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それにしても男の人の前だと性格変わる女の子、本当にいるんだな。身をもって実感しました。
ガウェン様に手を貸してもらい立ち上がる。お尻痛いです。洋服に着いた埃を払った後、ガウェン様の部屋に戻る。
「女の人、怖いです」
うっかり言葉に出てしまった。いや、本当に怖かったから。ガウェン様も頷いている。
それにしてもどうやってアルデビルド様を虜にしたんだろうか。僕やガウェン様ではわからない。
でもちょっと胸がピリピリしていた気がする。なんでだろう?と思って胸を触る。何か硬いものが。
そういえばガウェン様からもらったネックレスがあったんだ。
取り出して見てみる。特に変わったところは・・・あれ?ちょっと色が変わった?
確か真っ白だった気がするんだけれど、ちょっとだけピンクになっている。おかしいな、僕の記憶違いだろうか?
首を傾げてネックレスを見ていると、ガウェン様が覗き込んできた。
「色が、変わっていますね」
あ、ガウェン様もそう思いますか?僕の記憶違いじゃなかった。
「どうやら魔法が発動していたみたいですね。それも僕たちの気づかない、もしくは気づけない魔法が」
「まほう?」
確か魔法は使っていないんじゃなかったっけ?もしかしてこの世界の魔法じゃないからわからなかったとか?
僕も首を傾げて考える。でも魔法の使えない僕じゃさっぱりわからない。
ガウェン様に聞いてみたら、魔法を使った後に魔法の粒子が暫くの間その場に残るのだそうだ。なので魔法を使った犯罪が起こった時にはその粒子から何系の魔法を使い、どれくらい時間が経ったのかを割り出すことが可能なのだそうです。
もちろん魔法が使える人が全員わかるわけじゃなく、魔力の高い人のみわかるのだそう。
ガウェン様は魔力高いんですね、チートなんですね。羨ましくなんかないですよ!
とりあえずこのネックレスの色が変わった理由を聞いてみる。何でもこのネックレスに付いている石は、付けている者の災いを代わりに引き受けるというものとの事。わかりやすく火だと赤、水だと青と分かりやすい。では薄いピンクだとなんになるの?
「やっぱり魅了の魔法か、それに近いものが発動している様です。ただ本来の魅了の魔法だと、もっと濃いピンクになると思うのですけれど」
なんだか厄介なものっぽい。そもそもこの世界に魅了の魔法なんてないって言ってなかったっけ?あれ?
僕の記憶違い?
「魅了の魔法、無かったはずじゃないですか?」
「この前は無いと言いましたが、調べてみたら昔はあったそうです。今では幻の魔法と言われているみたいですが」
「まぼろしの魔法?」
「昔、誰もが使えたと」
誰もが使えるものなの?だとしたら危なくないですか?魅了の魔法だなんて、自分の意志がなくなるのと同じだ。魔法を使った人の思いのままにされてしまうのでは?
「だから昔の人たちも守り石を持ったのです。痕跡を追えない人でも石を見れば魔法を使ったかどうかすぐにわかりますから」
なるほど。まさに今の状況だ。
「魅了の魔法を使った人間は信用されなくなります。最悪の場合、その町から追い出された人もいたと」
「もし魅了の魔法かかった人は、どうやって戻るですか?」
そこでガウェン様の顔が曇った。術者本人が解くかと言った後、僕の顔を見て目を逸らす。
「・・・真実の愛だそうです」
それは恥ずかしいで顔を逸らしますね。僕もちょっと顔を逸らします。気まずい空気が二人の間に漂う。
魅了されるくらいだから、思いを寄せられることは多々あるだろう。でももしそれが真実の愛じゃなかったら?解ける事のない魔法にかかり続けて一生を終える。術者が解くときはその人に飽きた時か、歳をとった時じゃなかろうか?気が付いたら高齢者。考えただけでも恐ろしい!
今まさにそんな恐ろしい魔法にかかっているかもしれないアルデビルド様とエルゴン様、おまけのパフィエル。なんて気の毒な!
真実の愛か。親愛でよければアルデビルド様とエルゴン様にはある。けれど、それではダメだろうな。
ふぅ、と思わずため息が出た。
「ともかく彼女が男の人たちを虜にできた理由が魅了の魔法か、それに近い物だという事がわかりました。今かかっている人たちはどうしようもありませんが、これから先かかるかもしれない人にも守り石を持ってもらうように言っておけば、これ以上の被害者を出さずに済むでしょう」
ガウェン様の言葉に僕は頷いた。ともかくこれ以上被害が出ないのであればそれに越したことはない。守り石はわりと貴重らしいけれど、使い捨てではないから何とかやりくりしたら問題ない。
よし、前向きに考えよう。
これ以上被害者は出なんだから今現在の被害者をどうにかすればいいだけだ。彼女には会うことが出来たから、今度はアルデビルド様たちと会ってみよう。
出来ることからコツコツと!継続は力なり作戦で行こうと思います。




