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『ひだまり』

作者: 詩織
掲載日:2017/06/13



ガラス張りの天井からは青い空



正面の大きな窓からは裏庭の緑



かすかに噴水のやさしい水音



ひだまりに



___祖母の歌う”愛染かつら”










現在84歳の私の祖母が


初めてホームの門をくぐったのは


8年前の冬でした。




ひとりが楽でいいと


田舎で気ままに暮らしていた


祖母に異変が訪れたのは


考えれば、

もっと、もっと前だったのかもしれません。


離れて暮らしていたのを言い訳にはできませんが


そういえば、ということはありました。


もう亡くなった叔父を入院してると

思いこんでいたり、


同じものを何回も送って来たり、




でも、まさか、、、

あの、しっかりした祖母が

そんなわけはないという気持ちが

痴呆の始まりを、


見逃してしまったのかもしれません。




祖母が転んで骨折して手術することになって


母が付き添いにつくことになりました。


わたしも仕事を休んで見舞いに行きました。




病院で久しぶりに見た祖母は


まるで知らない人でした。



ピンクの花柄パジャマを着、

真っ赤なテラテラ光沢のある口紅を塗りたくり、

髪の毛にカーラーを巻いていました。



「どうしたん?あの恰好、、、」



「だって、、、

したいって聞かないんだもん。」



「隣のベットの人の持ちもん、

化粧品がないないって、

勝手に探したり、

お前が盗ったんだろうって、

言いがかりつけて、

何回 お部屋を変わったか、

わからないのよ?

ママだって嫌だけど、

お化粧してると大人しいのよ、

仕方がないでしょ、、、」




色きちがいに、なってしまった祖母。

戦時中、尋常小学5年生だった祖母。

長女として甘えをしらず育った祖母。

戦後、女学校に行かず就職した祖母。

働いて、働きぬいて女を捨てた祖母。




戦争というものが、


ひとりひとりの心に原爆をおとし


100人いたら


100人の戦争があって、


女も、子どもも、犬も、猫にも。


みんな、みんな、みんなに


違う、戦争があったのだろうと思います。



お洒落も 恋も 諦めてきた


祖母の青春


呆けた祖母は娘時代に帰ることが


一番多いです。


そういう時の祖母はこころなしか


若く、


頬 赤らめて介護師さんを見つめます。








まるで、初恋のように………





挿絵(By みてみん)

ゼニアオイ






少し暗い話なので”ゼニアオイ”を貼りました。


別名:マロウブルー


花言葉:温もり、純粋な愛……他



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― 新着の感想 ―
[良い点]  少しずつ少しずつ、本人が本人でなくなってゆく。  認知症の期間が長いのって、本人も周りの人もとてもつらいですよね。  医療や介護が進歩して、今の長生きの時代、いいのか悪いのかわかりません…
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