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The Stone of Destiny  作者: 櫻井


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「ふむ。やはりユミさんの武器ではないって事だね」


 合点がいったのか、紙袋が上下に揺れる。


「それじゃ。あまりお邪魔してもいけないから、もう行くわね」


 ザブルーがその場で足踏みし、向きを変えると騎乗している分だけ高くなったユミの視界に入る影があった。


「あら? 」


 怪訝な声を上げるユミに、出海もそちらのほうを向く。


「ん? あれは……バーンドレイクかな? 」


 ふわふわと翼をはためかせながら、採掘場に向かって飛んで来る飛竜の姿が見えた。この砂漠には三種類のモンスターエネミーが存在しているが、そのいずれも巡回経路に採掘場は含まれていなかった。


「前に人がいるみたい……何か、あったのかしら? 」


 飛竜の前を走る人間が真っ直ぐ採掘場を目指して走ってくる。スキル上昇は土地依存のため、60%を越えた辺りから狩場を求め遠征する人間も多い。

 ここ、テレネウンネフェルは第六マップに位置し、確かにスキルが60%を越えていれば攻撃は通る。しかし、確実に当てることが出来るかは別問題だ。故に、このマップでスキル上げや採取を行うには80%以上が望ましいとされていた。


「他に、仲間がいるようには見えないね」


 目を凝らし、バーンドレイクを連れて走ってくる人間を観察する。距離が遠いため、相手が何をしているのかは判らなかったが、時折振り返り何かを行うたびに飛竜が攻撃モーションに入る。


「あれは……<威嚇>、かな? 」

「多分、そう見えるわね」


 あまり考えたくはないが、可能性は二つある。もし、採掘場に人がいると気がつかず、こちらに走ってきているのなら、気づき次第方向転換をするだろう。だが、このままこちらに近づいてくれば確実にエネミーの索敵範囲に採掘場が含まれてしまう。


 気がつけば、周りで響いていたツルハシの音が止んでいた。


「シャウトで人がいることを教えるべきかしら? 」

「いや、もう少し見ていよう。急に声をかけたせいで倒れられたとしても、今いるメンバーでは誰も蘇生魔法は使えないからね。彼、か……彼女かもしれないけれど、砂漠のエネミーは思っているより強いという事を認識するいいチャンスだと思うよ。ソロで狩り取れるのはステだけじゃない、スキルも完成してる人間だけだからね」


 一見、冷たいように感じられる出海の意見だが、これは至極真っ当なものだ。数の暴力を自分の実力と勘違いしてはいけない。ソロで高難易度のマップに挑むというのだから、それなりに勉強は必要だ。予習をして準備を整える、失敗したら復習して何が悪かったのか、どうしたら勝てるかを考える。

 だが、事態はやはり良くないほうへと進行した。


「こっちに来るな」


 作業の手を止め、行く末を見守っていた紙袋たちの一人が呟いた。


「愉快犯のMPKか」

「生産職だと思って舐めてるな」

「装備持ってきてる奴いるか? 」

「世の中、完全生産特化ばかりじゃないっての」

「我らの強い味方、移動倉庫! 」



 バーンドレイクの索敵範囲に入るギリギリで、戦闘スキルを持った紙ブクラーズが一斉に移動倉庫を開いた。

 課金要素の少ないこのゲームで、唯一の安定した集金手段がこの移動倉庫だ。メインメニューからアクセスできるこの倉庫は、一ヶ月のレンタル制で各自5つまで持て、収納数は500となっている。

 レンタル期間中なら何度でも開閉できるが、戦闘中やダンジョンなどでは使用が出来ない。あくまで安全地帯でのみ使用可能となっている。


 倉庫を呼び出した者の前に小型のコンテナが現れ、呼び出した彼らの動きが止まる。インベントリの中の物を入れ替えているのだろう、その姿は無防備で確かに安全を確保した上ではないと使用できないと見ている人間に思わせた。


「あ、タゲ切りしたぞ」


 戦闘準備を行わず、成り行きを見守っていた紙袋が警告した。バーンドレイクが生産職を索敵範囲に納めた頃、スキルアーツの<隠遁>、もしくは<遁走>を使ったのだろう、飛竜を引っ張っていた人間の姿が忽然と消えた。

 <隠遁>は動かなければ有効な緊急回避技だ。徘徊するエネミーに突然襲われてしまった場合に、一時的に身を隠すために使われることが多い。動かなければ30秒間は姿を消すことが出来る。

 <遁走>は姿を隠したまま移動が可能。ただし、何らかのアクション……採掘であったり、攻撃であったりを行うと解けてしまうので要注意。


「おーし、いつでもいけるぜ」

「おう! 」


 被っていた紙袋を取り払ったのは7人。バーンドレイク相手なら余裕の人数である。


「私、混ざらなくていいのかしら? 」


 飛竜に向かい、勢いよく駆け出していく砂漠の男たちを見送り、ザブルーに乗ったままのユミが隣の出海に尋ねた。この出海も両手槌の使い手なのだが、未だ紙袋のままだ。


「大丈夫だと思うよ。喧嘩売られたの私たちだしね」


 やんわりと断られてしまえば、どうすることも出来ない。ユミは頷くとバーンドレイクに視線を戻した。


「飛んでるトカゲってのはなぁ、落としちまえば、ただのでっかいトカゲなんだよ! 」


 投擲された片手斧がバーンドレイクの飛膜を裂く。


「どっちもトカゲじゃん」


 両手槍を持った騎士が二段ジャンプを行い、バランスを崩した飛竜の横っ面を穂先で殴り飛ばした。


 ドレイク種の多くは、魔法を伴う咆哮、空中からの突進、鉤爪を使った引っ掻きなどの攻撃バリエーションを持ち、空中にいる間は魔法耐性を高く持つ効果を纏う。一番気をつけなければならないのが魔法を伴う咆哮で、これは口さえ開かせなければ容易に封じることが出来た。

 だが、彼らは翼があるため、咆哮を止めようにもすぐに空中に逃げてしまう。そして、地上に向かい咆哮し一方的にプレイヤーを蹂躙するのだ。

 バーンドレイクの場合は、火炎放射を地上に向かい放ってくる。そのため、まず飛膜を傷つけ地上に落とし、口を開かせない。が、ドレイク種に対する効率のいい必勝パターンであった。


「あら? また来たわね」


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