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俺は女神様の観察玩具  作者: 如月ユキハル
4/12

録画No,4『新生活は理性の危機』

登場人物紹介


リース・ヴァンテ・ハウンド

…目覚めるかもわからない妹の帰りを10年間も待ち続けたレルの姉。


レル・ヴァンテ・ハウンド 『犬山 鈴斗』

…前回、一言しか喋らなかったが一応はこの作品の主人公。まだ状況がわからず混乱中。


クルル・サナート・ウェンダ

…いろんなものに興味がある茶髪の少女。家にいるのが退屈すぎるのでいつも外のものに憧れている。


ミーリー・アルト・ドライム

…クルルの身辺警護兼、相手役。クルルの母からクルルの相手をしてあげてと言われた。クルルと同い年。



今回、この作品は文字を押し込んでいるため読みにくいかもしれません。すみません。


拝啓

今は亡き我が息子へ



俺は今大変な事態を目の前に硬直せざるを得ない状況に陥っています。なぜこのようになっているのか、自分でもわかるような、わからないような……


しかし、唯一わかっていることといえば、このままこの時を過ごすと「男の尊厳」を失うということぐらいでしょうか。


ツェルララに会って転生というものを知り、記憶を残されての即死の転生を繰り返しこれ以上苦しいことは無いと思っていたのですが、これは何と言うか「女の人との付き合い経験が全くない俺」にとっては息苦しい状況です。

こんな……


こんな、会ったばかりの女の子と一緒にお風呂に入るなんてこと……




ー数分前ー



「………」


(泣き止んだかな?)


「……うぅ……」


(もう少しか…)



こんな調子で早四分。俺が着ている純白のワンピースの胸元を濡らしつつ、女の子は泣き続けていた。 始めは『うわ、なんかいい香りするし柔らかいし、役得キタコレww』って思ってたけど…今は正直言って着替えたい。何の素材が使われているのか知らないが、ワンピースが濡れて少し重たくなっている。このままでは風邪をひいてしまうだろう。だが、今は女の子になっているんだ。俺が入っているとはいえ、元は他人の身体だ。しかも女の子。着替えれるわけがない。

しかし、このままだと風邪をひくかもしれない。鈴斗にとって究極の選択肢である。


(いくら自分の体とは言え、女の子の裸を見るだなんて……いや、ここは体の健康を優先すべ………)



「っくしゅっ!」



可愛らしい小さなくしゃみをするとリースは正気を取り戻しレルに背を向けながら涙を、ポケットから出したハンカチでなぞった。そして、頬を両手で二回ほど叩き振り返る。



「レル!お風呂に入るよ!」



リースが元気よく言うと、レルはこの人は情緒不安定なのか?と思った。

ポカンとしているレルとは逆にリースはその場で衣服を脱ぎ捨て下着姿になる。それを目前でされた元思春期男子中学生は赤面せざるを得ないだろう。

反射的に両手で視界を覆うが自分の中にある「見たい」と言う願望が指に隙間を開けた。



「な、なな、なに服脱いでんだぁぁぁぁ!」


「何って、お風呂でしょ?」



た、確かにそうだ。お風呂に衣服を着たまま入るなんて人は滅多にいないだろう。だからといって脱衣所でもないところで、しかも人前でいきなり衣服を脱ぐのは法律的に常識的にどうかと思う。


(異世界に法律があるかどうかわからんけども……)


せめて、一声かけるぐらいはしないのだろうか。いや、したとしてもこれはダメだ。主に俺の理性が。



「さぁ、早く行こ。レル♪」


(のあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)



リースはレルを抱きしめる。それによってレルの顔が胸に埋まり理性の耐久値が限界を超えた。


ー鈴斗の理性はオーバーヒートしましたー


だが、それでも理性を保とうとしたため今度はレルの頭がオーバーヒートした。



「プシュー……」


「え?!レル、どうしたの!」



もうこれ以上経験することは無いだろうと思えるほどの男として嬉しい体験をした鈴斗。もう、鈴斗の本能は気絶を選ぶしかなかった。

リースの心配する顔を最後に瞼は閉じられる。その顔にはまだ、涙のあとが残っていた。




そして今に至る。


(なるほど、あの後この女の子が俺を風呂に連れてきたのか……いや、なるほどじゃねぇ!)


一見すると、姉妹が仲良く湯船に浸かっているだけに見えるがレルはとても恥ずかしくて顔を赤らめている。



え?嫌なら逃げればいいじゃないかって?

無理でふ。両肩をがっちり掴まれてて身動き1つ取れませーん!

誰かhelp!help me!



