表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
28/59

第28話 契約モンスター

「どうだ! 俺様の持ち弾がさらに増えたぞ!」


 団長のスキルにより、十五個の石墨(せきぼく)が一部分ずつ割れる。その欠片が集まって、新たに三つの毒つぶてになった。

 足して、合計十八個だ。


「へ?」

「え?」


 ちらりと後ろのアンナとコールを確認すると、二人ともぽかんとした顔をしていた。『?』マークでも浮かんでいるようだ。


「団長のスキルランクはまだFか」


 スキルランクが低ければ、〈特性強化〉の強化倍率も当然低い。

 三個しかアイテムの個数が増えなかったということは、〈分裂〉の効果は1.2倍上昇したわけだ。


「Aランクまで上がれば、かなり使えるんだけどな」


 そこまで育てるのが大変なんだ。自分の育成過程を思い出してため息が出た。

 十八個の毒つぶてに囲まれた団長が、嘆息した俺を見て得意げに笑う。


「さっきまでの態度はどこ行った! 負けを覚悟したのか!? ぐはは、驚いただろう。なんと、〈特性強化〉は、同じ種類で同じ品質の素材なら、一度にまとめて効き目が出るのだ!」

「え!?」


 新米石使いの言葉に、俺は衝撃を受けた。


「偉そうな石使い! 貴様、さては知らなかったな! 俺様なんて二日前に気づいた――」

「わかってるじゃないか!」

「はいぃっ?」

「すまん、適当に〈特性強化〉を使っていると思った。ちゃんとスキルを理解しているんじゃないか!」

「なっ……!?」


 団長が二歩、あとずさった。


「何のつもりだ……。いきなり、ほ、褒め……」

「歩さまは、小さな成果だって評価してくださるんです! 私も先日――」

「まあまあまあまあ!」


 キリッとした顔で前に出てきたアンナを、コールが連れ戻してくれた。


「くそっ、わけわかんねえ奴らめ! コイツで全員ぶち抜いてやる!」


 団長は、のけぞった体を前のめりに直した。「やっとうんちく終わりか……」さんざん石使い講座を聞かされた商人は、げっそりしている。


「おら、おら、おらぁ!」


 二秒間隔で、三発弾が発射される。

 しかしアイテムの質が悪いため、三発とも見当違いの方向へ飛んでしまう。


「い、威嚇射撃だ!」


 そういうことにしておく。


「どんどんいくぞ! 俺様のマジックボウは、連続使用スピードを速める効果があるからな!」


 団長が四発目、五発目と毒つぶてを放つ。


「いい装備の選択だ!」


 俺は五本の〈炎の矢〉を同時に射出した。


 一本目は、向かってきた二つのつぶてを炎の勢いで霧散させた。


 二本目から五本目は、団長の周りに浮いていた、残り十三個の弾を粉々にした。


「何いぃ!?」

「う……っそ、でしょ」


 口を開けて棒立ちになった団長と商人に、火の粉が降りかかった。

 俺はもちろん、装備についての説明を添える。


「今はその、連射スピード上昇型マジックボウが団長に合っている。そして、生成スキルと使用スピードが上がったら、命中率の上がる武器に切り替えてみるといい」

「まだ、講釈たれんのかい……」


 商人は疲れ切り、「もう無理……」と、降参の色を見せる。が、団長はまだ戦うつもりのようだ。舞い散る火の粉を乱暴に払った。


「くそったれ……。“持っている”ヤツに、やられてたまるか!」

「あんたがその気なら、俺はいくらでもつき合うぞ」


 まだまだ、教えられることはいくらでもある。


「出てこいブラックスライム! 俺様に、力をよこせぇ!」


 団長が大声で叫んだ。

 すると、今まで静かだった沼の水面が盛り上がり、中から、一つ目の大きなスライムがぬらりと顔を出した。


「使い魔の代わりに契約したのは、ブラックスライムだったか。確かにあのモンスターなら〈強酸ジェル〉を使える」


 半透明の黒い体が、ずるずると沼から這い出てくる。

 スライムとは言っても、家の周りに現れる、草原スライムのように小さくはない。体高は、長身の団長を超えている。

 モンスターの口が、裂けるように開いた。


「気ヤスク 命令スルナ 人間」


 人間の言葉を、喋った。ゲームでは、この種族はうめき声しか上げなかったが。


「対価ダ (ちから)ヲ 求メルナラバ」


 目の前でうごめく粘液に、団長はわずかに怯んで体を引いた。


「あ、ああ。そうだったな。対価だ、わかってる。おい参謀!」

「えっ、は、はい。今……」


 商人は焦った様子で小屋に戻り、たくさんの袋を抱えて出てきた。その腕から、アクセサリー付きの、忍術士のアイテムバッグが落ちる。

 しかし青年はそのバッグを拾わず、急いでスライムの前にひとつの袋の中身をぶちまけた。

 様々な種類の鉱石が地面に散らばる。


「あの石は、素材屋の商品だな」


 店の物は全てスキャンしたので憶えている。

 ブラックスライムが、それらの鉱石に体を乗せて吸い込んでいく。二、三個の石は粘液に溶かされて消えるが、ほとんどが大きな口からすぐに吐き出された。


「不味イ」


 粘液を手のように使い、出した石を全てなぎ払ってしまう。沼に複数の小さなしぶきが上がった。


「フザケルナ 石ヲヨコセ ウマイ ウマイ 石ダ」

「いいい、今、出しますよ!」


 あのモンスター、鉱石を食うのか。もしくは、石が自然に蓄えた魔力を摂取するのかもしれない。

 次に差し出された石も、お気に召さなかったようで、まとめて遠くへ吹き飛ばされる。

 ブラックスライムは、暗い穴のような一つ目を、ずいと商人に近づけた。


「不味イ 不味イ」

「ひっ……」

「ウマイ石ガ ナイナラ オ前ラノ 骨 喰ワセロ」


 商人はあわてているからか、なかなか次の袋が開けられない。


 これが、契約を交わした者同士? 

 どう見ても関係は破綻している。ならば俺が今すぐに、あのモンスターを討伐してもかまわないよな。

 マジックボウに新しい弾を装填しようとした時、団長が「そうだ!」と声を上げた。


「参謀! 金鉱石があっただろ! ありゃあ良い物だった。舌の肥えたブラックスライムも大満足だ!」

「え……」


 指示を受けた商人の動きが、止まった。


「……いや、ないすよ。金鉱石」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