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※流血注意
「*******」
頭に手を置かれ、何か言われた。
僕の頭に?が浮かぶ。
「********、*******?」
「すみません、何を言っているのかわかりません」
「!」
言葉を返したら驚かれた。そして僕は気が付いた。
「僕、塔の中で誰の声も聞いたことない?」
声どころか姿も見ていない。ということは、この世界の言葉を初めて聞いたのではないろうか?
これは・・・
「異世界チートはないのですね」
本来は母親や父親に話しかけられて言葉を覚えるものだ。僕はそれをされた記憶がない。ずっと塔の中にいたから。
漫画とかで都合よく言葉が通じるとかあるけれど、僕には適応されなかったみたいだ。
今から言葉を覚えるのか。前世では勉強、嫌いだったんだよね。
いや、もしかしたら勉強チートあるかもしれない。
「********?」
王子様(仮)が再び声をかけてきた。
自分の世界に旅立っていた間に、いつの間にか人が増えていた。王子様(仮)の後ろに、背の高い人達が3人立っている。
この世界の人はカラフルな頭をしないといけないんだろうか?赤、青、緑の髪の毛の人たちが増えていた。
みんな背が高く、体はがっちりとしている。服を脱がなくてもムキムキなのがわかる。
そして割とイケメンだ。
「****」
王子様(仮)は胸に手を当てて何かを言っている。
「****」
自分のほうを指さして同じような言葉を言っている。もしかして名前だろうか?
よく耳を澄ませて聞いてみる。
「****、****」
「ある、ど?あー、でる?」
言われただろう言葉を繰り返して言ってみたら、急に頭に衝撃が走った。そのまま横に倒れこむ。
頭の中がグワングワンした後、痛みが襲ってきた。
「******!****!!」
王子様(仮)ではない、大きな怒鳴り声がした。
何が起こったのかわからず、痛みのある所を手で押さえた。ぬるりとした物が手についた。
なんだと思って手を見ると、手のひらには赤い液体がついていた。
今まで塔の中で生きてきた時にも怪我をしなかったわけじゃない。うっかり転んだ時に膝を擦りむいたし、寝ぼけてベッドから落ちた時には鼻血も出た。
けれど、頭から血が出たことはなかった。それにこんなに痛みを感じたこともない。
「****!***!」
「********!******?******」
「**!***********」
頭の上のほうで王子様(仮)の声と、さっき怒鳴った声が何か言っている。
僕は何か言ってはいけない言葉を言ってしまったんだろうか?
それとも僕は声を出してはいけなかったんだろうか?
血はまだ止まらず流れてくる。布団を汚したらまた殴られるだろうか?
また体が震えだした。とりあえず血が流れ落ちないように、もう一度頭を手で押さえた。傷口に手が当たって痛かったが、また殴られるのは嫌だ。怖い。
血が腕を伝って布団にポタリと落ちた、落ちてしまった。
今度は何をさせるかわからない。
どうしたらいい?どうしたら殴られない?
ベッドの上にいるのがいけないんだと思いついた。床には絨毯が敷いてある。これも汚せない。扉の外はどうだろうか?そこなら汚れても掃除ができないだろうか?
そう思った僕は、何か言っている人たちの存在を忘れて、血がついていない方の手で布団を跳ね除け、扉の方に走り出した。
けれど震える体はうまく動かず、足がもつれ転びそうになった。
倒れると思ったら、誰かに腕をつかまれて転ぶのは免れた。
「****」
何か言われた。また何かされるんだろうか。見上げてみると、僕の腕をつかんだのは緑の頭をした人だった。
「**********」
何か言われた後、頭のほうに手が伸びてきた。また叩かれると思った僕は、頭を両手で押さえてしゃがみこんだ。