夢
2019年5月12日、梶 智洋はいそいでいた。
今日は彼女とデートの日だ。
カフェで待ち合わせのはずだが、
「遅い!」
振り向くと、彼女である園田美咲がテラスのいすに座っていた。
「ごめん」
彼女の向かいの席に座り、店員に注文した。
「大丈夫?」
彼女は一か月前に、暴漢に襲われたのだ。
「うん、すごく強い男の人に助けてもらったから」
彼女は少しずつ、笑顔を取り戻していた。
「何よんでいるの?」
彼女の手には、ブックカバーをした本があった。
「ブラックジャック!面白いんだよ!」
「ふーん」
「貸してあげるから、読みなよ」
「わかった」
受け取った本をバックにいれた。
そこから少し話して、店を出た。
2019年5月14日。
美咲に電話を掛ける。
「もしもし、どうしたの、智洋?」
「あのさ、この前借りた、ブラックジャック全巻ある?」
2019年5月19日。
本屋さんに行き、医大の参考書を買った。
2029年3月11日。
病院を歩いていた。
「先生!」
今日の手術をする女の子の家族がいた。
「娘をよろしくお願いいたします」
「ベストを尽くします」
部屋に入り、手術の服に着替える。
ブラックジャックを読んで、医師を志した。
今日の手術は難しいだ。
だが、必ず成功させる。
そして、手術室に入った。
2029年3月25日。
今日はあの子の退院の日。
「先生ありがとう!」
「どういたしまして」
「先生、あのね」
「何?」
「私、将来、学校の先生になる!」




