜いて主席となり、あらゆる国の言語に通じていて、歴史学や植物学にも精通していた。体技のクラスでは、人間離れした運動神経を見せ、世界中の格闘術を学んでいた。


 この世界の創造主はとうとう真性の●●●●になった。

 私はそう確信した。


 とはいえ、そんな何もかもが出来すぎるマーティが、同じ学年の女子達から恋い焦がれないわけがなかった。


 結果、学年のほぼ全員の女子がマーティの女になりたがった。

 無論、私は例外だ。


 そして私の愛するセージョもまた、マーティに惹かれ始めているようだった。

 ある日、私が学園の廊下を歩いていると、クラスメイト達に囲まれて楽しそうに過ごすマーティを、物陰からじっと見つめているセージョがいた。


 セージョの表情は、完全に恋に恋をしているアレだった。

 そんなセージョの姿を横から眺めながら、私は学園の柱の石を素手でえぐりとって心の中で静かに叫んだ。


 ――早く、マーティを殺さなければならない。 




 とはいえ、マーティは魔法が使える。さらに、マーティと私の身体能力の差も歴然で、クラスメイトの人望も厚い。

 マーティを殺すには、策を練らねばならない。


 そう考え、私は自宅の倉庫に行って、マーティを殺すのに適当な武器を探した。


 ロケットランチャーなどの単純な射撃攻撃はダメだ。……間違いなく魔法で防がれる。……では、トリニトロトルエンを使った気化爆弾で一酸化炭素中毒にするのはどうか……ダメだ。爆炎を防げたということは、あの光の玉の中では、酸化反応が起こっていなかったということに他ならない……。


 あれこれ悩みながら倉庫をぐるぐると歩き回っていると、ふと、視界の中にそれが入った。それは、とても小さな小瓶だった。


 人間には絶対に鍛えられない箇所がいくつかある。

 その一つに内蔵という箇所がある。


 私はマーティを毒殺することに決めた。



 マーティが転入してきてから一ヶ月、そのクズ男は自分の●●●で●●られたがるビッチどもの中から、とりわけ容姿の優れた忠実な●●●●雌犬を何匹か選び、日常的に侍らせはじめた。


 私はその中の一匹を金で買収し、マーティの食事に毒を盛るよう命令した。


 決行は、昼休みの食堂。

 周囲の仲間にチヤホヤされて承認欲求を満たし、マーティが油断をしきったその時がベストなタイミングだった。

 私はもしもの時のためにセージョを部屋に閉じ込めた後、マーティの死に様を鑑賞するために珍しく愚民どもが騒ぐ食堂へと足を運んだ。


 にんじんコロッケ定食を頼んだ私は、それをゆっくり食べながら、ただひたすらマーティが悶え苦しんで死ぬのを待った。


 ……が、結果から言えば、マーティは死ななかった。


 その日の放課後、私は買収した女を呼び出し、耳たぶに拳銃で大きなピアス穴をつくってやった後、本当に毒を盛ったかどうかを確認した。

 女は泣きわめきながら、間違いなく毒は盛ったと言い張った。


 バランスが取れるようにもう片方の耳にもピアス穴を開けてみたものの、女は全く主張を変えなかった。


 どうやら、嘘はついていないようだった。


 仕方なく私は、次は鼻か舌かへそに穴を開けてみないかと提案しつつ、彼女にもう一度毒を盛るよう命令した。

 夕食、女は今度はマーティの飲み物に毒を仕込んだ。


 だが、それでもマーティは死ななかった。


 私に向けられた視線に身を震わせた女は、今飲んだ飲み物は変な味がしなかったかと尋ねた。

 マーティは笑って答えた。


「うん、ちょっとだけ苦かったかな。でも俺、毒は効かない体質だから大丈夫」


 正直に言おう。

 その時、私は戦慄した。


 こいつは人間向けの、まともな殺し方では死んでくれないのだと。

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