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第46話 マリー、少しレベルアップする。

「今日はハイランド方面に行ってきたぜ。ホーンラビットが何匹が出たけど、全部やっつけてやったぜ!」


「わあ、テオ兄ちゃんすごいや! 強いね!」


 ホーンラビットとは、その名の通り角の生えたウサギである。すぐ突進してくる好戦的な生き物だけど、大きさは前世のウサギと同じくらいなので、そこまでの脅威ではない。事実、町の人もけっこう今晩のおかずにしたりしている。ただし、数が多いとやっかいだけどね。そしてよく群れる。


「今日で町中を清めることができましたの。町の方にもお礼を言われて、少々気恥ずかしいですわ」


「わあ、エミリア姉ちゃん良かったね! お疲れ様!」


 町の人たちはたぶん、マイア司祭とエミリアが魔法で町の清掃をおこなったと思っているに違いないわね。実際は聖水を振りまいたので、言うなれば魔物を防ぐ微弱なバリアを張ってまわったってところ? ふと、前世で家族総出で、害獣忌避剤を撒いてまわったときのことを思い出したわ……。


 「町をきれいにした」お礼にけっこう収穫があったらしく、マイア司祭はほくほく顔だ。お古だけど服をもらったり、雑貨をもらったり……ああ、おやつをもらったのがいちばん嬉しかったかな。スポンジケーキにジャムを挟んだだけの簡単なのだったけど、甘味に飢えているからか、ペロリと食べちゃったわよ。


「わたしたちも頑張ったわよね、マリー? わたし魔力が少し増えた気がするの」


「うん! サムさんが持ってきてくれたタル、もう四つもいっぱいになったもんね」


 シンシアとわたしの「癒やしの水」チームも頑張った。大きなゴミ箱くらいの大きさのタルが四つだから、まあ二百リットル弱かしら? 甕は元のお役目に戻り、タルはまだあと二つある。


 そんなこんなで、エドワード神官たちが来てから早一週間経った。みんな一週間前と比べて、少しレベルアップしてるみたい……まぁ明らかな数値としては出ていないんだけどね。わたしに関して言えば、魔力が少し増えた、気がする。


「皆さん、毎日お疲れ様です。ここしばらく頑張りましたので、明日はハイランドにお買い物に行きましょう。皆さんにお小遣いを渡します。その範囲でなら、好きなものを買ってもいいですよ」


 マイア司祭の思いがけない言葉に、大喜びの一同。わたしもカレンディア以外の町に行ったことがないので、うきうきするわぁ。


 夕食後、みんな浮かれ気分のまま夜のお勤めをした。まじめになさいと怒られるかなとヒヤヒヤしたけど、司祭は何も言わなかった。めずらしいわね。


「おれはよ、いい武器を買うんだ。マリーのみたいなロングソード。かっけーよな?」


 テオは行き先がドワーフの町ハイランドと聞いて、いちばん嬉しそうだ。やっぱりこの世界でも、ドワーフは手先が器用なのかしら? でもマイア司祭がくれるお小遣いで、ロングソードって買えるようなものなの?


 わたしのロングソードは、テオは装備できなかった。何でも持つと強い違和感を感じるとか。ある種の魔法の装備なんかは持つ人を選ぶので、これもそうなのかしらね。じゃあ、わたしが大きくなっても、この剣装備できないかもってこと? それはちょっと……がっかりだ。


 シンシアとエミリアの二人は、早々に自分の部屋に引き上げた。二人とも魔法の練習ね。サークレットの中の聖典は、どちらも相当読み込んでいるみたい。もうそれぞれ写本は終わっていて、自分だけの聖典ができたと喜んでいたわ。


 シンシアは毎晩アンナ司祭のために祈れるくらいになれたし、もう十分助祭になれる資格があると思う。エミリアも……うん、こっちはもう神官くらいにはなれるんじゃないかな?


 この宗派の違うわたしのお姉ちゃんたちは、持ち前の頑張りでグングンと聖職者として成長しているようだ。クリスティアーノ高司祭がやって来たら、きっとびっくりするわよね。


 テオと明日のことをしばらく話したあと、わたしも自室に戻った。


 わたしも寝る前は魔法の特訓だ。「灯りの魔法」(ライティング)で部屋を少し明るくし、「微風の魔法」(エアコン)で部屋の温度を快適にしつつ、「死者への祈り」を唱えるのがお決まりのパターンだ。


 「死者への祈り」は使う魔力が多いのか、効率て……げふんげふん、あ、ほら、聖職者の端くれとしてはね? ただこの神聖魔法のおかげか、昔ほど前世を想って涙することはなくなったかも。前世はもちろん大事な思い出なんだけど、自分の中でうまく消化できたようなそんな感じ。


 一通りお祈りをした後、いつものように「癒やしの水」をコップについで飲む。そしてお手洗いを済ませた後、寝るのが私の習慣だ。


 一階に降りていくと、食堂に明かりがついていた。誰かしら? 見ると、マイア司祭がコップを両手で抱え込み、ひとりでちびちび飲んでいた……って、晩酌かしら?

 この世界にはレベルやステータスという概念がないので、マリーのレベルアップはそれこそ「個人の感想」のようなものです。私たちが実生活でレベルアップした! ……と言っているのと同じと思っていただければ。


 また、マリーが言っているリットルなどの単位は、前世のものです。今世の単位をマリーはまだ知りません。そして今世の人々は前世と比べて身体能力が高いため、私たちが持てないような重さも持てるし、健脚でもあります。まぁ、魔物がいるような世界ですからね。マリーも前世と比べて頑丈になっています。



8/22 後書きに注釈を追加しました。

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