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The Stone of Destiny  作者: 櫻井


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88 才子才に倒れる


 怒気を含む言葉を投げかけられても、ミケはジェームズから離れようとしない。抱き付かれている本人も、どうしていいのか判らないのか、なされるままだ。

 その珍しく困惑した姿を少し離れた場所で眺めている集団がいた。


「なんぞ、この展開」

「娘婿に手を出そうとする女豹を牽制する姑」

「うわぁ、ドロドロだぁ」


 坑道攻略の続きをするため、アラベスクたちと合流しようとフロイデの街を歩いていた一同は、急に始まった修羅場に発展しそうな流れに喜色を滲ませる。突き飛ばされたことで足を止めた彼らは、一歩蚊帳の外となり、面白そうにやり取りを眺めることにした。


「しかし、当の嫁は判っていないご様子」

「ユミりんは色々欠落してるから」

「いや、正妻の余裕と見た」

「勝手なこと言わないの」


 対岸の火事を眺めるメンバーにデミオが珍しく突っ込む。女性としては、思うところがあるのかもしれない。


「カタリナがいてよかったな」


 しみじみとほっぴーがこぼす。


「まぁ、アデルより頼れるな」


 対人面での仕切りの巧さでは、カタリナが群を抜いている。


「約束の時間より、ちょっと早いからな。もう少しすればアイツも来るぞ」

「アデルは見るからに、あーゆータイプ嫌いだろ」

「対極だからな」

「うわぁ、大惨事確定じゃん」

「女の敵は、女ってか」


 本人がこの場にいたら、全員問答無用で凍らされそうな内容だ。

 声を潜ませながら、通行人の邪魔にならないように通りの隅に移動する。


「アデライードを女に数えるべきか、審議が必要な気もするが……」

「そこは入れてあげて」


 思わずデミオは、出てもいない涙を拭った。


「しかし、あの猫耳とあの顔……。どっかで見たことがあるんだよな」


 記憶の中に薄ぼんやりと浮かぶ顔に似ていると、ましゅ麻呂は顎に手をやり首を傾げる。だが、彼女はもっとシックで落ち着いた雰囲気を醸し出していた。とてもあんな、私可愛いでしょオーラ全開でグイグイ行くタイプではない。


「黒猫に似てるんでしょ。私もそう思った」


 ましゅ麻呂の記憶が正しいとデミオが肯定する。


「この前、コーヘイが言ってたアレじゃないのか? 」


 黒マグスを探し回ってるヤツらがいる。と、クランメンバーが噂していたことを思い出した鈴木がましゅ麻呂たちの顔を順に見た。人の口に戸は立てられない。漏れた噂話は尾ひれがつき、しかし推測が割りと確信をついたりしながら実しやかに広がっていく。


「ってことは、<ポーラスター>か。また厄介なの抱えてるな、アソコも」

「人が増えると変なのも湧くからな」

「うちはクラマス自体が変態だから、ノープロブレム」


 舌を口の端から出し、片目を瞑るデミオにましゅ麻呂が変顔で応える。そんなやり取りをしている間に、カナヤはなんとかミケをジェームズから引き剥がすことに成功したようだった。



  ◇  ◆



「そう、モリグナが出てきた時に」

「そうなんです。あの時は、お礼もちゃんと言えなくて」


 一行で終わりそうな出会いを大層なロマンスのように語るミケに、カタリナは辟易した視線を送る。ミケが身に着けているセットウェアは、正面から見るとワンピース、後ろから見るとビキニに見える露出度が高いクロスホルターネックのモノキニだ。黒猫は、このベースインナーにボトムはチャップス、アウターはショートボレロとバッカルーウェアを一式揃え肌色を軽減しているが、ミケはショートボレロをわざと身に付けず、大胆に開いた背中と胸の谷間を強調し晒していた。

 そんな健康美を全面的に押し出した女性が、恋する乙女のように瞳を輝かせてジェームズを見ている。


 外見と異なり、中身は夢を見たがるお年頃なのかとカタリナは首を捻った。

 記憶に妄想が混ざりこみ、ミケの中でジェームズという存在が美化されているようにしか思えない。カタリナの知るジェームズは、ミケが語る王子のようなタイプではない。寧ろ、最近よく一緒に行動するようになったアデライードが、そのポジションだ。


