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The Stone of Destiny  作者: 櫻井


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 アラベスクは手にしていたカップをモカたちのテーブルの上に置くと、アランたちが座るテーブルを挟んで彼の正面に立った。


「まず、ゲームっていうのは基本Lv制やスキル+Lv制と呼ばれるものが多い。これはLvが高い者の方が強いってわかり易い指標だ。けど、俺たちが今やっている【the stone of destiny】は完全スキル制ってやつだ。つまり、Lvは存在しない。全てが決められた数値の中で上げたり下げたりして自分で自分の強さを決める」


 説明慣れしているのか、淀みなく言葉を紡ぐアラベスクを頼もしげにアランは見つめる。


「最初の持ち点はステータス250、スキル800。これをどう振り分けて個性(つよさ)を出すか、ってのがこのゲームの醍醐味であり、Lv制との違いだ」


 一旦言葉を切り、アラベスクが人差し指を天に向けると、<TRUST>劇団のメンバーが待ってましたと立ち上がりアラベスクの左右に分かれて集まる。

 唯一タケルだけが、ユミを前に少し恥ずかしそうだ。彼はまだ<TRUST>に入って間もない分だけ色々吹っ切れてないらしい。


「Lv制っていうのは経験値、って定められたモノを貯めてレベルアップする。だが、完全スキル制はそれがなく、実践で経験を積む。まぁ、これを経験値っていうならそうかもしれないけどな。ただ、Lv制の経験値と違うところはあくまで100%で完成されるってところだ」


 フェルトン達が慣れた動きで机と椅子を片付け、少し広い空間を作り出す。


「限界突破とか色々あるけど、その辺は自然と判ってくるから割愛な。でだ」


 何が始まるのかとアランは僅かに身を乗り出し、瞳を輝かせている。


「まず、経験値を稼ぐためにはモンスターエネミーを倒さなきゃならない。今回、モンスター役はモカだ」

「モカでーす。最も可愛いの最可! よろしくね、って……外人さんに漢字って判るの? 」


 ぴょんと跳ねて一歩前に出たモカだったが、名乗りを上げてから首を傾げる。聞かれたアランは笑いながら肩を竦めた。


「そこはスルーしてくれ」


 即座にアラベスクのフォローが入る。


「で、続けるぞ」


 アランの横に座るユミが手を叩くと、それを習ってアランも拍手した。


「まず、FAとLAの話からだ。FA……あーファーストアタックな。これとLA、ラストアタックって概念がある。経験値で判断するゲームの場合、このFAとLAのどちらかにドロップ……戦利品か、それを得る判定がある。FAならいいんだが、LAの場合だと問題だ」


 カニ歩きでアラベスクに近づいたモカの頭をアラベスクが叩く振りをする。殴られた態でよろけたモカは、アラベスクに向かってシャドーボクシングを始めた。


「これがFA。歩いているモンスターを始めて殴ったってことだ。FAを取った人間に、判定があるならこの状態でモンスターの戦利品を得る権利が俺に確定した」


 モカの背後からフェルトンが近づき、ポコッと声に出しながらモカの頭に拳をのせた。


「きゅうぅぅぅ」

「こんな風に横殴りをされ、モンスターを他者に倒されたとしても権利はFAを取った人間だからモンスターが持ってる戦利品は俺の物になる」


 床にしゃがみ込んだモカが、どこから取り出したのかアラベスクに木の枝を差し出した。


「けど、これがLAだった場合、この戦利品は後から殴った……止めを刺した人間のものになる」


 くるりと向きを変え、モカは手にした木の枝をフェルトンに差し出す。彼はそれを無言で受け取った。


「横殴り禁止~とか言われるのはこの為だ。あ、横殴りって判るか? 」

「大丈夫、見ていれば理解できるよ」


 柔和な笑みを浮かべて頷くアランに、なら大丈夫だとアラベスクは笑った。


「今のは、知らない人同士の話な。同じパーティを組んでいた場合は、そのゲームのシステムにならって均等に入るから問題はない。寧ろ積極的に殴って早めに戦闘を終わらせたほうがいい」

「なるほど」

「経験値はフィールド依存だろうから、誰が殴ろうと自分が殴ってなかろうと、判定範囲内なら均等にそこにいる人間に入ってくる。勿論、ゲームによるがな」


 立ち上がったモカが、再びカニ歩きでアラベスクに近づく。


「そして、我らが【the stone of destiny】は経験値がないから実戦……殴り続けることで判定が下りる」


 さっきと同じように殴る真似をするとモカがシャドーボクシングを始め、今度はアラベスクも応戦し殴る振りを続ける。


「戦利品についてはFAに権利があるから、横から殴られても問題はない」


 ポコッ。声と合ってない動きでフェルトンの手がモカの頭を撫でた。


「上がる判定は、スキルによって違いはあるんだが。各国、その国の城があるところから遠くなるほどにスキルゲージが高い方が上がりやすくなる。このフロイデの前なら20%まではすぐ上がるぞ。これは、その土地にいるモンスターエネミーのランクが、フィールド依存で高くなる事に比例してる。ゲージが80%以上の者を適正としているMAPにゲージ30%の奴が挑んでも上がらない。30%なら30%を適正としているMAPの方が判定を貰いやすいんだ」


 先を促すように頷くと、アランは珈琲カップを口に運んだ。


「スキルゲージは、どれをとっても100%が一応の最大だ。アイテムを使えば、限界突破ってのが出来て、最大150%まで伸ばすことが出来る」


 ユミがアランの肩を指でつつき、彼に自身のパーソナルデータを開くよう耳打ちした。言われるまま、アランはプロフィール画面を開く。数ページにわたるそれは、最初の画面が自分の名前や称号といった基礎データが並び、剣術や槍術といった表記も見られるが、それはトータルデータが表示されるだけの画面だ。