(…ここは、あの手で行くか……)


「あの…のぼせそうだから先に上がってるね……」


「そうだね。もう上がろっか。」



レルの作戦は失敗したがお風呂から出ることには成功した。出来るだけ視界を狭め、お風呂の熱で曇ったスライドドアを開いてささっと脱衣所の出入り口の扉を開く。しかし、自分が目覚めた部屋がどこかわからない。そう、戸惑っていると……



「レ〜ル〜!」


「ひぃ!」


「ダメでしょ?髪もしっかり乾かさないと。女の子なんだから。」



まだ髪に水気が残っているのをリースは見逃さなかった。レルは脱衣所に引き戻される。

すぐに脱衣所にある扉を全て閉め、リースはそばにある棚から小さな箱を取り出した。

その箱の中には色鮮やかなカードと一枚の紙が入っていた。箱にある程度詰められていたカードは何やら紋章が描かれているように見える。



「………」


「…ん?気になるの?レル。」



自分でも気づかぬうちにマジマジと見ていたらしい。リースは「待っててね」と言い、カードを一枚手に取る。そのカードをレルの髪に翳す。



「えーっと、なになに?」


「…?」


「光よ奇跡と成りて『リ・ウォン』」



カードと入っていた紙を片手にリースは不思議な文を口にする。カードの説明書なのだろうか。レルがそう考えた次の瞬間、レルは優しい光に包まれた。

その光には心がふわりと宙に舞うような気持ち良さが感じられた。光がカードに戻っていくと、水気が多く雫をたらしていたレルの髪は水気なんて感じさせないほどにサラサラしている。

レルにはあまり届いていないがほんのり甘い果物の香りが漂う。リースがその香りに心を奪われている隙に扉の鍵を開けて廊下に出た。


今度はすぐに捕まらないよう直感で右に方向を変えてその場を全速力で去ろうとする。しかし、どうしたのだろうかまた足に力が入らなくなってしまった。レルはそのままバランスを崩し重心がずれて斜めになる。あまりにも急な出来事に対応できるはずがない。このまま、倒れてしまうのか…



「大丈夫ですか?レル様。目覚めたばかりなのですからあまり無理をなさらずに。」



そこで咄嗟に現れ、レルの身体を支えたのはこのハウンド家唯一の執事、ヴィストだ。ヴィストは一人で家事を全てこなす、完璧超人と言っても過言ではないような人である。ちなみにこれは後日談だ。



「だ、大丈夫ですよ。ありがとうございます。ヴィーさん。」


「いえいえ、これくらいなんてことございませんよ。」



何故かヴィーさんと話すときは敬語みたいな喋り方になってしまう。本物の執事というものに緊張しているからだろうか。

ん?待てよ……執事か……



「ヴィーさん、俺が寝ていた部屋ってわかりますか?」


「私が言うのもなんですがこの屋敷は広いですからね。ご案内いたしましょう。」


(よっしゃー!これであの姉から逃げられる。)



立ち上がろうとしてふと気がついた。足の感覚が戻ってきているのだ。そういう一時的なものだったのか。

しっかりと立つとヴィストの後を追い最初の部屋まで戻ってきた。



「戻ってこれた〜ありがとう、ヴィーさん。」



大きく伸びをしてベッドに飛び込むレルにヴィストは微笑んだ。



「私はこれで。」



部屋に入らず、一礼してからその場を去っていった。

静かになったらなったで少し寂しく感じる。いや、これでいいんだ。


(そういえば言語は通用するんだな)


五回目の転生時、ツェルカカにこっそり付与してもらった言語理解の能力がまだ引き継いでいるのだろうか。


(よし、試しに……)


レルはゆっくりと立ち上がり絨毯に着地して、色々な本が並べてある棚から古びた黒い本を一冊取り出した。そのまま適当にページをめくっていく。

よくわからない形をした文字のようなものがぎっしり並べられているページと見るだけで酔っしまうような丸い模様が描かれている。



「……はぁ、文字が読めねぇ…もし、カカさんがくれた能力を引き継いでるとしたら退化してるな……ん?」



文字だというのは理解できるが全くと言って読める気がしない文字を目を凝らしながら見ていると一部分だけ日本語らしき字体を発見した。



「かの者は語る神がお怒りになられた…と……」



言葉にして読んでみるといきなり身体がドンと重くなり、その場で膝をついた。

落としてしまったはずの黒い本はなぜか禍々しい紫色の光を纏わせ宙に浮いている。

書いてあった日本語をまだ全て読んではいないがこの先は読んではいけない気がした。


しばらくすると全身の重みが消えて身体が楽になった。まだ、禍々しい光を散らし宙に浮かぶ黒い本を急いで片付けようと手に取る。するとその光はレルの手から伝って全身を包んだ。

少し前にあの子からしてもらった「リ・何とか」とか言う呪文みたいなやつの光とはだいぶ違う。逆と言ったほうがいいか。

禍々しい見た目通り、とても息苦しい不快な感覚が全身を襲う。それは数秒で終わったがあともう少し長ければ気がどうにかなっていた。

より一層危険を感じた黒い本を早く本棚にしまおうと再びその本に恐る恐る目をやる。

すると読めない文字も日本語も、紋章さえも綺麗さっぱり無くなって白紙になっていた。少し疑問に思ったがとにかく片付けることを優先して棚にしまう。



「俺…意識、失って…ばっか……だ…な……」


お読みいただきありがとうございます。今回は話を切るタイミングが見つからなくていつもより長くなってしまいました。もちろん投稿日をズラすつもりはありません。

「◯◯が読みにくい」や「ここ間違っている」などがございましたら遠慮なく仰ってください。

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