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第29話 マリー、冒険者ギルドへ行く。

「お弁当おいしいかったです、ありがとう」


「いえいえ、今後ともごひいきにー」


 お弁当屋さんは、中央広場にある馬車の乗り場のとなりにあった。ここでお弁当を買って、馬車での旅というのもいいわね。わたしはまだ見ぬ町の外に思いをはせた。


 今回お弁当箱を返しにきたのは、テオとエミリア、それにわたしの三人だ。マイア司祭たちは、神聖魔法の特訓をしている。


「なあなあ、冒険者ギルドに寄ってこーぜ」


 冒険者ギルドは、一般人でも入れるらしい。報酬さえ出せれば、わたしたちでも依頼が出せるとか。テオは冒険者のことになると、よくしゃべる。


「はは、全部マルタが言ってたんだけどな」


 何だ、受け売りか。


 ギルドの入り口に着くと、みんな立ち止まってしまった。テオも実際に入るのは今日が初めてらしく、何だか緊張しているようだ。


「こんにちは、いらっしゃい。かわいい子たちね、今日は何のご用かしら?」


 受付のお姉さんに声をかけられた。手でおいでおいでをされる。これが有名な、「ギルドの受付のお姉さん」かぁ! 実物を見られるとは思わなかったわ! ……もっとも、自分が転生するなんてさらに思わなかったけどね!


「あ、あの質問なんですが!」


 きれいなお姉さんを前に、さらに緊張するテオ。


「何かしら?」


「おれ冒険者になりたいんだけど」


「うーん、君はまだ年齢が足りないわね。十五歳にならないと試験を受けられないのよ」


「試験って何するの?」


「まずは筆記試験よ。地理や魔物、それにサバイバル技術なんかが出るわね。どちらかといえば、読み書きができるかを見るものだから、そこまで難しくはないわ。それから実技試験ね。ギルド長と模擬戦をしてもらうの。ある程度戦える人じゃないと、町の外は危ないからね」


 予想通り、ギルド長は元冒険者で、かなり強いらしい。うーん、ベタだわ。


「字を書く試験があるなら勉強頑張らないとね、兄ちゃん」


「お、おう」


「戦えないと、冒険者にはなれないのかしら?」


 エミリアの問いに、お姉さんは笑顔で答える。


「魔法職は、戦闘の試験はないわ。魔法職は貴重ですもの。具体的には、ソーレ教なら準神官、マール教なら助祭なら、年齢関係なく冒険者になれるわ。あと、いわゆる魔法使いなら、ギルド長の判断ね。根っからの研究職でもない限り、まず通るけどね」


 ほうほう。じゃあ、わたしも助祭になれたら十五まで待たなくてもいいのね? まぁ、なれたらだけど。


「冒険者になると何のいいことがあるの?」


「そうね……まず、どこへでも行けることかしら。普通の人が行けない区域や国なんかへも行けるのよ。もっとも全部というわけじゃないけどね、ランクによっても違うし」


 魔物が多いところ、危険なところなどは普通の人は行くことができない。でもそんなところにも、例えば貴重な素材とかはあるわけで。そのため薬師や錬金術師も、資格を持っている人は多いとか。


「図書館にも行けるわよ……図書館って分かるかしら?」


 図書館というのは、専門的な魔導書や貴重な文献、買うとしたら金貨が数枚から数十枚いるような本が置かれているところらしい。庶民は本を読まないというか読めないので、一般のいわゆる図書館は存在しない。各国の王城にあるとか。行ってみたいわぁ。


「あとは、お店や宿屋で割引がきくの。額は少ないけどけっこうお得よ」


 お姉さんはパチリとウインクをした。お姉さん美人だし、サマになるわぁ。ポイントとかクーポンとかに弱いわたしとしては、耳寄り情報かも。


「ただし、例えば町が魔物に襲われたときなんかは、出動義務があるの。だから町に入るときなんかに、冒険者はランクや特技を確認されているわね」


 もっとお話を聞きたかったが、カウンターに人が並びだしたので退散することにした。お礼を言って立ち去ろうとしたら、お姉さんがさらに耳寄りな情報をくれた。


「十歳になったらまた来なさい。見習い冒険者になれるわよ。町の周辺だけに限定されるけど、ベテランが教えてくれるのよ」


 十五歳になって冒険者になっても、いきなり外の世界に放り出すのは危険なので、そういった見習い制度があるとか。冒険者のほうも、仕事の一環としてお金が手に入るので、けっこうしっかり面倒を見てくれるらしい。それを聞いて、テオの目が輝き出した。


 みんなでうきうきしながら、入り口へと向かっていく。ちょうどドアのところで、真っ白の祭服を着た男女の二人組とすれ違った。二人とも、ガラス瓶が十数本入った箱を抱えている。


 エミリアは一歩下がると、胸の前で腕をクロスさせるソーレ教式のお祈りのポーズをした。マイア司祭たちとも違う祭服だし、ソーレ教の関係者かな? そのまま通り過ぎようとした二人に対し、エミリアが声をかけた。


「あの、エドワード神官様。わたくしにも聖典をいただきたいのですが。神聖魔法を使いたいのです」


 エドワード神官が口をひらく前に、連れの女性が大声をあげた。


「あなたにお渡しする聖典はないわ!」

日付と時間が守れなくなってきた……。大変申し訳ないです。

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