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気づけば目の前に広がるのは白い空間。

辺りを見回してみても何もない。

上下左右の方向感覚がつかめない不思議な空間。

感じるのはビルの立ち並ぶ都

会より田舎の山奥にある祠の様な神聖な雰囲気か。


「……懐かしいな」


白い空間に一人浮く男は周囲の状況を伺い状況を確認する。


『うむ。おぬしから見れば久しいのかもしれん……若人よ』


そんな声が聞こえるとふっと目の前に白い老人が現れる。

全身を白い洋装をし、髭も生やしており仙人のような見た目だ。


懐かしい。そうこの空間に来るのは1回目ではない。

以前にもこの空間にきたことがあったのだ。

その時は混乱してしまって今ほど落ち着いてはいなかった。


「久しぶりだなじじぃ。あれから5年か……思ったより早く来れたな」

「ふぉふぉ儂からしたらつい昨日の事じゃ。まぁこの空間に来るのもその時じゃからのぅ」

「普段、神界とやらに居るのか?」

「そうじゃの、まぁそんなところじゃわい。――それはそれとしてじゃ、またお主の力を借りることになったようじゃの」


少し顔見知りのこの老人と少し雑談を交わし本題に移ることになる。


「また異世界召喚か?…今回はクラスメイトと一緒に」


異世界召喚。

小説やフォンタジーでよくある異世界召喚だ。


以前召喚されたときは剣も使えず、魔法も使えず、まだ年端もいかない子供だったので身体もできていなかった。だが召喚された影響で身体能力が上がり。過酷な訓練を幾度も幾度も行い戦う術を得た。

その力を持って異世界の危機に奮迅の働きを見せたのだ。


「うむ。今回の召喚者も前回と同じ世界“セルバン”じゃ。クラスメイト達とは少しずらしてお主だけこの空間に引っ張らせてもらったのじゃ」

「そうか……また魔王でも?あの時俺が打ち取ったはずだが?」

「それがじゃの……今回は少し違うようじゃ」


目の前の老人は少し苦笑いになりながら答える。

以前召喚された世界“セルバン”あの世界で俺は魔王と戦い…激戦の末打ち倒すことができたことになっている。その時の魔王の言葉は今でも俺の心の中にある。

そして戦いの後、やり残したことも多かったのだが元の世界に召喚されてしまったのだ。

なので精神年齢がもう高校生とは言えないほど高いところにある。


…だが今回はどういう事だろう?


「ん?それは…?」

「たぶんお主も気づいていたとは思うのじゃがの、今回の召喚陣が現れた際、もう一つ足元に浮かばなかったかの?」

「あー……そういえばなんか黒い魔方陣が足元にあったな」

「それじゃ。今回お主が召喚されたのは他の者達が召喚される“エリスティア王国”ではなく“オルドラン魔国連合”じゃ。……お主が屠った魔王のな」


勇者として召喚さてた国“エリスティア王国”

魔王が統治し支配していた国“オルドラン魔国連合”

この二つの国が以前多く関わっていた国であったのでよく覚えている。


「……そういう事か。二つの国に同時に召喚されて俺だけが魔国の方に召喚されたか…ん?なんで魔国が召喚してきたんだ?」

「それはじゃのう……まぁそれは向こうに行ってからその目で確かめよ。今伝えても楽しみが減ってしまうからのう。ふぉふぉふぉ」

「じいさんらしいぜ。…まぁ予想はつくがな。俺がこっちの世界に戻ってから向こうではどれくらいの時間が経っていたんだ?」


肩を竦め時間間隔を確かめる。


「うむ。向こうでは地球の時間で言うと20年経っておる。お主の顔も知るものも多いじゃろうな」

「そうだろうな…にしてもあの国性懲りもなくまた異世界召喚しやがって。また平和のためだとか言ってんだろうな」


昔、目の前で平和の未来を目指すと熱く語っていた一人の王女の姿が目に浮かぶ。


「ふぉふぉそこでじゃ。少し手伝ってほしいことがあるのじゃが?」

「なんだいじいさん?タダでとは言わないが内容次第だな」


目の前のじいさんから頼みごとを頼まれる。


「もちろんじゃ。今回召喚したエリスティア王国は以前お主を召喚した時の有効性、実用性をみて戦力――兵器として召喚することにしたのじゃ……だがそうほいほいと異世界召喚されては困ってしまうのでの、そこでじゃ」

「―――召喚元であろう召喚陣・その技術を潰せばいいんだな?」


以前召喚された時は俺一人で軍以上の戦力を誇っていた。

その味を占めたのか、勝手に送還した後もそのような事をしていた事に若干の憤りを覚える。


「理解が早くて助かるわい。その為にはお主の昔の仲間とも戦うやもしれん……それでもいいのかの?」

「魔国に召喚される時点で敵対はするだろうな。あの王国には大きな借りもあるし……魔王との約束を果たすにはいいだろう」


20年だ。あの頃の仲間たちもまだ生きているだろう。


「それで報酬については何かあるのかの?スキルやステータスなどでもいいぞ?」

「――――いやそれも魅力的だが向こうの世界に残っているのはだめか?」


じいさんの報酬が破格なものであると知っている。

それこそ一つ一つとってみてもチートの様なものだ。

だが俺はあえて向こうの世界に残ることを希望する。


「そんなのが報酬でいいのかの?他にも…」

「いやいいんだ。地球に帰ってきても生きるのに苦労しそうだ。だったら生きるために必死に戦え自由に生きられる…あっちの世界の方が俺の性に合っている」


考え直そうと爺さんは提案するが、

以前からまた召喚されたらと以前から考えていたためその考えを伝える。

地球で金のために仕事を必死にするのではなく。

あの世界で生きるために戦う方が生きていると実感できる。

地球に帰った時、大きく何かが抜けたような、そんなやる気のなさが今まで続いていた。


「ふぉふぉそうかそうか。であればこちらもサービスしておこうかの。以前使っていたアイテム・武器等は空間収納(インベントリ)に入れてスキルとして付与しようかの」

「をっそれは助かるな。宜しく頼む」


じいさんからの申し出に喜ぶ。

旅の途中で多くのアイテムを集めていたが空間収納(インベントリ)がなかった為、捨ててしまう事も多かった。これがあれば好きなだけ確保できるだろう。


「むぅそろそろ時間かの。では向こうでも達者でのたまに寂しい爺さんの相手でもしてくれると助かるのじゃ」

「――?おう、こっちに来れることがあったら顔出すよ」


そういうと白い空間が薄れていき―――見えなくなった。

辺りは漆黒より深い闇。時空の狭間と言っていいのだろうか。宇宙の始まりの黒であり遥か彼方まで続く空間。

ふと、頭上に光る輪が現れ体が引っ張られる。

『さて、今回はどういう旅になるのかね!』


空間に身体は吸い込まれ辺りは何事もなかったように漆黒の闇が包んでいる。





―――――とある神域



このじいさんは茶が好きだ。

湯のみから湯気を出す茶を飲みながらホッと一息つく。

「うむ。茶はうまいのうー久々の出会いに乾杯じゃ」


じいさん――知恵の神オモイカネである。


「あ奴には暇つぶしに以外にもスキルを入れておいたからのう楽しくなりそうじゃ」


オモイカネは、報酬とは別に与えたスキルによっておこる今後の騒動を楽しみにしながら下界に広がる風景を眺めていた。




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