 ミケは、祈るように胸の前で手を組み、ジェームズに対し瞳を潤ませていた。今、話しているのはカタリナだというのに、徹頭徹尾ミケの視線はジェームズからブレない。その態度に、これは時間が掛かりそうだとカタリナは困った顔でアラベスクを見た。

 そろそろ、ましゅ麻呂やアデライードたちとの待ち合わせ時間が来る。


「いや、助けたというようなことは一切していない」


 目と目で語り合う二人の心情を察し、はっきりとジェームズが口にした。最初はミケの勢いに圧され、されるがままだったジェームズだが、冷静になる間を与えられれば言葉選びに容赦がない。


「でも」

「お互い前方不注意だった。私の方が、体が大きいから君を抱きとめた。それだけのことだ」


 言い募ろうとするミケをジェームズは事実だけ伝え訂正する。彼としては当然の行為であり、褒められて悪い気はしないが、賞賛されるようなことではない。まして、助けたなどと誇張表現をされるようなことでは絶対になかった。


 ジェームズは善人である。

 ユミがそうあるように、彼も彼女に倣ってそうあろうとした。ただそれが、自分に向けられた好意ですら受け付けようとしない方向に傾くことがままある。

 そんな時は、ユミがジェームズの傍らに立ち、そっと彼に耳打ちして理解を求めるのだが、今回は珍しく助け舟を出すことはしなかった。


 人の恋路を邪魔する奴は、というアレかもしれない。出会いがどのような形であれ、人と人との縁が結ばれたなら、それは大切にしたほうがいい。

 ミケの態度を見れば、ひとかたならぬ想いをジェームズに寄せているのは判る。あとは、ジェームズ自身がそれに対して彼自身の考えで応えなければならない。たった一度の行きずりを縁と手繰り寄せるのか、それはそれと切り捨てるのかは彼の自由だ。


「袈裟懸けにイッたよ」

「イケメンの圧、半端ねぇ」


 ヒソヒソと会話するタケルとハヤトを一瞥したミケの頬が見る間に紅潮していく。


「ミケ、物事には順序というものが」

「判ってるっ」


 自分が受け入れられない未来を考えたことがなかったのだろう。今までミケが出会った相手は、多少困惑したり壁を感じさせたりしながらも、最終的にはミケに甘くなった。怒りとも羞恥ともつかない震えが走る。

 上澄みを軽くひと舐め。美味しい所だけを摘んでゲームを楽しんできたミケが、初めてチョロイと思った相手に否定された。これは、彼女にとって由々しき事態だ。


「判ってる。けど、だって嬉しかったんだもん」


 俯き、微かに身を震わせるミケの背中をカナヤが慰めるように撫でる。


「ずっと会いたかったの、やっと会えたの。だから、私」


 顔を上げたミケは、薄く唇を噛み、今にも零れそうなほど瞳に涙を湛えていた。


「ごめんなさい……」


 再び俯き、手の甲で目の辺りを拭う。チリンと彼女のカチューシャに付けられた鈴が小さく鳴った。完璧なタイミングで響いたその音に、ミケ劇場に飲まれていたモカが我に返る。


「ユ、ユミりん」


 いつの間にかユミに抱きついていたモカは、この茶番の落とし所を彼女に求めユミの顔を見た。ジェームズが懐柔されるタイプではないことは、この場にいる誰もが知っている。が、しかし、彼も男性である。いつ、どんな拍子に転がり落ちるかなんて判らない。グリム・リーパーから忠告を受けていながら、ジェームズ本人を含め、誰にも伝えていなかった落ち度が判明するのも怖い。折を見て話そうと思いつつ、後回しにしてしまったツケが、ここで一気に回ってきた。

 ジェームズの後ろに立つ自分たちからは、彼が今どんな表情をしているか知る由もなかったが、もしも万が一、あの怜悧な瞳に端くれでもユミを見るときのような優しさが垣間見えたりしたらどうしようかとモカは心底焦る。


「んー、そうね」


 必死な顔のモカを見て、ユミは彼女を安心させるように笑うと自分に抱きつくモカの背中を抱くようにして撫でた。


「お友達から始めてみては、どうかしら」


 全然ッ、問題解決に至っていませんっ!


