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走って飛び出したはいいけれど、1分くらいで息が切れて、その30秒後には立てなくなってた。
身体能力チートは、僕には無いという事が判明した。
息が整うまでと立ち止まり、辺りを見回した。
そして思ったこと。それはこの建物広い!そしてでかい!扉もでかいが廊下もでかい。窓も大きい。扉と扉の間隔が広いから、一部屋が相当広いという事だろう。僕がいた部屋も広くて立派だった。
もしかしてお金持ちの家に連れて来られたんだろうか?
そう思って僕の姿を見た。うん、塔の中で着ていたおんぼろワンピースだ。こんな服で人前に立っていたと思うと、ちょっと恥ずかしい。洗っているから汚くはないよ?ただ何年も着ているから、ほつれてきているし、ちょっと破れてきているだけです。
誰も追ってくる気配がないので、歩いて外に出ることにした。
廊下には絨毯は敷いてないだろうと思っていましたが、ばっちり敷いてありました。裸足にも優しいです。ウェルスタイ様、止めてくれてありがとうございます。汚れ物を増やすところでした。
キョロキョロとしながら出口を目指す。なんかいい匂いがしてきた。
「*****!」
急に後ろから声をかけられた。ビックリして振り返ると、大きな男の人が立っていた。多分2メートル以上はある。そして体重は100キロ超えていると思う!
「********?*****!」
なんか怒られている?口調は激しいし、外を指さしている。あっちに行けってことだろうか?
そう思っていると、大きな男の人の後ろからさらに人がやって来た。
この人も大きい。近くで見ると首が痛い。2人とも頭がオレンジで目も痛い。
「*****、*****」
「***。****!」
「*******。******」
2人が何か言った後、あとから来た男の人が僕のワンピースの襟足を掴み、空中にぶら下げられた。
ちょ!服が破れる!年代物だからもっと丁寧に扱って!
暴れたら服が破れるような気がして、大人しく吊るされる。
しばらく歩くと、外に出た。そこで降ろされるかと思ったら、さらに歩く。フラフラと揺れながら僕は運ばれて、やがて塀が見えてきた。立派な塀だなと思っていたら、地面に降ろされた。
正直、ぽいっと投げ捨てられるかと思っていたからちょっと安心した。意外といい人。
塀についている扉を指さされ、そこから出るように促される。
僕はぺこりと頭を下げて扉から外に出た。
初めての外の世界は、なんか前世を思い出す。行ったことないけど、なんか都会の住宅地っぽい。行ったことないけど。大事な事なので2回言いました。静かで高級感あふれる感じ?地面もちゃんと整備されている。歩きやすい。
暫く歩いていくと、外国の市っぽいところに出た。行ったことないけど。リンゴっぽいものやキュウリっぽいものが売られている。鳥っぽいものや豚っぽいものも吊るされている。
他にも色々ある。お金があったら楽しそうだ。
売られているものを見て歩いていたら、顔に何か落ちてきた。なんだろうと思って頭を上げると、今にも降りだしそうな空が見えた。一雨きそうだ。周りの人たちも慌てて家へと帰っていく。
どこか雨宿りできるところはないだろうかと辺りを見回してみるが、四角い建物ばかりで出っ張りがない。
探している間にポツポツだったのが、ザーッに変わった。一気に服が濡れる。
道端に立っていると邪魔になりそうだったので、建物の間に入った。
塔は近くにあるだろうか。
ちょっと不安になりながら雨が止むのを待つ。ずぶ濡れになりながら、どうしようかとその場にしゃがみ込んだ。
どれだけの時間がたっただろうか?雨が止んだ。寒い季節じゃないけれど、体がすっかり冷えてしまった。
早く塔に帰って洋服を着替えないと風邪を引いてしまう。
立ち上がるとしゃがんでいたせいか、ちょっとふらついたがすぐに治った。取り合えず歩き出そう。
雨が止んだからか、再び人が増えてきた。濡れた僕を遠巻きに見ている。確かにぶつかったら相手も濡らしてしまうだろう。人気のない方を選んで歩くことにした。
うん、人気のない方を歩くと、人相の悪い人に会うよね。知ってた。
ニタニタと嫌な笑い方をした男の人が2人こっちに近づいてくる。どう考えても悪い人だ。
逃げなくちゃ!でもどこへ?
塔はまだ見つかっていない。知り合いもいない。どうしたらいいんだろう。
もう2人は目の前まで来ている。走って逃げる?だめだ、すぐに捕まる。戦う?どう考えても負ける。
助けを呼ぶ?声が出ない。絶望しかない!
もうだめだ、運がよくて売られて、最悪殺される!
腕を掴まれてもうだめだと思った瞬間、掴まれた腕が離れた。
「******!!」
それは知らない声だった。