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094 手打ち

ついに投稿数が100回目になりました。

結構いけるもんですね。

引き続き頑張りたいと思います!

  王都の建設は順調すぎるほど順調に進んでいる。


  ヒリムスとメルビンに任せた元ケンプ王国の貴族達の方も順調に進んでいるようだ。主だった反乱分子は取り除き、今は残った貴族との話し合いが行われているらしい。


  どうやら、それぞれの領民の意見も聞きつつ、任せても大丈夫そうならエトワール王国の騎士爵としてそのまま領地を任せ、そしてこれは駄目だろ、と判断した場合はその家は取り潰し、という事になったらしい。取り潰した場合は、一先ずは国王直轄地としてメルビンが見てくれるそうだ。


  いや、本当に助かります。俺じゃあ何をすればいいのやら訳分かんないものな。


  王都に住みたいと言う移民団も到着したので、家と畑を与えた。あまり大きくはないが、結構立派な家が建ったし、畑についてもこんなに良い土だとは…………。と、驚いて感激していた。


  ここが良い土なのはコイツらのおかげだと、『地割れモグラ』『土中セミ』『大ミミズ』の三体を紹介しておいた。彼等にはこれからも農家の手伝いをしてもらうつもりだ。


  移民についてはもう一つある。建国の為に連れて来た職人やその弟子の一部が、王都で働きたいと家族を呼び寄せたのだ。


  技術を持った彼等が来てくれるのはコチラとしてもありがたいので、彼等専用の地区として工業地区を作る事にした。職場と家が近ければ生活が楽になるだろうしな。


  セバスニャンの『神様の本棚』の知識もあって、王都は近代的な機能を備えた街になる。その事が職人達に更なる刺激を与え、他国から応援に来てくれているアッタレーやカカラオ達も、新しい技術を自国にも持ち込もうと全力で働いている。


「そして、優秀な人達が一生懸命働いているからこそ、俺のやる事が無くなった。…………と」


  仕事が出来る人間には全て任せてしまった方が良い。という言い訳と共に丸投げしていったら、俺は執務室にいるだけの置物状態になってしまった。


  いや、問題もおきてないし良い事なんだろうけど、何かこう、仕事が無いなら無いで少し寂しいのだ。問題が起きないから誰も来ないしね。


  と、言う訳で俺は食堂の調理台で小麦粉を練っていた。小麦粉をぬるま湯でといて、こねて、寝かして、こねて。…………そう、俺が作っているのは『うどん』である。作るの簡単なんだよ、うどんて。


  俺が知る限り、この世界にうどんは無い。と言うかパスタ以外の麺類を見てない。恐らく『麺をすする』という文化も無いだろう。


  別に麺をすすりたい訳では無い。『すする』という文化も無くてもいい。ただ、俺が普通にうどんを食べたいだけである。


「先程から見ていますが、パスタでもパンでも無いようですね? 一体、何を作っておられるのですか? 」


  三節棍を一本に変化させた棍を、伸ばし棒に使って麺を伸ばしていると、サライが尋ねて来た。最近毎日来るようになった俺に、あまり良い顔をしないサライだが、目新しい料理には興味があるらしい。


「これは『うどん』っていう麺料理だよ。俺の故郷ではよく食べられている物だ」

「『うどん』ですか。パスタとは全然違う料理のようですね」

「ああ。好みってのは色々だけど、うどんが嫌いって奴には俺はまだ会った事が無いしな。シンプルだからこそ皆にも受け入れて貰えると思うんだよな」


  そうこうしているうちに麺が出来上がった。後は茹でるだけなので、今度は麺つゆに取り掛かる。


  麺つゆ…………と言うか、日本人の俺には『だし汁』という物がどうしても必要だ。だし汁と言えば昆布や鰹節だが、今はまだ無い。海がそばにあるので直ぐに研究に取り掛かる気ではいるが、無いものは無い。