 お互い抱き合っていた為に、接触感応(ヒトク)としてモカの心の叫びが伝わってしまいユミは声を出して笑う。その笑い声に全員の視線が彼女に向いた。ジェームズも振り返り、ユミに対し何事かと問うように肩を竦める。


「ごめんなさいね。モカちゃんが、あまりにも可愛かったから」


 ジェームズが振り返ったことで、彼の後ろにいた水色の髪の少女がミケの目に初めて入った。口元を隠し、クスクスと声を抑えて笑う彼女の存在が、それまでミケを中心に作り出した空気を瞬時に崩す。そのことを肌で感じたミケは、顔には出さないが内心舌打ちした。


「ジェームズも酷いわ。お礼を言いに来てくれたのなら、素直にありがとうと返せばいいのに」


 折角作った空気を四散され不快に思うも、自分に有利になるようなことを言い出した彼女に、ミケの顔は明るくなる。


「ユミ、君は私の話を聞いていたのか。私は、礼を言われるようなことは何一つしていない」

「それでもよ。その人にとっては、とても嬉しい出来事だったの」


 この場合、絶対的にジェームズの言い分が正しいとユミとミケを除く全員が思ったが、屁理屈に屁理屈で返すのも大人げなく結局、誰もジェームズを擁護することが出来ない。


「……ユミ? 」


 ミケの目が横に泳いだ。

 ユミという名には覚えがある。あの時、彼はその名のプレイヤーを探していた。つまり今、自分に他意のない笑顔を向けてくる相手がその本人だということだ。


 ミケの消え入りそうな声を拾ったカナヤが彼女の顔を覗き込む。その視線に気づいたミケは、咄嗟に弱弱しい笑みを浮かべ首を横に振った。


「あー……。すまないが、我々もこの後予定がある。またどこかで会ったら話をする。と、言うのでは駄目かな」


 カタリナに肘で促され、アラベスクが話を切り上げたいと申し出る。埒が明かないというより、ほぼ事故だ。安全な歩道を歩いていたら、いきなり車がガードレールを突き破って飛び込んできた。そんな状況に巻き込まれた彼らとしては、一秒でも早くこの場から去りたい。

 ここで名刺交換(フレンド)でも申請しては。と言わない辺りは、アラベスクもミケの特異性を本能で見抜いたのだろう。


「ああ、こちらも突然押しかけてしまって申し訳なかった。出来れば、名刺を」

「お前ら何やってんのー? 」


 カナヤが名刺交換を申し出る寸前で、それを阻む声がした。


「あれ、マッシュ。もうそんな時間か? 」

「いんやー、ちょっと早めに来た」


 アラベスクたちにとっては渡りに船と、救世主の登場に内心沸き立つ。このままましゅ麻呂に便乗し、この場から立ち去りたい。しかし、カナヤにとってはこの機会を逃すわけには行かなかった。彼の目的はジェームズとの関わりを持つこと。ミケと彼の間に、楔を打ち込まなければならないと勝手な使命感に燃えていた。

 ましゅ麻呂の登場に動揺しつつも、態度に出ないように顔を強張らせ取り繕う。


「彼に名刺交換をお願いしてはどうかな」


 ミケだけに聞こえる声にしては大きな声で、カナヤはミケに提案した。言われたミケは、少し迷うように身をくねらせながら上目遣いにジェームズを見る。彼女としては、ジェームズの方から申し込んで欲しかったのだろう。

 だが、彼の視線は既にミケにはなかった。ユミと互いに無言のまま、譲ることが出来ない異なる見解について視線で戦っている。肩透かしを食らったミケにましゅ麻呂が声を掛けた。


「俺なら、いつでも名刺交換オッケーだぞぉー」


 言いながら名刺を送りつけてきた彼をミケは不機嫌そうに頬を膨らませ睨む。

 ミケ自身、ましゅ麻呂の顔や姿を間近で見たのは初めてに近いが、声だけは聞き覚えがある。時にフィールドボス戦で、またはグランカスターの街中で、いつも下品で低俗な言葉を垂れ流している病巣だ。

