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第73話 わしらの罪と懺悔 (サンタン視点)

 今回はほぼセリフです。タイトル通り(!)、サンタンがずっと愚痴る内容となっております。これが本当の神視点?

「兄上、よろしかったのですか? 何も記憶を消してしまわなくても……」


 マリエラが、わしの腕の中で眠る幼女の顔をのぞき込みながら言った。


「それにしても、幼子というのはかわいいものですね」


「ははは、見た目は幼いが、考え方はしっかりしておる。なかなか勉強になったわい」


「人間と話すのも久しぶりですものね。どれ、わたくしにも抱かせてくださいな」


 マリエラが腕を伸ばしてきたので、マリーをその腕に抱かせてやる。


「うふふふふ、もう三歳になったのかしら? ずいぶんと重たくなりましたわね」


 ああ、嬉しそうに右手で頭をなでておる。妹は子どもが大好きじゃからの。しばらくそうしていたマリエラだったが、ふいに顔を曇らせた。


「ああ……でもこの子はわたくしの()()()()の犠牲なのですよね……」


「……」


 わしは無言でマリエラからマリーを受け取った。まだ、すやすやと寝ておる。まあ、しばらく起きぬのだが。


「この子は、グレイツィアに赤ん坊を与えるため()()に連れてきましたもの……。この世界のほかの母親から奪ってくるわけにも行きませぬし、わたくしは別の『ワールド』でちょうど亡くなったこの子を、これ幸いとばかりに赤ん坊に戻して転生させました……。そのせいで、この子はこちらに血縁がおりませぬ……」


 顔を覆って涙を流すマリエラの背中をさすってやる。


「たしかに、マリーには『実の両親』という存在がおらぬの。しかし、今はマール教教会(おぬしのいえ)で『家族』に囲まれて暮らしておる」


「……」


 マリエラは無言のまま涙を流し続ける。


「あの時、マリエが亡くなるのは『運命』だったわけじゃし、そう気に病むこともなかろう」


「でも、転生させるなら、せめて前世の記憶をきれいに消してあげればよかったのです! ……それなのに、わたくしときたら失敗してしまい……」


「おぬしが記憶の消去に失敗するとはの……。まあ、わしらの力も落ちておるからの、しょうが無かったのじゃろう。ただ、前世の記憶があることにより、この娘はイレギュラーな存在と化しておる。うまくすれば、この世界に多大なる影響を与えられるやも知れぬ」


「でも!」


「でもまあ、そうやって自分の過ちを口にするのは良いことかも知れぬ。わしも、この娘相手にペラペラと世界の秘密をしゃべってしまったのは、そう懺悔(ざんげ)という気持ちがあったからじゃ」


「懺悔、ですの?」


「さよう。見た目は幼いゆえ話がしやすく、中身は大人なゆえ反応が返ってくる。もっとも、神であるこのわしに対し、あそこまでズケズケと物が言える者もそうはおるまいよ。……ああ、元日本人じゃったな。神との関係がちょうどよかったのかも知れぬ」


 多神教で万物に神が宿ると考え、神を畏れつつも精神的な距離が近い。うまく神々(わしら)と付き合っておる。もっとも、この娘特有のことかも知れぬが。


「ああ、それにわたくしのところの者が、転生時の記憶を封印し損なっていたようですわね。あとで注意しておきましょう。……わたくしも人のことは言えませんが」


 マリエラがまた抱きたそうだったので、マリーを渡してやった。ふくよかな彼女の腕に抱かれると、随分と小さく見えるの。水色の長い巻き毛がマリーの顔にかかり、マリエラはそれを払いのけてやった。


「わたくしも、この子のおかげで人と関わる大切さを思い出しましたわ。いつの間にか、人々のことを単なる駒のように思っていたようです……。皆にもわたくしたちと同じように感情があるというのに……」


「わしもそうじゃよ……。わしらは少々忙しすぎて、心に余裕が無くなっておったのかも知れぬ。近視眼的になりすぎて、よりよい方法を模索できなんだ……」


 嘆息し、二人して出されたお茶を飲む。ああ、アーサー(おとうと)も来れば良かったのに。そんなことを考えていると、マリエラがおずおずと口を開いた。


「……それで……ええっと、兄上のところの……」


「ああ、あの男か。あれもわしの被害者じゃったの。根は真面目なのじゃが、真面目すぎてうまくいかなかったのじゃろう。エヴィーナにそそのかされて、マリー誘拐を企ててしもうた。……もっともそのおかげで、わしは気持ちの吐露ができたわけじゃし、グレイツィアが気にしておったことを解決してやれた。それにしても……グレイツィアもそれからエヴィーナも、わしの短慮のせいで迷惑をかけてしもうた……。悔やんでも悔やみきれぬわい……」


「兄上……」


 すっかり湿っぽくなってしまった。わしらの従属神(じゅうしゃ)たちも、おろおろとしながらせっせと給仕をしておる。


「そうじゃ、その娘の提案で面白いものがあっての」


 わしは空気を変えるため、マリーの提案をマリエラに話してやることにした。


「まあまあ、何ですの?」


 わしが犯した過ちは、これから償うしかない。主神とはいえ、それはあくまでこの世界でのこと。上には創造神(うえ)がおるし、わしと同格の神も、あまたある「異世界」にはおる。われらが創造神さまに勝利をもたらすため、そして今は十六となったこの世界群に住む人々の暮らしを守るため、わしらは意識改革をし、今までのやり方を改めなければならない。


「ふう、神といっても、まだまだ改善することがあるものじゃの。ああ、娘は『伸びしろ』と言っておったかの……」

 初登場マリエラ。今回は「オフ」のため、教会にある女神像とは随分と違う容姿をしております。それはサンタンも同じです。神聖魔法を使うときは若返り……って、霊○波動拳の使い手っぽいwそして太陽神サンタンが長兄で、海の女神マリエラが次子、末っ子が大地の神アーサーです。


 マリーはマリエの幼少時「そのまま」の容姿です。そのネタばらしをマリエラがしていましたね。ところで、よく記憶封じを失敗している神々ですが、どうしてなんでしょうね? やはり、「上には上」がいるからでしょうか?

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