押しかけ便利屋
「よし! お金を稼ぎます!」
翌日ログインした私は高らかに宣誓する。
「えっ? なんで?」
ミカゲは不思議そうにしている。
「レシピを買うの!」
「いや、学校行けば色んな魔法教えて貰えるからわざわざ買わなくていいんじゃないか?」
「いいの! どうしても行かなきゃいけないわけじゃないんでしょ?」
「そうですけど……」
「では仕事を探しに行きましょう!」
「ふぇ〜い」
そしてやって来ました、道具屋。
「お丞、仕事ならギルド行かないと」
「営業するの!」
「何それ?」
「いいから!」
ドアベルの音と共に店内に入る。
「30分5cで働くので仕事を下さい!」
「えっ?」
「お掃除でも配達でも何か仕事を下さい!」
「ええっと」
「なんかやりたくない事はありませんか?」
「ぁあ。5cかぁ……じゃあお願いしようかな?」
「ありがとうございます!」
流石自称不可能ないゲーム。無茶ブリにも答えてくれる。
そして案内されたのはトイレだった。
「なんかめんどうで〜ぇ? お願いね」
そう言ってお姉さんはすぐにいなくなる。
「うぅあ〜……」
ミカゲが嫌そうな声を出す。
「酷いな。駅のトイレ以下だ」
今の所臭いを再現する機能はないので無臭のはずだが、ビジュアルだけで厳しい。
「おかしいでしょ! これゲームなのにトイレとかいらなくない? 有ったとしてもなんでこんなに汚なくするの?」
「チョット何言ってんのか分かんねぇ」
「もお! チョット待ってて!」
そして私は一時停止する。
「あーお丞が固まった〜…………よし」
ゲームを再開すると目の前にはペンが迫っていた。
「おい! 何やってんの!!」
「あれ? 早いな」
「洗剤の成分を調べてきたの!」
「へー」
ミカゲが心底どうでも良さそうな声でいう。
「なんか分かんなかったけど、ようは汚れを分解して浮かせて落とせばいいの!」
「へー」
はい、という訳で適当に何個か魔法を作って試します!
∽───────∽魔法陣∽───────∽
火:1
水:1
風:1
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域:1
時:1
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コスト:5
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動
1:↑ 2:↓ 3:→ 4:← 5:↑
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何か良く分からない魔法を便器全体にかける。
「変わらないな」
「よし! 次」
∽───────∽魔法陣∽───────∽
火:2
水:1
風:1
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域:1
時:1
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
コスト:6
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動
1:↑ 2:↓ 3:→ 4:← 5:↑
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同じようにするとくすみが取れたように思う。
「よし! 何故か分からないが魔法だけで綺麗にしてやったぜ!」
「いや、まだだろ?」
「はい?」
「色は落ちてるけどさ、やっぱり掃除はしないと」
そう言ってミカゲはトイレブラシを指す。
「チッ。だったら自動で動けはいいでしょ!」
∽───────∽魔法陣∽───────∽
火:0
水:0
風:5
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
域:1
時:1
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コスト:7
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
動
1:↑ 2:↓ 3:→ 4:← 5:↑
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ブラシに魔法をかけるとブラシが勝手に動いて磨いていく。放って置けば綺麗にしてくれそうだ。
「床は?」
「お前は小姑か!」
「仕事は仕事だろ〜」
「……雑巾が勝手に動けばいいんでしょう?」
∽───────∽魔法陣∽───────∽
火:0
水:5
風:0
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
域:1
時:1
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
コスト:7
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
動
1:↑ 2:↓ 3:→ 4:← 5:↑
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今度は雑巾に魔法をかけると雑巾も勝手に動き出す。
せっかくなのでついでにもう一つ魔法を作る。
∽───────∽魔法陣∽───────∽
火:5
水:0
風:0
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域:1
時:1
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コスト:7
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動
1:↑ 2:↓ 3:→ 4:← 5:↑
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こうして私は風オート水オート火オートの魔法を作成した!
「なんかスゲーよお丞! 道具が勝手に動いてるよ! こんなん初めて見た!!」
「ふふふ。いいかいミカゲ君、道具とは使い方に合わせて作られている。つまり! 道具は動き方を知っているのだ!」
無駄にドヤ顔で決めてやった。
こうして私は37分でトイレ掃除を終了、5cを手に入れた。
「チッ、7分もサービス残業しちまったぜ」
「誰?」
「いいからミカゲ! あんたも営業してきなさい!」
「はい!」
「目標は今日で30c!」
「はい!」
こうして私は押しかけ便利屋としてお金を稼ぐことにした。
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雪之丞 :L5 H50 M60
所持金:42
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