プロローグ01
初投稿です。至らない点は多々あるでしょうが、読んで貰えると嬉しいです。
プロローグ 01 我輩は猫である
私は猫でございます。名前は『セバスニャン=イベントリー』と申します。親しい方にはセバスと呼ばれております。
イギリス生まれのイギリス育ち。猫としての種類はブリティッシュショートヘアと聞いております。全体的に黒く美しい毛並みをしていると自負しております。
チャームポイントは足先の全てが白くなっているのと、目の上が細い眉の様に、口元がカイゼル髭の様な形に白くなっている事でしょうか。
「セバスは立派な英国紳士だな」
と、よく旦那様が申しております。
私のお仕えする旦那様は、『トーマス=イベントリー』というお方で、元々は貴族にお仕えする執事を長年勤めたお方です。
故あって仕えた家を辞した後は、『フィギュア』とか申します人形造りに生涯を捧げると、私を連れて日本という国へと移住いたしました。
なんでも、お仕えしていた方が日本のアニメのファンだったとの事で。…………そう言えば、よく旦那様を連れて日本へと行き、一週間程帰らない事がよくありました。
私も旦那様の事を思い、引き留めるために足にしがみついては引きずられた事がありましたな。
ともかく、祖国を離れ日本へと移住した旦那様は、様々なフィギュアを造り、瞬く間に忙しくなっていきました。私にはよく解らない世界でしたが、旦那様が認められた事はとても誇らしく思っておりました。
そして、日本に来て五年程過ぎた頃、旦那様は最高傑作を造ると私をモデルにした紳士のフィギュアを手掛け、一体目が完成した時に倒れてしまわれました。
旦那様は、最早フィギュアを造る事が出来なくなり、妹様に連れられてイギリスへと戻りました。私も精一杯の看護をいたしましたが、所詮は猫の身。旦那様に寄り添うのが出来る全てでございました。
旦那様は、秋の終わりにお亡くなりになりました。
フィギュアは十体造る予定で、受け渡す方々も決まっていたのですが、あるのは一体のみ。旦那様はお亡くなりになる直前に、妹様に一人の名前を教え、その方に渡すようにと遺言を残されました。
旦那様がいなくなり、私の役目も終わったのでしょうか。旦那様の亡骸と供に逝くのも良いかと思われます。
ふと、誰かが私を撫でてゆきました。時間をかけて重い瞼をあげると、体格の良い日本の方の背中が見えました。その方の腕には、透明なケースに入ったあのフィギュアが抱かれております。
…………ああ、叶うならば、あのフィギュアの様な体が欲しかった。それならば、私にも出来る事がもっとあったでしょうに。