 黒猫もよく「交友関係を制限する気はないが、付き合う相手は選びなさい」と言っている。そこには遠まわしに、<SUPERNOVA>には近づくな。という意味が込められていた。<SUPERNOVA>だけではない。他にもいくつか、言動や素行が悪いクランを黒猫は挙げている。相互利益が認められる時は、互いに利用し合うが、そうでない時は馴れ合わない。適度にクラン同士の距離を取る事で、黒猫は<ポーラスター>という一つの巨大化した組織を動かしていた。

 ミケにとって黒猫は絶対だ。彼女の気に障るようなことをしてクランを追い出されては元も子もない。


 ミケは、胸の前に開いたウィンドウに表示された文字から拒否(いいえ)を選び画面を閉じた。


「うぇー、フラれたぁ」


 茶化しながら、ましゅ麻呂は慰めてくれとハヤトやタケルに抱きつく。状況として、もうミケが主導権を握れる空気ではなくなっていた。


「マッシュ早くしろよー」

「急がないと、王子来ちゃうってば」


 さらにシャウトで聞きなれた声が聞こえてきて、ミケは薄く唇の端を噛む。高みの見物を決め込んでいた<SUPERNOVA>の一同だったが、じりじりと距離を詰めジェームズたちの会話が聞こえる範囲まで近づいてきていた。話に割り込むタイミングを計っていたわけではないが、クランチャットでコーヘイに噂の詳細を尋ねたところ、これは要救助だと全会一致で議決し、即座にましゅ麻呂が動き、先に会話に割って入ったのだった。

 思い通りに事が運ばないことにミケに苛立ちが見え始め、カナヤは彼女の機嫌をどう取っていいのか判らず、ミケの横でオロオロとするばかりでジェームズたちを引き止める言葉が浮かばない。彼にとっては、<SUPERNOVA>がグランカスターの外に出てくるということが予想外だったのだ。ましゅ麻呂たちの存在に気が動転し、更にいつもと違うミケの反応が彼を戸惑わせる。


「じゃあ、俺たちは行くから」


 この機を逃さず。と、アラベスクがカナヤに挨拶し、先にハヤトたちを送り出して自分はジェームズの肩を掴む。ユミにべったりとくっついていたモカも、撤退の気配に即座にユミの後ろに回り、彼女の両肩に手を掛けた。


「ごめんあそばせ」と軽くしなを作って挨拶するカタリナに、カナヤが気を取られる。その隙にアラベスクはジェームズを連れだし、彼らの後について、モカがユミを後ろから押してミケの横を通り過ぎようとした。


「待って」


 咄嗟にミケは手を伸ばし、ユミの腕を掴む。驚いた顔をして足を止めたユミに、ミケも驚いた顔で手を引っ込めた。逃げ切れなかったと項垂れるモカを背中で感じながら、ユミは何か言いたげなミケの次の言葉を待つ。


「う、嬉しかったって気持ち、判ってくれてありがとう」

「どういたしまして」


 胸の前で指を絡め、開いたり閉じたりと気持ちを整理しているような仕草を見せるミケが、やっとの思いで搾り出したらしい言葉にユミは目を細めると小さく頷いた。


「早く行かないと置いてかれちゃうよ」


 急いで立ち去りたいモカと、少しでも接点を持ちたいミケ。


「大丈夫よ。皆、門の外で待っていてくれてるわ」


 二人の心情など、欠けらも察していないのだろうユミはのんびりとしている。


「どこかに行くの? 」

「坑道よ」


 あっさりと行き先を答えたユミにミケの目が開く。


「攻略してるんだ」

「ふふ。皆、新し物好きだから」


 坑道攻略は順調に進み、道中一つ目となるセーフティエリアまで確保されている。第一の宿駅となるそこで、プレイヤーたちは初めてドワーフと対面し歓喜した。現在は、鉄道開通に関するお使いクエストが発生している。今日のユミたちの目的は、そのクエストアイテムの納品と次のセーフティエリアまでの狩りに参加することだ。


