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第52話 マリー、冒険者ギルドに避難する。

 エドワード神官が受けた「神託」(オラーコロ)骸骨(スケルトン)の行進で、映像だけだったそうだ。さらに話を聞くと、そういった映像は頭の中に浮かぶもののため、目をつぶると見えなくなるということはないらしい。それを聞いて、エミリアがほっとしていた。責任感じてたみたいだものね。


「エディーナの大神殿からも連絡があった。コートランドで大規模な魔物の襲撃は珍しいからね、それこそ何十年ぶりだろうか」


 外国では襲撃がけっこうあるらしく、日常茶飯事レベルのものだと、サンタンさまもいちいち教えてはくれない。まぁ、毎日「神託」(オラーコロ)があったりしたら大変だもの……って、外国ってホント物騒ねえ!


 そんな豆情報を手に入れつつ、わたしたちは場所を冒険者ギルドに移した。冒険者っぽい人たちが、出て行ったかと思えば帰ってきたり、せわしなく動き回っている。


「あなたたちはここで待っていなさい」


 マイア司祭はシンシアとわたしにそう言うと、フェルナンドさんやフーリアさん、エドワード神官と一緒に二階へと上がっていった。エミリアは二階チームである。


「大変なことになったわねぇ……」


 シンシアが不安げにつぶやいた。


「早くテオ兄ちゃんとも合流したいよね……」


 二人でおとなしく待っていると、町の広場にある時計塔の鐘が鳴った。時を知らせるボーンボーンといったような長い音ではなく、ボンボンボン……といったような短くて大きな音だ。それがしばらく鳴らされる。そうこうしているうちに、上から何人も降りてきた。先頭がギルマスで、後ろにはマイア司祭たちの姿も見えた。


「ソーレ教の『神託』(オラーコロ)がもたらされた。いわく、ここカレンディアにアンデッドの大軍が攻めてくるらしい。これからお前たちも忙しくなるぞ!!」


「「はい!!」」


 シンシアとわたしは声をそろえて返事をした。わたしは何をしたらいいのかしら??


◆◆◆◆◆


「あーぶー」


「だー」


 あれから、町のみんながぞくぞくとギルドにやって来た。ここがいわゆる一般人の避難場所だ。ギルドはほぼ町の真ん中にあり、建物も頑丈なので避難場所にうってつけだとか。わたしたちが待っていたロビーの右の扉を開けると、ちょっとした体育館みたいな空間が広がっている。この外にグラウンドがあって、そこで訓練が行われていたのが懐かしいわぁ……って、わたしは参加したわけじゃないけどね。


 わたしの仕事はといえば、この避難所でちびっ子たちの面倒を見ることだった……、まぁ、わたし自身が三歳児だから同じくちびっ子と言えなくもないけど! 他の人たちは炊き出しを行ったりとか、武器を借りて周辺を見回ったりとかそんなことをやっている。ああ、いろんなものを運び込む係の人もいるわね。


 大鍋で作られているスープの匂いをかぎながら、わたしはちょっぴりションボリしていた。今この場所にはテオもいるが、テオはいい感じの短剣(ショートソード)を借りて、少し誇らしげだ。


 他に知った顔といえば、マルタさんが避難所の警備隊長だ。広刃の剣(ブロードソード)を片手に、何人かの部下たちに指示を出している。手斧使いのジェイムズさん、魔法使いのアンソニーさん、ソーレ教のアイリーン、そしてテオだ。この五人が避難所の安全を守る主なメンバーだ。冒険者ではない普通の町の人の戦力は……どんなものかしらね? 何人か武器を持っているんだけどね。


「ちょっと、そこのちびっ子! ……その、エミリアはいないのかしら!!?」


 ソーレ教の失礼な小娘、アイリーンが聞いてきた。ほんと、この子っていつもケンカ腰よね。


「エミリア姉ちゃんは、エドワードさんと一緒に門のところだよ」


「こっちには戻ってくるの!?」


「うーん、どうだろう?」


「あっそ! 戻ってきたら教えなさいね! 分かった!?」


「……うん」


 アイリーンは言いたいことを言うと、そのままノッシノッシと向こうへ行ってしまった。ちょっと顔が赤いというか、照れた感じだったので、もしかしたらエミリアに謝りたいのかもね。……違うかもだけど。


 町の南門、ハイランド側じゃない方の門が最前線になる予定だ。エドワード神官は、「神託」(オラーコロ)を受けたあと、視えた骸骨(スケルトン)の行進の背景から、彼らがラースゴウ方面からやって来るのを割り出し、そちらに偵察を出したんだとか。町から離れたところで迎撃する案も出たんだけど……彼らの行進速度から鐘二つ分、つまりは四時間後くらいには町に着いちゃうので、町の近くで迎え撃つことにしたのだ。時間があまりないしね。


 ちなみに前線の拠点は、マルタさんとこの宿屋である。南門に近いものね。そこにはマイア司祭やシンシア、エミリアがいる。ギルマスやエドワード神官といった戦える人たちは、今は南門の詰め所に待機中なのかな?


「マリー、お前さんもスープをもらっておいで。腹に入れられるときに入れとかなきゃいけないからね」


 他の部屋に診療所をつくっていたシーナさんがやって来た。他にも薬師さんが一緒にいる。みんな一様に、緊張した面持ちだ。


「はぁ、この診療所が繁盛しないことを願っているよ」


 シーナさんがスープを飲みながらぽつりと言った。

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