録画No,6『こいつは龍?』
登場人物紹介
リース・ヴァンテ・ハウンド
…アルマにレルを取られてしまったことを後に一人で後悔する。レル大好きのお姉ちゃん。
レル・ヴァンテ・ハウンド
…リースに2週間国の言語を教えてもらい、今度はアルマに魔法について学ぶことになった。現12才の少女。
アルマ・ティルベ・バート
…肩まで伸びた青く透き通る髪。見る者魅せる青い瞳。だが、胸が残念である。リースの友達。
〜天界にて〜
いつものように寝そべりながら「ポポポテト」と描かれた黄色い文字に赤い背景のスナック菓子をバリバリと食べて、テレビを見ている。
「お!おぉ〜すごいな。この作品アニメ化するのか。あたしも気になってたんだ。さすがあたしの感。」
「……姉さん、いつになったら仕事をしてくれるんですか?」
「あたしは…んぐんぐ、転生世界の、んぐ…下調べをだな……あむ、んぐんぐ。」
「喋る時は口に物を含まないでください。」
すぐ隣で転生の書類をまとめているツェルカカは、またいつものようにツェルララに仕事をやるよう注意する。これが日常会話になっていることにツェルカカはため息をつく。
「…っよし。書類の整頓も終わりましたし、次は転生世界の調査ですね。」
「まへ、へふああ。あはひもいふ、ひょっひょおもひほほーは。(待て、ツェルカカ。あたしも行く、ちょっと面白そうだ。)」
体勢を変えずスナック菓子を咥えた顔だけを振り向かせ、立ち上がるツェルカカを止める。
ツェルララが何を言っているのかわからないはずなのに意味がわかってしまう自分が少し怖く感じた。
態度はともかく、今まで遊んでばかりだった姉が仕事に少し興味を持ったことは嬉しく思う。……だが、
「姉さん。連れて行きたいのは山々だけど、お父様に申請しなきゃいけないですよ?」
「………さっきのセリフは忘れてくれ、我が妹よ。」
咥えていたスナック菓子を油まみれの手で持ち、先ほどまでのダラけていた顔とは一変したキリッとした顔でツェルカカに指をさした。
マクロット姉妹の父親はツェルララにとって鬼でしかない。短気で真面目ときたもんだ。毎日が休日のツェルララにとって天敵とも言える存在である。
ツェルララは頭の中で「説教地獄」と「興味」を天秤にかけたのだ。天秤は迷いなく説教地獄を下ろす。
「仕事をしないのなら鈴斗さんの様子を見てあげたらどうですか?また、アレが起こるかわかりませんし。」
「大丈夫だろ。あたしが消したから。」
ツェルララは再び寝そべり「ポポポテト」を食べ始めた。
〜第2400転生世界(レルの現在界)〜
「フンフフーン♪王城なのに抜け出すのは簡単なんだよね〜今頃ミーリーはクルル様がいないって言って、慌ててるんだろうな〜ふふふっ」
愉快そうに笑うクルルは炎の鳥に乗り城下町の空を舞う。認識魔法を使用し目に止まらないようにしてはいるがあまり人がいない。
ふと下を眺めてみると豪華そうな家から出てくる可愛らしい女の子を見つけた。見つけたと行っても綺麗な銀の髪に目を引かれたのだ。
クルルは暇つぶしにその子を追ってみることにした。
「ふあ〜………散…は…世界の……収集の……っつって…、暇だし……に体力……だけ…からな…何か………ことは……かな。」
「う〜ん、ここからじゃ声が全く届かないな……降りて跡をつけよ。」
炎の鳥に「キューちゃん」と一言言うとキューちゃんと呼ばれたその鳥は追っている女の子から死角となる物陰に降りた。
「ありがと」
クルルはキューちゃんの頭をポンポンとすると「キュルルー」と小さく鳴き、キューちゃんは火の粉になってふわっと消えた。
しばらく何も起こらず、ただずっと銀髪の女の子が歩いているだけだ。朝なのでまだほとんどの店が開店しておらずあまり人がいない。
クルルが飽きてきた時、女の子の足元を中心に赤い魔法陣が浮かび上がった。それはだんだんと範囲を広げ、ついにはクルルの足元までに及んだ。