「色々あるから、今日はごめんね。またね! 」


 暢気にミケと会話を続けようとするユミの背中を実力行使あるのみとモカが強引に押す。


「モカちゃん、そんなに急がなくても」

「だーめーでーすー」


 ミケのことが気になるのか、振り返るユミにミケの嗅覚が働いた。


「私も行きたいっ」


 ミケの声にモカが固まり、恐る恐るといった感じで振り返る。


「一緒に行ってもいいかな、同じPTでなくていいの」


 PTに入れてくれと言うなら、断る名目は思いつく。だが、別でいいと言われてしまうとどうにもならない。ゲームなのだ。遊ぶエリアが重なった所で、文句を言う筋合いはない。


「話しかけないし、離れたところにいるから」


 止めようがないと判っていながら、ミケは言葉を重ねる。ユミはそこで初めてミケの装備を上から下まで確認し、顎に手を当てて少し考える仕草を見せた。


 バッカルーウェアはDEXをメインに底上げし、次にVITとSTRが気持ち上がる効果を持っている。武器を装備していないので、どのスキルを伸ばしているかは判らないが、複合弓、投擲、多節鞭辺りだとユミは推測した。

 どれも大型Mobに対しては人数がいないと分が悪い武器種だ。盾役が出来るほどVITを盛っているとは思えず、AGI型でDEXを補填するとしてもバッカルーウェアは選択肢に上がらない。となれば、彼女が安全に坑道内を活動しようと思ったら、絶対に敵を漏らさない盾役とHP管理に長けた魔法職が必須となる。

 ユミは、ミケの隣に控える従騎士(エスクワイア)装備の男性へと視線を移す。従騎士装備は専用装備で、称号が【従騎士】の時にしか身に付けることが出来ない。【従騎士】は片手楯を取り回す職で、魔法にも振るバランス職だ。【魔法騎士】の前身とも取れる職だが、【魔法騎士】が盾を持つことはまずないので、そこは差別化されている。

 攻撃、防御、魔法と、いいとこ取りと評すれば聞こえはいいが、結局は色々中途半端となり、余程PSが高いか、固定PTで動かなければ、そこそこの強さで終わってしまう器用貧乏だ。坑道で盾役を務めるには足りないものが多く、現地でどこかのPTに混ぜてもらえればいいが、彼とミケだけでは不安しかない。


 考え込むように瞼を閉じたユミを見て、ミケはユミが自分の予想通りの思考をしたのだと察し、表情が動かないよう頬に力を込めた。自分とカナヤだけでは坑道に潜らせることは出来ないと、彼女は言うのではないだろうか。でも、彼女なら自分たちを同じPTに招いてもいいと言い出す可能性がある。


「あまり我儘を言うのは」


 ミケの計画を台無しにするようなことをカナヤが口にし、思わず彼を睨み付けた。その表情にカナヤが驚いた顔をすれば、途端に懇願するような顔に変わり、しゅんと項垂れる。目の前で繰り出される手練手管に、モカはハラハラとしながら次にユミが変なことを言い出さないよう心の中で祈った。


「お友達を呼んでみたら、どうかしら? 」

「えっ? 」


 目を開いたユミは、一度手を胸の前で打ち合わせ、とてもいいことを思いついたとばかりに瞳を輝かせてミケを見る。


「友……? 」


 流石にこれはモカも予想外で、何度も瞬きしながらユミに聞き返す。


「だって、バッカルー装備は作るために材料を集めるのが大変なものでしょ。中古品とも思えないし、それを作れたということは、お友達が沢山いるからよね」

「……」


 バッカルーウェアはドロップではなく、生産職がガチャ産のレシピを使って製作する。作成するための材料は、膨大な数の魔獣の皮や脂、入手困難な凶骨や妖糸などを使うため、材料集めだけでも骨が折れる作業だった。

 何も知らないユミは、ミケに協力者(トモダチ)が多いと思ったのだろう。


 だが、ミケの場合は、彼女自身狩りに同行することもあるが、基本は取り巻きが材料の殆どを集め彼女に渡したし、時には、完成品を渡すこともある。囲いを友達と言い換えるなら、数はそれなりにいるが、それはミケが望んだ答えではない。

 呆然とするミケに気づいたユミは、おかしなことを言ったかしらとモカを見る。


 純粋さゆえの強烈なカウンターに、モカは堪えきれず笑い出した。



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