 右から左へフリックして次のページに移動するとステータスやスキルを操作する画面が出た。

 上にステータスが並び、下がスキルとなっていて、各武器種がグループ分けされ並んでいる。その下に魔法や一次生産、二次生産と続く。

 更にフリックすると取得したアーツが武器種ごとに表示されるページに移った。何も取得していないアランのページはまっさらで、前のページへと戻る。


「例えば、剣術スキル。これは、片手剣、両手剣、双剣と三種類ある。どれも、その上に表示されてる剣術スキルに連動していて、三つの中で一番高い数値が剣術スキルの数値に反映される。三つの合計じゃないから気をつけろよ」


 アラベスクの説明を聞きながら、アランは興味深げにスキル一覧を眺めていた。


「魔法と生産は物理戦闘とちょっと構成が違うんだが、まぁ、大体同じもんだ。詳しく知りたくなったら、それ専門に取ってる奴に後から聞いてくれ」

「魔法は、今はカタリナに聞くのがいいわね」


 腕を組み、柱に凭れていたカタリナが、名を呼ばれた事に妖艶な笑みを浮かべてアランに向かい小さく右手を振る。

 その姿を見て笑っていたユミの視線が、ふわりと天井へ向いた。何かを考えるように左の指先で唇に触れ、横のアランへ視線を向ける。次にアラベスクを見てから、唇に触れていた左手で新しく買ったばかりの耳飾りに触れた。


「スキルに割り当てられた数字は800。これをあれこれ振り分けて、称号やアーツを取得していく。アーツっていうのは、ま、決め技だな。ただ殴るより、アーツってのを使ってぶん殴る方が威力が高い」


 ただ腕を曲げ伸ばししていたアラベスクが、大きく腕を引き、モカに向かって突き出した。ユミを見ていたモカの反応が一瞬遅れたが、誤魔化すように大きく吹き飛び、フェルトンに抱きつく。


「このアーツにも、パッシブとアクティブってのがあってパッシブは常時発動しっぱなしで補助的要素が強い。アクティブってのは、その時々で使用するものだ」


 ここまでで質問は? と、問うアラベスクにアランは肩の高さに挙手をした。


「この画面にあるステータは全て5となっているようだが」

「全部5ってなってるのは、このゲームで生きていくのに最低限必要な数値って奴だ。これ以上減らすことは出来ない。ステータスの持ち点は250だが、この最低保障値があるから実質プレイヤーが自由に出来る数字は220だ。横に矢印みたいな三角形のボタンがあるだろ? それを上に向ければ上昇、下に向ければ低下、横に向ければ固定となる。この値の動かし方はスキルと同じ、限界値もスキルと同じ100。一度、限界まであげて称号取ったら下げるとか、このゲームではスタンダードな遊び方だ」


 デフォルト設定では、他者からは個人のパーソナル画面は見えないため、ただ白い半透明な板をアランがあれこれ触っているようにしか見えない。


「ステータスが上がる判定はスキルに連動している。スキルが上がれば自然とステータスも上がる。スキルの上がり判定は小数点第4位まで計算されているが、表示は第2位までだからステータスは上がったのにスキルは上がってない。ってこともよくある。そこは気にしないで、なんでも行動すればステータスは上がる。って覚えればいい」

「了解した」

「ステータスは上から順に筋力、俊敏、生命力、器用さ、知性、幸運。これらの数値が縦糸ならスキルの%が横糸でアーツって模様を編んでいく。悪い、ユミ。お前のパーソナルデータ見せてやってくれ」


 言われたユミは頷くと、画面を呼び出し全体公開へと設定を変え再表示した。アランのデータの横にユミのデータが並ぶ。


「相変わらず、お前もおかしなことになってるな……」


 ユミのデータを覗き込んだアラベスクが目を眇める。


「こいつはAGI特化だから、この数値だけがやたら高い。あとはSTRとDEXか」


 アランは自分のプレーンなステータスに比べ、数字にバラつきがあるユミのデータを興味深げに凝視する。


「STR1で攻撃力が18上がり、VIT1でHPって生きしぶとさが20上がる。ついでにVIT1はDEF4に変換されるから防御力ってやつも上がる。HPが0になると死亡扱いになり、俗に床ペロって言われる死体になる」


 死体と聞いてアランが顔を顰めた。


「でもね、死んでも倒れてる自分の横に幽霊になって立っているのよ」


 楽しそうにユミが渋面のアランに話しかける。


「ユミさん、死んでるのが楽しいと思える人間は少ないですから」


 堪らず、タケルが突っ込んだ。


「このゲームは<蘇生>って魔法があるからな、死んでも生き返らせて貰える。あと、レーティング的にも貫通や四肢欠損はない。体がゴムみたいにグニャってなって全部受け止めるんだ」

「血は流れたりするのかね? 」

「一応な、鼻血とかはよく出てるぞ。あと擦り傷くらいか。そーゆーのが嫌な奴らは生産職ってのに就いて街に引き篭もっていたりするな」


 アランは頷くと気を落ち着かせようとしたのか珈琲を一口、口に含んだ。しかし、渋い顔が元に戻ることはない。


「申し訳ないがアラベスク、折角説明していてくれたのだが、私はその生産職とやらで街に引き篭もることにするよ」


 次に武器種の説明をしようと剣やら槍やらを取り出していたキサラギとタケルの動きが止まった。


「そ、そうか。ま、性質に合わないことを無理にすることも」


 アラベスクの言葉を遮る様に激しく扉が叩かれる。部屋の中にいる人間の返事も待たず、勢いよく扉が開かれた。



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