「え、え、え?な、何これ。見たことのない魔方陣?どういうこと?」
「ん?うわっな、なんだこれ。」
二人は突如現れた赤い魔方陣に慌てる。危機を感じ、抜け出そうとするが遅かった。
「キャーー」
「うわぁぁぁ」
魔法陣が起動し、赤い光に二人は飲み込まれる。ただ、クルルは急な展開に少しワクワクしていた。
赤い魔方陣は二人を飲み込むと瞬時に粒子となり消え去った。
意識がはっきりとしていくとともに激しい酔いがレルを襲う。
「う……うぅ…」
(は、吐きそう……)
口を押さえながら、なんとかその場に立つも足がふらついて膝をつきながら前に倒れる。
反射的に手を倒れる方へ伸ばすと柔らかい何かにあたった。なんだろうか。
「ん…ん、んん……」
人の…女の子の、声?ってことは、まさか…
酔いが覚めてきたレルは視界がだんだんと良くなってある程度周りが見えてきた。自分の手が何に触れているか視線を向けると、そこには仰向けになって倒れている女の子が一人。その子の胸に自分の手は触れていたのだ。
「…うわぁ!?」
レルは慌てて手を離し、少し後ろへ下がる。
これはツェルララが見ているアニメで言うところの「ラッキースケベ」というやつだろうか。
「二人…か…拙者の腕も落ちたものでござるな。」
後ろから小さくも力強い声が聞こえた。直後、あちこちに青い炎が宙に浮かぶ。その炎が照らす先にはとてつもなく大きな龍が居座っていた。
体は透明度の高い結晶を纏い見たもの全てを魅せるような紅の瞳。レルは一目見た瞬間、恐怖より先にかっこいいと思った。
「我の名はグライア。世界を見透かす叡智の龍。貴様らをここに呼んだのはこの我だ。」
レルと仰向けに倒れている女の子に向かって威圧感のある喋り方をする。
「ウホォォォ!成功したでござるよ、拙者。一度は言ってみたいかっこいいセリフNo.1でござる!我がオタク人生にもはや悔いなし……」
「な、何言ってんだこいつ……」
余計な一言でレルの中の「かっこいい」が吹き飛んだ。
ただでさえ狭い洞窟の中、グライアはその場で舞い上がる。何やら喜んでいるらしい。
「あぁ、これは失礼した。先程申した通り貴女らをここに呼んだのは拙者でござるよ。」
なんだこの龍。初めて会うのに初めてじゃない気がする……
レルは口を開けたまま硬直している。
「やはり異世界人にはあまり良さがわかってもらえぬな。『俺、龍に転生したんだけど』は神作なのでござるが…」
…あ、そうか。あのニート、ツェルララか。この龍の話している内容はさっぱりだがどことなくツェルララの話に似ているな。
レルは頭の中でグライアをツェルララを並べてみる。姿形は違えど似ている部分が多々あった。
「…俺に何の用?てか、あんまり動かないでくれ。さっきから揺れてんだ。」
「再び失礼した。少し待ってるでござるよ。」
どこかの侍みたいな喋り方をするグライアはいつもツェルララに接するような呆れた喋り方をするレルに頭を下げる。
少し間を開けてグライアの真下に赤い魔方陣が浮かび上がった。
レルはまたどこかへ飛ばされると思い身構えるが自分たちをここへ連れ去った魔方陣とは違うと感じる。
たちまち魔方陣は赤い光を放つ。光が収まるとそこには横に長くメガネをかけたおじさんがいた。
「この姿に戻るのはなん年ぶりでござるか。いやはや改まって長い年月を過ごしたものでござるな。」
左手を腰に当て、右手でメガネのふちを持ちニヤリと笑うその姿はキモイの一言に尽きる。
再びレルは口を開けたまま硬直の状態になった。その様子を見たグライアはさらに口角をあげる。
「転生者である拙者のボディに見惚れたでござるか?ござるか?」
「…え、転生?」
最後まで読んでいただきありがとうございました。
最近、手がつけられず投稿がかなり遅れました。申し訳ございません。
無理矢理バトルを入れるのもどうかと思い書き直しをしていたら遅くなりました。
バトル展開は先延ばしさせていただく所存です。