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うっかりアルデビルド様に落とされそうになった僕。
改めて緑の頭の人にお礼を伝える。日本式でいいのかな?
緑の頭の人の服をちょいちょいと引っ張る。こちらを向いてくれたから、僕は頭を下げた。
『ありがとうございました』
声は出ないけれど、口を動かす。そしてもう一度頭を下げた。うーん、いまいち伝わっていなさそう。
両手を合わせて拝んでみよう。先ほどから助けてくださり、ありがとうございます。
緑の頭の人は首を傾げていたけれど、しばらく考えた後わかってくれたようで、笑って僕の頭を撫でてくれた。どうやら伝わったみたい。
この人よく僕の頭を撫でるけど、弟でもいるのかな?
そんなやり取りを見ていたアルデビルド様は、緑の頭の人を指さして何かを言った。
「*******」
どうやら緑の頭の人の名前のようだ。この人は色々と僕の恩人なので、名前を知りたいと思っていた!
「*******」
『ウエイ?ルイ?』
なかなか発音が難しい。
「*******」
『ウェル、タイ?』
「*******」
『ウェルスタイ!』
言えた!あってますかと本人に向かって口を動かす。
『ウェルスタイ様!』
緑の頭の人に向かっていうと、良く出来ましたと頭を再び撫でてくれた。本当撫でるの好きですね。
僕はニコニコとしながら撫でられた。
そんな僕を見てアルデビルド様はちょっとすねた顔でウェルスタイ様の手を掴んだ。そしてなぜか僕の頭を撫で始める。
そんな対抗意識を持たなくてもいいのに。まあ、気持ちいからいいや。
人の温かさを感じていると、扉がノックされた。
アルデビルド様が返事をすると、扉が開いた。青い頭の人と赤い頭の人だ!
青い頭の人は今のところ何も言ってこないし、なにもされてない。けれど赤い頭の人はダメだ、怖い。
さっきまでの楽しい気持ちはなくなった。
僕の顔から笑顔が消える。それを見たアルデビルド様は少し考えった後、赤い頭の人に何かを言う。
「*****、********。************」
「******!****!!*********?」
「***********。*****」
「***」
言葉を交わした後、しぶしぶ赤い頭の人が僕の方を向いた。そして小さい声で何かを言う。
魔法を使うのかもしれない!
僕は慌てて近くにいたアルデビルド様の後ろに隠れる。ウェルスタイ様の時のようにうっかり洋服を握ってしまう。
アルデビルド様は逃げるなというように僕の背中を押して、赤い頭の人の前に押し出す。
アルデビルド様は優しい人だと思ったのに違った!きっと油断させるために頭を撫でたり、抱き着いてきたりしたんだ!
騙されたわけじゃない、僕が勝手にいい人だと思ったんだ。
守ってくれるものがなくなり、僕はその場にしゃがみこんだ。頭を抱え、小さくなる。治ったはずの頭の傷が痛い。信用しかけていたために、心も痛い。
イヤだ、イヤだ、イヤだ、イヤだ!!
やっぱりここにはいられない。まだ塔の中の方がよかった。ご飯はおいしくないけれど、僕を傷つける人も裏切る人もいない。
帰りたい、あの塔に帰りたい!
カタカタと震えながらそう願っていると、どこかで爆発する音が聞こえた。
「****!*****!!」
「「「**!」」」
アルデビルド様が何かを言うと3人が返事をし、どこかに行った。
部屋には僕とアルデビルド様が残された。僕は怖くて頭を上げられない。アルデビルド様が近づいてきて僕の横にしゃがんだ。手が伸びてきたのが分かると、僕はビクリと体を震わせ立ち上がり、その場を離れた。
そして部屋の隅に行く。後ろに誰か立たれるのが怖い。
怯えた顔でアルデビルド様を見る。
「****」
何か言われたけれど、わからない。もしかして僕を痛めつけようとしているのかもしれない。ゆっくりとこちらに近づいてくる。
「******」
何か言って手を伸ばしてきた。魔法で何かされる!
僕は扉に向かって走り出した。ここにいたら何をされるかわからない。塔に帰ろう。僕は塔から出るべきじゃなかったんだ!
ここがどこかわからないけれど、あれだけ高い建物だ、きっとすぐに見つかる。
そう思って走ったはいいけれど、僕は自分の体力を甘く見ていた。考えてみたらずっと塔の中にいて、運動なんてしたことがない。
すぐに息が切れて走れなくなった。