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The Stone of Destiny  作者: 櫻井


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46 失われた巨人の国 3


 六本ある腕の内、四本を失ったペンカウルは次のフェーズに移行するため、ゆっくりと起き上がる。仰向けに倒れた状態からぐるりと身を回し、うつ伏せになってから身を起こす。起き上がり小法師に似た動きだ。


 巨人の長(ペンカウル)戦はフェーズ4まであり、自由に動いていた腕を破壊すればフェーズ1は終了となる。フェーズ2では巨人の目が残っていると面倒な事になるため、フェーズ1の内に破壊することが推奨されていた。


『 中央、開く 』


 巨人に一番近い位置にいたコーヘイが、胸元で組まれていた腕が僅かに軋んだ事に気づき、叫びながら後方へ下がる。それを合図に各自、自分の都合のいい場所まで下がり巨人の形態変化を見守った。

 この時間はエネミーに無敵時間が発生するため、攻撃しても無駄であり、棒立ちタイムとプレイヤーたちからは揶揄されている。


『 ハイ、出た。ガオー 』


 両手を大きく開いた巨人の胸には獅子の顔があった。


『 あれ見るたび、オレん家(マンション)のポーチにある置物思い出す 』

『 えっ、鈴木さんちって金持ち? 』

『 いや、普通 』

『 シンガポールにもあんなのあったな 』

『 ドーム脇のホテルの大浴場にも、あんなのが水吐いてたよ 』

『 私は、(みつ)『ユミりん言っちゃ駄目ーっ』わ 』


 ましゅ麻呂に遮られ、膨らみそうになる頬を両手で押さえて恨めしそうに彼を見る。


『 あんたたち、ライオンの顔当てクイズは後でやってよ 』


 珍しくデミオが、どのライオンに似てるかと盛り上がりかける面々を止めた。


『 ここからは頭上だけではなく、下から生える槍にも注意 』


 そして、ぶれない男が一人。


『 巨人対俺たちのモグラ叩きゲーム、開始! 』


 ほっぴーの号令を合図にするように、巨人は解いた両手でプレイヤーを潰そうと地面を叩き始めた。


『 キャーッ 』

『 聞いてなーい 』


 落ちてくる巨人の手のひらを避けるため、縦横無尽に駆け回る。


『 振り下ろし連続三回! 』

『 楯持ち分かれろ 』

『 追われたら楯持ちの後ろに隠れろ、一撃なら片手でも耐えられる! 』

『 遠距離、外周位置に移動 』

『 ユミりん、ジェームズ守……らなくていいから、そいつ強いから 』


 中央外周まで下がっていたジェームズの横に戻っていたユミをましゅ麻呂が呼び戻す。


『 ちょ。これ、どのタイミングで攻撃するの 』

『 弓がやる! 他は死なないように逃げてればいい 』

『 地面光ったら槍生える。ソコ、避けろ! 』


 沢蟹の注意に逃げ遅れたももかと豆丸が下から生えた槍に撥ね飛ばされた。


『 いたーいっ 』

『 やーばっ 』


 地面に落下し強かに全身を打ちつけたももかと違い、豆丸は飛ばされながらも空中で受身を取り足から着地する。同じ魔法職であっても武具、スキル、ステータスの組み合わせで、やれることの広がりが違う。


『 下から来る槍は八本、時間差で発生。足は止めるな、追いかけてくるぞ 』

『 自分にタゲ着てるって判ってる時は、人がいない方向に逃げろよー 』


 槍に打ち上げられた衝撃と、もろに地面に落下した衝撃で瀕死に近いももかを豆丸が回復する。そんな豆丸のHPも、ももか程ではないが削れていたのだが一瞬で全快した。


「え……」


 倒れていたももかも少し悔しそうな顔で起き上がる。豆丸が回復した以上に、ももかのHPも回復していた。続いて二人に上位魔法の守護が幾つか重ね掛けされ豆丸の顔も渋くなる。


 誰しも自分の職にはプライドを持ってやっている面がある。それが同じ魔法職に尻を拭われたのだ。薄っぺらいプライドであっても、傷付くものは傷付く。


「私、もう絶対、撥ねられない」

「同意」


 女の怨恨は怖い。それまでの緩かった雰囲気が一変し、二人の顔つきが変わった。


『 <攻撃連鎖(アタックチェイン)>だれだ? 』

『 俺が引く 』


 慌しく動き回る近接を横目に弓職が手順を確認していく。


『 一点集中! <必 滅 破 砕イクシプロシブショット> 』


 <攻撃連鎖>を担当するほっぴーが、矢を番えながら指示を出す。彼はサブウェポンとして弓を選択しているため、<攻撃連鎖>を取得はしているが、メインとして扱うプレイヤーより攻撃力は低い。あくまでトリガーとして使用するだけの<攻撃連鎖>ならば、ダメージ換算は関係なく彼が適任だった。


