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ショートショート6月~

Re:あれは、いいですねぇ。

作者: たかさば

私の海は、汚い海。


私がお嫁に来た頃から、変わらない、汚い海。


海水は、もじゃもじゃした藻や、どろどろしたわかめが揺蕩い。

砂浜は、汚い海藻が干からびてあちらこちらに落ちていて、割れた貝殻が、所々で固まっている。

砂を掘れば、貧弱なアサリが砂利に混じって顔を出し。

みすぼらしい波止場はフジツボだらけで見目が悪い。

時折鼻につくのは、ヤドカリの腐敗臭か。


そんな海の近くで、私は時折、遠くを見つめる。

遠くに、灯台が見える。

あれは、夕刻を過ぎると、光を出す。

こんな汚い海を照らしたところで。


こんな汚い海でも、海は海。

小さな子供たちは、汚い砂浜を掘り、汚い貝を拾い、汚い海水に浸かる。

汚い海の恩恵にあずかる、汚れた子供たち。


私はこんな汚い海に、寄りたくもない。


汚い海から遠ざかって随分経ったけれど、私が思い出すのは決まってあの汚い海。


言葉を忘れた私の思い出す海は、きっと今も汚いままだ。

汚いことを分かっているというのに、私の口から出る言葉はいつも。


「あれは、いいですねえ。」


全然いいことなんてなかったはずなのに。

ただ汚く、そこにあるだけの海なのに。


汚い海のくせに、最後の最後で私から「いい」という表現をさらっていった。


こんな汚い海など。

こんな汚い海なんて。

こんな汚い海なのに。


最後に見たいと願ってしまうなんて。



最後に。



海を。



見たかった。




本当は。




綺麗だと。




言いたかった。

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[良い点] これは、いいですね [気になる点] 長いと錯覚してしまった。 [一言] アオサ「ぐで〜」べちゃぁ
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