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《ひとりさ》だけは嘘をつけない

おんなⅡ(悲愴)


《目に見えない

愛がこの身を覆っても

寂しい嗚咽は隠せなかったよ》



うつむいてた君をみて

「もう、元気を出して」と肩を叩いたのは

なんかもう生きていないみたいなじぶんを

かさね合わせたのかもしれない

わたしをみるその瞳が

すこしだけ潤んでいたのは

もしかしてわたしの後ろに

あの

君が大好きだったあの人の

生前の姿をみていたのかもしれないけど

まさか そんなこと 訊けないしね

わたしをみながらなんか照れたようにわらうの

無意識に真似してたのかなぁ?

ちょっとだけ あの人に 似てたようで

思わず ためいきが ついて出たよ

嫌な思いさせてたら ごめんなさいね

わたし あまり人の心の機微がわからないのです

それでずいぶんと あの人のことも

傷つけてしまった過去があるのに

ぜんぜん直せなくて ほんと ごめんなさい

あゝ、でもなぜかとつぜん

君の声が光って感じられたのは

これもやっぱり あの人に似てると思ったのかなぁ?


しろい雲がながれすぎていった夜空に

新月が星の海を渡ってゆくのをみているころ


なぜか寂しげに声をかけてくれた

わたしの名前をちゃんと呼んでくれた

「エレオノール」という 過去に 彼だけが

愛情こめて呼んでくれた その誠実を

まるで再現するかのように

おはようございます

いい日和ですね

それではまたご機嫌よう

ではいつかまたお目にかかれる日を楽しみにして

そんな

なんの意味もない言葉のうしろに

いつも 彼がつけてくれていた名前を

わたしの真実の名前を 呼んでくれたとき

わたしは

まるで 彼に呼んでもらってる気になったりして

ダメですねー

ねぇ、「エレオノールさま」?

「エレオノールさま、

おやすみなさいませ」


わたしは こんなにも弱いから

彼は わたしのために 死んだのに

いまだに 弱いままだなんて

これではまるで

彼に出逢うまえの

じぶんひとりがよければいいという弱虫

高慢ちきな お嬢様から なんの成長もできていない

そんな みじめなもの ひとりきり

じゃ ないですか?


あゝ、あの人の

愛がこの身を覆ってみても

《ひとりさ》だけは、嘘をつけない






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