  そこで、俺は川魚の『焼き干し』を使う事にした。昔、日本の田舎では川魚を囲炉裏でしっかり焼いて、その上で干した物を『焼き干し』と言い、それでだし汁を取っていたらしい。


  俺は、ルイツバルト家に囲われて暇だった時にそれを思い出し、作っておいたのだ。…………生活が至れり尽くせり過ぎて、作った当初にだし汁を飲んで以来使って無かったが、備えあればなんとやらである。


  と言う訳で、『焼き干し』から取った『だし汁』と醤油をまぜ、そこに味醂…………は無いので、赤ワインを入れて煮詰めて『麺つゆ』を作った。


  …………まぁ少々不満だが仕方がない。いずれは味噌も作り、米だって手に入れてみせる。完璧な物はその時だ。


「サライ。温かいうどんと冷たいつけ麺と選べるが、どっちが食いたい? 」

「よろしいのですか? 」

「ああ。是非ともサライにもうどんを覚えてもらいたいからな」

「…………なるほど。では、両方お願いします。何人かで、試食しますので」

「解った。伸びない内に食えよ」


  今回はうどんの味を楽しんで貰いたいので、薬味もネギだけにして、俺はうどんを仕上げた。


「おっ! 何か旨そうなのを作っているな」

「ん? ヒリムス! 戻って来たのか」

「ああ。ついさっきな。お前が何処に居るのかイーデルに聞いて来たんだが、本当に厨房に居るとはな。…………なぁ、俺が食べる分もあるか? 」

「ああ。試食用に多めに作ったからな」


  ヒリムスも一緒に食べる事になると、メイドの何人かが緊張を見せた。…………あれ? 国王である俺は平気なのにヒリムスには緊張するのか。…………まぁ、いいけど。


「…………! これは美味しいですね。スープも程よい濃さで、食べやすいです」

「おお、新食感だな。…………パスタとは違うのか、随分と弾力があるな」


  サライとヒリムスの口には合った様だ。他のメイド達も、食べ方には戸惑っていたが、概ね良好の様だ。


  しかし、俺は自分で削った箸を使っているが、皆は良くフォークで器用に食べるものだ。感心してしまう。


  それともう一つ思うのは、やはり皆がうどんをすすらない様に食べている事だ。俺も大きくすすったりはしない方だが、周りが気をつけていると若干戸惑うな。


「いやー、旨かった。ユーイチの故郷の料理は俺達が食べてきた物とはやはり違うな」

「食材さえあればもっと色々作れるんだけどな」

「ユーイチ様は、料理が得意なのですね」

「そうだな。料理をするのは好きだ。ストレス発散にもなるし、人に旨いと言って貰うと嬉しいしな」


  メイド達にも誉められて調子に乗った俺は、この後も今ある食材で作れる物を何品か作った。


  その中でも餃子と焼売は、夕食と酒を飲みにやって来た職人や兵士達にも好評で、食堂のメニューに加わる事となった。


  その過程で、ラー油作りにもチャレンジした。


  油に香りをつける長ネギやニンニク、生姜に唐辛子までは手に入ったが、やはりスパイスの種類が少ないので、セバスニャンの『ティーセット』から、紅茶用の香辛料を出して貰って代用した、なんちゃってラー油だ。


  やはり醤油と酢だけでは物足りないからな。これで餃子が美味しく食べられるという物だ。


  しかしそれはそれとして、スパイスは仕入れたいな。後でイーデルに相談しよう。


「ユーイチ様、少しよろしいですか? イーデル様も来ておられますので、コチラに…………」

「……………………はい」


  俺にとって今日は有意義な一日だったが、やはり朝から晩まで厨房にいたのはやり過ぎだったらしく、イーデルとサライには怒られてしまった。


  …………しばらくの間、厨房に出禁になってしまったので、俺は王城の設計士達の元に出向いて、俺の部屋に厨房を造るように命令した。


  別に、王様の部屋に厨房があっても良いと思うんだよ。…………うん。きっと問題無い筈だ。

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