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第40話 マリー、エミリアに嫉妬する。 上

「ねえ、マリー見てくださらない? わたくしいくつか神聖魔法ができるようになったのよ」


 エミリアがわたしの部屋に訪ねてきた。時間は夜、もう寝ようといった時間だ。


「え、『聖なる水よ』(アクア・サンタ)の他に?」


「ええ! マリーが見せてくださった聖典に載っていましたの。まずはね……」


 ……。ちょっと長くなりそうだわ。わたしは眠いのに……。嬉しそうに話すエミリアを見ながら、わたしは夕食の時のことを思い出していた。


◆◆◆◆◆


「エミリアはすげえなぁ! あんなに神聖魔法使えるなんて!」


「ほんとよね。わたしももっと頑張らなくっちゃ!」


「なんだいなんだい? 今日はいいことがあったのかい?」


 興奮してはしゃぐ子どもたち。それを見てマルタさんが料理をサービスしてくれた。息子さんの料理はやっぱりおいしい。いつものようにマルタさんの宿屋である。


「エミリアには、ソーレ教徒としての才能があるようですね」


 マイア司祭はそう言うと、エールのジョッキをおかわりした。……ええっと、最近よくお酒飲んでるよね? キャラ変わった?


「おやおや、マイア。また酒かい?」


 宿屋でご飯を食べていると、だいたいいつものメンバーに会う。薬師のシーナさんもやって来た。手にはもちろんジョッキを持っている。私の知り合いって、飲んべえばかりね! わたしも前世は人のこと言えなかったんだけど。


「ああ、シーナさん……今日は二杯でやめておきますよ」


「そうかい。……そういえば、フーリアがサムに酒だるをいくつも頼んだらしいじゃないか?」


「フーリアがですか?」


 マイア司祭が怪訝そうな顔をする。わたしは、ちょっと前にフーリアさんと話した内容を思い出して言った。


「酒だる? ああ、フーリアさんは酒だるにポーションを保管するんだよ」


「「酒だるにポーション!?」」


 シーナさんとマイア司祭の声がハモった。わたしはちょっとたじろぎながら、


「う、うん。ポーションのびんが高いって言ってたから、なら酒だるに在庫を入れたらいいよって……」


「嬢ちゃん、あんた突拍子もないことを思いつくね……」


「ははは。わしは注文が入ってほくほくだがね」


 ドワーフの職人のサムさんも、近くのテーブルにいたらしいわ。


「たるにコックをつけろとか、いろいろアドバイスしてくれての。勉強になったわい」


「コックってなんだい?」


「ああ、たるからポーションを出すのに便利な代物での。レバーを引くと、たるに付けた金属の筒から中身が出てくるんじゃ」


「へぇえ! ってことは、たるのふたを開けて汲み出さなくてもいいってことかい?」


 マルタさんが、シーナさんとサムさんにエールのおかわりを持ってきた。こんだけエールが出るなら、マルタさんも欲しいだろうなぁ。そして大人たちは酒だるについて熱く語り出した。わたしもそっち側に参加したかったけど、今三歳だしね……。おとなしく子どもチームの話に戻った。


 子どもたちはまだ、今日のエミリアの活躍について話していた。熱く語るテオに、にこにこと話すシンシア。当のエミリア本人は少し顔を赤らめて、でもまんざらでもなさそうだ。


「このままだったら、エミリアがいちばん先に神官になれるんじゃないかしら?」


「おお、神官とかすげーなぁ! 神官ってことは、エドワードの兄ちゃんと一緒だろ? 神殿の連中を見返してやろうぜ!!」


「姉様も兄様も……ありがとうございます。まさかわたくしが聖典を手にすることができて、神聖魔法を使えるようになるなんて……!!」


「エミリア姉ちゃんすごいよ! 手から水の玉が飛んでいったもんね!」


 わたしも一緒になって、エミリアのことを褒めた。


「マリーも、ありがとう。あなたのおかげよ。あなたのおかげで聖典が読めたのですもの」


「そうよ、マリー。マール教の聖典もよ。あんなに分かりやすい聖典は読んだことがなかったもの。ありがとう!」


「良かったな、マリー!」


「えへへへへ……」


 わたしも褒められた。でも何だろう、この釈然としない気持ちは。ちょっと疲れがたまってるのかしらね?

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