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第64話 マリー、ひとりつぶやく。

マリーが延々と、一人でつぶやきます……そういう回です。

 あまりの展開に、わたしはしばらく沈黙していた。や、だってわたしマール教徒だよ? しかもいわばシスター「見習い」みたいなぺーぺーだよ? さらに言うなら、まだ三歳児で一般常識にも欠けるよ? こんなわたしが「法王のなり方」みたいなこと知ってるわけがないじゃない!


「法王のなり方って言われても、わたしには分からないよ……。法王って、ソーレ教の上層部が決めるの? それともサンタンさまが決めるとか?」


 そう言いながら、はたと気づく。


「フェルナンドさん! フェルナンドさんなら知ってるかも! 早く彼を解放してよ!」


 さらに言うなら、エヴィーナも知ってるに違いないわ。あのフェルナンドさんを封じ込められるほどの実力の持ち主……それに、何だか人間じゃないみたいだしね。


「ふむ、エヴィーナ。フェルナンドを解放しろと言っているが、どうす……! え、エヴィーナ、どうしたんだ!?」


 見ると、エヴィーナは口元を押さえていた。何だかフラフラしている。


「……その子の臭いがちょっと……わたし何だか気分が悪くなったみたいだわ……」


 確かに、わたしがちょっと臭うのは認めよう。でもわたしが()()をしたのはだいぶ前だよね? それからいろいろ話したよね? ちょっと言い訳くさくない?


「エヴィーナ、ここは空気が悪い。早く上に行って、長椅子で横になるといい。いくつか椅子を合わせれば、ゆっくり休めるだろう」


 いかにもエヴィーナはその場を逃げ出したかったように見えるけど、彼女に気があるアーネストは気が付かなかったみたい。甲斐甲斐しく彼女を支えながら、上がっていってしまった。もちろん、ガチャリと鍵をかけて。


 一人残されたわたしは、直接自分の口の中に水を召喚し、口をゆすぐ。何回かそうしたあと、今度は「癒しの水」を同じく口の中に出して、そのまま飲み込んだ。ふぅ、人間って、便利にはすぐ慣れるわね……お行儀は悪いけど!


「なんでエヴィーナは、仮病を使ってまで逃げ出したのかしら?」


 法王のなり方を聞かれて、フェルナンドさんの解放を求めたときよね? 解放されたら困るのかな? でもエヴィーナが「人」でないなら、たとえフェルナンドさんでも脅威にはならないのかも……。


「いや待って。もしかして、エヴィーナが人じゃないことを、アーネストは知らないのかな?」


 わたしを避難所から、それこそ「瞬間移動」のようにここへ連れてきたのは、おそらく彼女だろう。それは()()()()()()()ことだと、フェルナンドさんは言ってた。じゃあ、彼女は何者?


 魔法が神や精霊の力を借りて行使されるものなら、彼らは魔法が得意なはずよね? それこそ人の中でいちばん魔法の得意なエルフよりも。じゃあエヴィーナは神か精霊ってこと?


「でもそうだとしたら、何でエヴィーナはただの人間にすぎないお母さんのことを嫌うのかしら? いや、むしろ憎んですらいるよね……」


 お母さんがいくら「恩寵持ち」でも、神か精霊かもしれないエヴィーナには敵わないだろう。なぜなら人は、彼らの助けなしには魔法が使えないのだから。


「エヴィーナの顔が変わってきたのも気になるし……」


 そう、彼女の顔は、最初会ったときから変わったとしか思えない。前会ったときは、確かに驚くほど美人だったけど、別にお母さんには似ていなかったと思う。フェルナンドさんも何も言ってなかったし。でも今回再会したら、お母さんの面影がちらつくようになっていた。あれって、化粧とかでどうこうなるようなものでもないよね? ……どうこうなるものなのかしら?


「アーネストのほうからアプローチしてみるとどうかしら?」


 アーネストはソーレ教の神官で、法王になりたいらしい。アンデッドの召喚を思い立ったのは彼で、実際に呼び出したのはエヴィーナのほう。


「それにしても、何でアンデッド?」


 エミリアと読んだソーレ教の絵本には、前世でいうところの「七つの大罪」みたいなものが描かれていた……こちらでの数はうろ覚えだけど。その中に……アンデッドはいたかしら、うーん。


「エドワード神官とも仲悪そうだったし……」


 ちょっと頼りなさげな感じではあるが、別に悪い人では無いと思うんだけどね。若くしてカレンディアの神殿を任されるくらいだから、けっこう実力はあるんじゃないかな? 人当たりもいいし……頼りなくはあるけどね。あ、二回言っちゃった。


「そもそも、なんでアーネストは法王になりたいのかなぁ?」


 法王、ソーレ教のトップといえば、権力とかも大きいのだろう。まぁ、前世でもいちばん上に立ちたい、権力が欲しいという人は多かったし、アーネストもそのくちなのかな?


「まぁ、ゲームの世界だったら、法王にもなるとすごい神聖魔法とかが使えるんだけど……。死者の蘇生とか、サンタンさま降臨とか?」


 どちらの理由も、ありそうといえばありそうだ。ありそうなんだけど……。


「推理するには材料が足らないのよねぇ……」


 そう、全部わたしの想像でしかない。ぎりぎり……状況証拠らしきものがあるかな? ってくらい。


「もう、今悩んでもしょうがないわ……寝ようっと」


 わたしの力では、この鍵のかけられた石造りの地下室からは出られそうもない。体力の温存のためにも、体を休めることにした。 


「そういえば……上の階には長椅子があるのよね。ここってもしかしてソーレ教の神殿なのかな? って、まさかね」


 マール教会の礼拝堂には長椅子が並べてある。きっとソーレ教も同じ感じだろうと思いながら、わたしは眠気に勝てず、また床の上で眠ってしまった。



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