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塔の中 塔の外  作者: ちとせ
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二度寝から目が覚めたら世界がグルグル回っていました。もしかして寝すぎたのだろうか?

フラフラする体を起こしてベッドから降りる、つもりだったけれどうまく立てなくてベッドに尻もちをついてしまった。

これは二日酔いの症状に似ている気がする。お酒を飲んだ記憶ないけれど。動くのが億劫になったので、再びベッドに戻る。


寝すぎていてこの症状だったのなら再び寝るのはダメだろう。そうは思うのに体がうまく動いてくれない。

流石に三度寝はダメだと思うのだけれども、布団にもぐったら僕の意識は再び夢の中へと飛び立っていった。


どれだけの時間寝ていたのだろう、ノックの音で目が覚めた。


「シーネ、まだ寝ているのか?」


目は覚めたけれど、やっぱり世界はグルグルと回っている。やっぱり三度寝はダメだったか。


「シーネ?」


アルデビルド様が近づいてきたのは分かったけれど、動かせたのは視線くらいで体が言うことを聞いてくれない。


「調子が悪いのか?」


アルデビルド様はそう言いながら僕のおでこに手を当てる。


「熱いな」


あつい、という事は熱があるという事だろうか?だから世界が回っているように感じている?

朝起きた時は熱は無いって言っていたから、急に熱が出たんだろうか。うん、多分知恵熱だ。アルデビルド様とガウェン様の事を考えすぎて、知恵熱が出たんだ!

普段頭を使っていないからこんなことになったんだ。うう、これからはもっと頭を使って生きよう。


そんなことを思っていたら、アルデビルド様が氷枕を持って来てくれた。そして枕の代わりに頭の下に入れてくれる。


「ウェルスタイにも声をかけておいたから後で来るだろう。朝には何ともなかったのに急に熱が出るだなんてどうしたんだ?」


言えない。15歳にもなって知恵熱が出ただなんてとてもじゃないが言えない!


「どう、したんでしょうね」


そう言いながら視線をずらす。僕はすっとぼけることにした。


「僕は大丈夫です。アルデビルド様は部屋にいっても大丈夫です」


ちょっと気まずいので早々に退散してもらおう。1人で寂しくないかと言われたけれど、しつこいようですが僕は15歳です。問題ないですよ!

アルデビルド様は僕に肩まで布団を掛けた後、部屋から出て行った。これでちょっと安心です。


1人になって改めてアルデビルド様とガウェン様の事を考える。2人のどこが違うんだろう?

アルデビルド様と一緒にいると、ドキドキするんだけれど安心感がある。とっても幸せな気持ちになれるのだ。

それじゃあガウェン様はどうだろう?ガウェン様といると、とっても楽しい気持ちになる。次はどんなことをするんだろうってワクワクするのだ。


二つの違う気持ちに僕は戸惑っています。両方とも同じ気持ちだったらわかりやすかったのに。

そんなことを思っていたら僕はいつの間にか眠ってしまっていた。


誰かにおでこを触られて目が覚めた。


「起こしてしまいましたか?」


この声はウェルタイ様?そう言えばアルデビルド様が後で来ると言っていたような。先ほどと変わらず世界は回り続けている。熱はまだ下がっていないみたい。せっかくアルデビルド様が持って来てくれた氷枕は溶けてしまってブヨブヨしている。


「気分はどうですか?頭痛など無いですか?」


これは多分知恵熱なので、熱以外は問題ありません。コクリと頷いてから体を起こして辺りを見回す。アルデビルド様は部屋から出て行ったきり戻ってこなかったみたい。

この部屋にはウェルスタイ様しかいない。相談するチャンスじゃなかろうか。


「ウェルスタイ様」

「はい、なんでしょう」

「僕、好きなのはアルデビルド様ですか?それともガウェン様ですか?」


僕の質問にウェルスタイ様が固まった。そして二人の間に暫くの間沈黙が続く。


「シーネ様」

「はい」

「それは私にもわかりません」

「そうですか」


会話が終わってしまった。ウェルスタイ様にもわからないことがあるのですね。それじゃあ僕にもわからない訳だ。

気持ちがすっと軽くなった。


次に目が覚めたのは夜になってからだった。ぱっちりと気分よく目が開いた。今は夕ご飯が終わったくらいの時間。なんだかとってもすっきりした気分。

汗をたくさん掻いたみたいで体がベタベタしている。お風呂に入りたい。


ベッドから降りて扉から出る。誰かいないかな。誰もいないのなら服だけ着替えようかな。

そう思って辺りを見回すと、廊下の角からパフィエルが顔を出した。


「シーネじゃねーか。熱が出たんじゃなかったのか?」

「下がりました」


パフィエルにはお風呂のお願いはしたくない。後で何か色々要求されそうだから、誰か呼んできてもらおう。


「エルゴン様かウェルスタイ様、いないですか?」

「2人ともいるが何か用事でもあるのか?」


お風呂に入りたいと言えば俺が入れてやるとか言われそうだ。ここは黙って頷くだけにしよう。


「仕方ねえな、どっちか見かけたら部屋に行くように言ってやるよ」


それだけ言ってパフィエルは去って行った。もしかしてどこかに行く用事でもあったのかも。呼び止めて悪かったかな。

そう思いながら部屋に入る。そのままソファーに座ってぼーっとする。なんだか熱が出ていた時に何かあったような気がするんだけれど思い出せない。思い出せないという事は、きっと大したことじゃなかったんだろう。


そう思っていた愚かな僕がいました。

ドアがノックされて返事をしたら、ウェルスタイ様が部屋に入ってきました。ウェルスタイ様の顔を見た途端、記憶が戻ってきました。


『ウェルスタイ様』

『はい、なんでしょう』

『僕、好きなのはアルデビルド様ですか?それともガウェン様ですか?』

『シーネ様』

『はい』

『それは私にもわかりません』

『そうですか』


あー!

なんてこと言ったんだ僕!熱のせいで思考回路がおかしくなってしまっていたんだ!そうとしか考えられない!

この場でのたうち回りたい!というかこんな事相談されたウェルスタイ様がかわいそうだ!ウェルスタイ様の顔が見れないですよ!


「・・・先ほどの事は、忘れてください」


それだけ言うのが精いっぱいだった。

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