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俺は女神様の観察玩具  作者: 如月ユキハル
2/12

録画No,2『目覚め、そして……』

登場人物紹介


ツェルララ・マクロット

…仕事をせずに毎日をグータラ過ごしている。一応、女神。


ツェルカカ・マクロット

…ツェルララの妹。姉であるツェルララの仕事を引き受けている。働き者。


犬山いぬやま 鈴斗れいと

…元中学二年生の男子生徒。ツェルララに4回も無駄に殺される。不安を抱えたまま次の転生するが……



(………)



意識と共に身体の感覚がだんだん、戻ってくる。

すると、ふわりとした柔らかい物が身体を包み込んでいることがわかってきた。布製の何かだろう。

いや、今はそんなことより、起きて状況を確認せねば。

ツェルララのことだ、きっとどこか訳のわからないところに転生させたに違いない。



「…うぅ…」



妙に重く感じる瞼を開けて、上半身を起こし、周囲を警戒する。そこには、傷を少しでもつけたら高額を請求されそうな家具がずらりと並べられていた。さらに自分はふわふわのベッドの上だ。

想像とあまりにも違いがある光景に呆気を取られる。

並ぶ家具を眺めていくと姿見の中より、一人の少女と目が合う。



「…………」



距離があったので細かなことはハッキリとは分からないが、その少女の、腰まで届くであろう髪が日に照らされて神に祝福されるかの如く優雅に輝く。


綺麗だ…

ただ、その一言しか口にできないほどに魅せられる。


しばしの間、口を開けたまま姿見の少女の虜にされていた鈴斗はふと、あることに気づく。


……姿見?



「まさか……俺…?」



そんなバカな。いくらあのニートでも、こんなことするわけがない。…はず。


鈴斗が右手をあげると姿見に映る少女は全く同じ速度で左手をあげる。逆も同じだ。何度やっても少しのブレはなく結果は同じ。

だが、鈴斗はどうしようもない事実だと認めたくはなかった。

しかし、視界に映る自分の頼りない小さな手や信じられないほど白く美しい肌が、これは現実だと訴える。



「……確認、だからな…確認…」



外見はもう諦めるとして、性別を確かめることにした。「見た目は少女、性別は男」なんていう、かすかな期待を抱き、小さな手を毛布に潜り込ませる。



「…ない」



わかってた。うん…わかってたんだ。


もう亡き我が相棒との別れに敬礼する。今までお世話になりましたと。


敬礼し終わった鈴斗はベッドから出ようとする。だが、身体が素直に動いてくれない。

先程、体を起こした時も、腕を動かしたりする時もそうだ。全ての動作に対して妙な重みを感じる。

転生して慣れない身体になったからだろうか。

そう思いながらも、どうにかベッドの端まで身体を動かした鈴斗は立ち上がろうとする。だが、立つことに反対するかのように足が安定しない。



「いって!…なんだ、これ……」



無理に立ち上がろうとして失敗し、柔らかい絨毯に膝をつく。しかし、鈴斗は諦めずにまた、立ち上がろうとする。だが、再度その場に倒れこむだけだった。


繰り返すうちなんとか立ち上がることはできたものの家具に支えてもらわなければすぐにでも倒れてしまう。まるで赤子だ。



「漫画とかでよく見る、普通の転生がしたかった……」



叶わぬ希望をため息混じりに吐きながら姿見の方へ歩く。

ここで初めて足のありがたさがわかった気がする。一歩、歩くのに対して奪われる体力が激しく、その合間に休憩を挟む。

家具の凹凸をうまく利用して、姿見との距離を縮めていく。



「ふぅ…」



何度目かの休憩に、自分よりも背の低い家具へもたれた。


ガタッ!


一方へ重心がズレた家具は、身を任せ切った鈴斗諸共、床に倒れた。

幸いなことに怪我はしなかったが、家具を倒してしまったことに変わりはない。


トッ、トッ、トッ、トッ……


追い討ちするかのように誰かの足音が近づく。恐らく、この家の持ち主だろう。

その足音はだんだん大きくなり今鈴斗がいる部屋のドアの前で静止した。逆に、鈴斗の鼓動は大きくなる一方だ。



(どうしよう、どうしよう……絶対許してもらえないやつだよこれ。転生したばっかだからお金なんて持ってるわけないし…身体で支払う的な展開に?いやいや、俺は男だし……って、今は女になってんだった!あーもう、どうしたらいいんだ!)



……自分でもなにを考えているかわからなくなってきた。


コンコンコン



「レルー入るよー」



鈴斗の耳に届いた声は想像していた威圧的な声ではなく、透き通るような声だった。

ガチャリと扉が開き、入ってきたのは黄金色の髪が目立つ淡い紅の瞳の少女だった。歳は17ぐらいだろうか。



「あー、またやっちゃった?しょうがないな〜レルは」



綺麗、けれどどこか寂しげな声でもあった。

少女は鈴斗が倒してしまった家具を元通りに片付ける。次々と来る予想外の展開に混迷する鈴斗を、少女は軽々と持ち上げた。お姫様抱っこだ。



「フッフーン。お姉ちゃんは鍛えてるから力持ちなんですよ〜」


(な、な、な、なんだこれ!ど、どうなってんだ!?)



やばい、頭が爆発しそうだ。


女の子と手を繋いだ覚えもないんだよ?

それもいきなりお姫様抱っこだよ?


さらに横腹に感じる柔らかな温かさ……



「よいしょ」



少女にベッドまで運んでもらった鈴斗はもう終わりかと悲しむ自分を押し殺し、太ももまで毛布をかぶった。

一度、落ち着こうと目を瞑る。その様子を見て少女は微笑み、ベッドの側にある椅子に腰掛けた。



(話しかけてみる…か…)


「あのー…えっと、お、お姉ちゃん?」


「…っ!」



話しかけようと言葉にした途端、少女の微笑む顔が驚きの表情へと一変する。わけがわからない。


ここは会話をするのが珍しい世界なのかと冗談のつもりで考えてみたが、ツェルララのことを思い出すとどんな冗談じみた予想でも全てがありえる気がしてきてならない。


再び少女の方へ顔を向けると、少女の瞳から小さな滴が頬を伝って流れていた。



「レ…ル……レル……レル!」



震える声を漏らしながら立ち上がり、鈴斗に抱きついてきた。そしてその涙は勢いを増す。



「…っずっど……うぅ…ずっと、待っで……ずっと、待ってたんだよおぉぉぉ!」



泣き噦る少女にどうしたものかと頭を抱える鈴斗。それ以前に状況が全く把握できていない。というか、泣いてる女の子相手に無理矢理質問責めなんてできるわけがないだろう。


(はぁ、まったくどうなってんだよ……)


投稿が遅くなってしまい、申し訳ありません。それと、今回も読んでいただき誠にありがとうございます。

睡眠時間が短くなり夜行性になって来たのが最近の悩みです。そのおかげで、体の調子が悪くて頭があまり働きません。改めて、睡眠の大切さを理解しました……

次回から出来るだけ早めに投稿しますのでこれからよろしくお願いします。

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