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榊原豪太が死んだ理由
2019年3月25日。
榊原豪太は道を歩いていた。
今日は仕事も休みで、予定には時間はまだある。
行く場所は決めていない。ただ、フラフラしているだけだ。
「だからさ、宇宙ってすごいんだよ」
すれ違った、宇宙の本を持った中学生が同級生と楽しそうに話している。
『平和だね~』
信号機が赤だったので止まる。
待っているのは俺しかいない。
誰かの悲鳴が聞こえた気がした。
「あぶない!」
ぼっ~としてたわけじゃない。
身体能力には自身がある。
だが、真っ白なトラックが右からきても避けられるわけがない。
嫌な音がした。
吹っ飛ばされた俺は、固いコンクリートに打ちつけられる。
「いてぇ」
自分の赤い血が広がっていく。涙が流れた。呼吸が上手くできない。
誰かの声がきこえる。
「大丈夫ですか!、しっかり!・・・だめ、血が止まらない・・」
あぁ、こんなことになるのなら、もっと体を鍛えておけばよかった。
後悔しても、もう遅い。後悔しても血は流れる。
目を開けられないほど弱ってきた。
最後の景色だ。
俺は静かに目を閉じた。




