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第21話 マリー、準町民になる。

昨日投稿予定分です。遅くなりました、申し訳ありません。

 結果としては、わたしは準町民ということで住民登録された。準町民なら税金は半額でいいですよねとサラさんが口添えしてくれて、わたしは大人の四分の一の税金となった。銅貨二十五枚だ。そのほかは普通の町民と一緒で、特に制限はないらしい。まぁヘンリーさんも、引っ込みがつかなくなっていたのかもしれない。わたしはいずれ町民に格上げされるらしい。何だか不思議な感じだ。


「ヘンリーさんは悪い方ではないんですが……」


 手続きを終えて帰ろうとしたわたしたちを、サラさんがひきとめた。


「幼いころから神童だとあがめられて育っていたのですが、エングラードの魔法大学校に行って打ちのめされたようです。いくら努力しても、同級生たちにまったくかなわないと」


 うん、その気持ち分かる。中学ではトップクラスだと思っていたけど、同じレベルの人が集まる高校では、大したことはなかったというあれだ。わたしは、ちょっとしんみりする。


「それに、そんなエングラードの学校よりも、イースタニアのほうがはるかにレベルが高いんでしょう? クレアさんがそこの出身といううわさを聞いて、かなり嫉妬していたようです」


「ああ、それは間違いでしょう。マール教徒として研さんを積みながら、イースタニアに行けるほど魔法を極めるのは難しいかと。確認したわけではありませんが、きっとそのうわさはデマですよ」


 マイア司祭が、いつもの淡々とした口調で言う。


「ですよね、あの学校に通えるような方なら、もっと名前が知られているはずですものね! そのように伝えておきます!」


 サラさんは迷惑をかけたことに関して頭を下げると、嬉しそうに戻っていった。……まぁ、世の中には知らなくていいこともあるもんね。


 サラさんと別れたあと、わたしたちは共同墓地へと向かった。お母さんのお墓の前に二人で立つ。この木の杭の下にお母さんが眠っているのが、まだ信じられない。


「ではマリー、あなたのお母様が安らかに眠れるようお祈りをしましょう」


 そう言うとひざまずき、司祭は胸の前で両手を組んだ。わたしもそれにならう。


「「『海』に無事に(メウス・シンセルス)還れますように(・ピエザメス)」」


 わたしたちのお祈りの言葉が重なった。マイア司祭は、大変けっこうというようにうなずいた。


「マリー、あなたはマール教徒としての研さんをずいぶんと積んでいるようですね。クレアさんの教育の賜物でしょう。……マール教も惜しい方を亡くしました。教会にあれば、高司祭でも上のほうにいけたでしょうに」


 高司祭は、最高司祭に次ぐ階級だ。全体で五十人近くいるらしいが、その中には序列がある。序列の一位から十五位までが、ルトーガの総本山でマール教の中枢をになっているらしい。


 それから孤児院に戻った。シンシアたちは食堂で勉強をしていた。


「二人ともおかえりなさい。お腹が空いたでしょう?」


 わたしたちはずいぶんと役場にいたようだ。みんなでお昼を食べる。今日はマルタさんのところはお休みなのに、食べている最中に五の鐘(十四時)が鳴った。


 食事をしながら、わたしが無事に町民になったことを伝えた。みんな大喜びだ、シンシアをのぞいては。さっきから思い詰めたような顔をして、スープをすすっている。責任感の強い子だし、司祭を目指すことを思い悩んでいるのだろう。


「マイア司祭、司祭にはどうやってなるんですか?」


 昼食を食べ終えたあと、シンシアが口を開いた。


「そうね、司祭になるには、まず神聖魔法『死者への祈り』ができるようになって助祭になることね。それから、相手に祝福を捧げられるようになり、回復の奇跡を日に……そうね、十回以上できるようになりなさい。そうすれば司祭級の神聖魔法を習得したと言えるでしょう」


 けっこう大変ね……。そこまでの神聖魔法を習得できたら、国中の教会をまとめている大教会に行き、そこで試験を受ける。大体各国の首都にあるらしい。試験に受かれば、晴れて司祭になれる。


「どうやったら神聖魔法が使えるようになるんだ……ですか?」


 テオの言葉に、エミリアも興味津々だ。


「……そうね……研さんを積むとしか言えないわね……。毎日のお祈りを欠かさずしていれば、いつかできるようになるわ」


 それから各神聖魔法のお祈りの言葉を教えてもらった。回復の奇跡は、「癒しの水(アグア・クラティーバ)」。解毒の奇跡は、「毒よ、消えよ(アンティトード)」。これができると修道士で、シンシアは今ここだ。


 死者への祈りは「『海』に無事に(メウス・シンセルス)還れますように(・ピエザメス)」で、助祭レベル。司祭が使える神の祝福は、「神のご加護が(デウサ・)ありますように(アベンソーイ)」だ。


 もしやと思っていたけれど、すべてお母さんのお話の中の言葉だった。わたしも神聖魔法を早く使ってみたいわぁ。

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