 沢蟹を皮切りに弓を握るメンバーが天に向け<追撃待機(バンドル)>を放つ。


『 <攻撃連鎖>!! 』


 真っ直ぐに放たれた矢が、獅子の額に突き刺さると同時にマーキングを表す魔法陣が矢を中心に巨人の胸に広がる。


『 <必滅破砕>!! 』


 沢蟹たちから一撃必殺のアーツが放たれた。着弾と同時に上空に待機していた矢が煌き、次々に着弾していく。


 このゲームは倍率計算のゲームでもある。


 <攻撃連鎖>はマーキング弾であり、受付時間内に与えたダメージの合計が追加ダメージとして入る。マーキングに使用するのは通常矢でもいいし、アーツ矢でも構わない。重要なのは、その後の合計ダメージだ。

 一個体に一つしか付けることは出来ず、受付時間が終了する前に二つ目が付けられれば一つ目が無効となり無駄撃ちとなる。

 ケイオズグランジのような団体戦ではケイオスの耐性、抵抗力を抜きにしても不向きであり、使用はされない。


 スプリガン戦ではイレギュラーな扱い方をしたが、これが<攻撃連鎖>の正式な使い方だった。


 弓をメインウェポンとすると最大火力は称号と直結する<豪気戦弓(アウトバースト)>や<疾風掃射(ラピッドスナイプ)>が代表として挙げられるが<追撃待機>と併用する場合、<疾風掃射>は初撃をコピーする<追撃待機>とは相性が悪く、<豪気戦弓>は相性はいいが使用後の硬直時間の問題からペンカウル戦では不向きであった。

 その点<必滅破砕>は<豪気戦弓>の三分の二ほどに威力は落とされているが、使用後の硬直はなく<追撃待機>との相性も良好。但し、高火力は燃費が悪いの代表でもありMP消費が高く連続して使用は出来なかった。


『 よっと、おまけだ 』


 プレイヤーを叩き潰そうと振り回される腕を蹴り飛ばしながら、双剣に持ち替えたましゅ麻呂が<衝撃波>でダメージを加算していく。同じくユミもましゅ麻呂とは逆方向からペンカウルに迫るが、彼女の狙いはダメージの加算ではなくペンカウル本体の背面にある槍を噴出する飾りだった。

 十六本ある尖りをすべて折る必要はなく、中央八本のみが槍を撃ちだす。


「上からも下からも、邪魔! 」


 弾丸特攻が常に決死行ではない。せめて一本。そんな意気込みどおり、尖りを一つ粉砕したところで獅子の額から巨人のデコルテにかけて爆発が起こった。


『 ダウン60秒。DPSチェック一回目、封印結晶露出 』

『 ライオンの口ン中、叩け! 』


 フェーズ1とは異なり、両肘で体を支えるようにうつ伏せに巨体が倒れこむ。

 上空で待機していたましゅ麻呂が急降下し、地面を踏むと勢いを乗せて開いた獅子の口の中に隠されていた球体へ突進した。


 詠唱組は<攻撃連鎖>が展開されると同時に詠唱を始めており、巨人が沈むと同時に詠唱が完了したもの順で魔法が放たれる。

 連鎖の与ダメージを少しでも稼ぐため、攻撃魔法を放っていた雪江たち魔導書組も休みなく次の魔法を触媒紙に書き付け放つ。


 魔法エフェクトだけではない。<震央(テンブロア)>や<神 罰 執 行ディバインパニッシュメント>など豪華盛り沢山で視界が悪い。


「見にくっ」

「時間との勝負だからな、なりふり構ってられない」


 獅子の顎が開き、中から球体のオブジェクトが姿を現す。鈍いメタリックな輝きを見せるそれに近接武器を持つプレイヤーが群がり全力で攻撃を叩き込んでいく。

 楯を装備するタケルのようなタイプは、この手の立ち回りでは火力不足は否めないが少しでも貢献しようと懸命に剣を振るう。傍らにいたシーグリフォンが槍で斬り上げるとともにバックステップで下がった。

 思わず、目で追ってしまう。どの武器種もウリはあり、満遍なく使用者人口は分散しているが、両手槍と槌は剣や斧に比べ少ない。その為、間近で戦い方が見れる今、つい目が行ってしまった。


「<貫け、紅蓮の虚牙(スカーレットソロウ)>」


 穂先から生まれた茨が、槍全体を覆い隠すより早く投槍する。それまでタケルの剣を受け付けず、滑っていた表層にそれは僅かだが突き刺さった。それと同時に、その場所以外からも一気に蜘蛛の巣状にひび割れが広がる。発光していた封印結晶がその輝きを失っていく中、球体の中に人影を見つけてタケルは驚きその場から下がった。


『 ラインクリア、石化発動 』


 足元の床に波打つような光が広がるが、何も起こらない。


『 破壊済み不発 』


 一瞬、ジェームズの声に焦ったタケルだが、石化と破壊というワードから、巨人の目が関係しているギミックなのだと関連付ける。確かにうつ伏せに倒れこまれたこの状態で巨人の目が開けば自分たちの殆どが視界に入り、巨人と目が合ってしまう可能性がある。

 常に一定の距離を保ちつつも傍にいる魔法職たちが、倒れた巨人の周りにいて近づいてこない理由が判った。


『 フェーズ2終了。近接退避 』


 軋るような音を立て、巨人の腕が動き体を持ち上げる。封印結晶に群がっていたプレイヤーが一斉に外周へと下がった。



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