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 マズイとアナフィエルは思った。自分が公安の内通者であることは、既にバレている。口答えはできない。それをやってしまえば、確実に殺されてしまう。目の前にいるテロ組織のメンバーは、命乞いを許すような連中ではない。

「大丈夫か? あの犯行計画書は公安に筒抜けだ。暗殺は確実に阻止されるし、あのビルに潜入したレミエルやザフキエルは今頃公安に拘束されている……」

 希望の光を放つアナフィエルの瞳。それを見たサンダルフォンは、失笑した。

「罠ですよ? 態々公安に漏れているかもしれない作戦を、実行するわけがないでしょう。あの暗殺計画は、あなたの化けの皮を剥がすための物だから無意味。どんなに移送ルートを変えようが、時間を変更しようが、そんなの関係ない。無駄足ですよ。馬鹿な公安は」

「それで、奴らが現れるはずのビルには爆弾が仕掛けられているんだろう? それで邪魔な公安警察を皆殺しにする算段なんだ」

「残念。不正解。殺しませんよ。だって、このタイミングで殺したら、後々面倒なことになるから」

 サンダルフォンの笑い声が、部屋に響く。それから彼女は、どこからか拳銃を取り出し、銃口をスパイに向けた。

「これが最後よ。公安はどこまで掴んでいるの?」

 サンダルフォンの最後の問いかけ。彼女から漂う殺気は、どのような答えでも殺すというメッセージを感じ取らせる。

 だが、男は恐怖に脅えることなく、サンダルフォンと対峙した。

「残念だったな。サンダルフォン」

 突然黙り込んでいた男の口が動く。その声を聞き、彼女は首を傾げる。

「何か切り札でもあるの?」

「お前はミスを犯した。俺を精神的に追い詰めるために、拘束した仲間の映像を俺に見せた。それが間違いだったんだよ」

「意味が分かりませんね」

「俺もあいつらと同じように拘束すれば良かったんだ。お前は拷問が好きなんだろう? それなのにお前は俺を拘束しなかった。このように両手足は自由に動く」

 アナフィエルは、両手をヒラヒラと動かす。それに対し、サンダルフォンは苦笑いする。

「何を言い出すかと思ったら。悪いけれど、あなたが隠し持っていたスマートフォンや拳銃、いざという時に用意していたっぽい自殺用の毒薬は……」

 サンダルフォンは言葉を詰まらせ、目の前に立つ公安のスパイを睨み付けた。

「やっと気が付いたみたいだな。俺の後方にあるドアには、高圧電流が走っている。ドアを触るだけで感電死するんだろう。お前は、俺を精神的に追い詰めるつもりで、ドアに電流を流したんだろうが、裏を返せば逃げ道を作ってしまったんだよ。あのドアを触れば、自殺できる。あのドアにお前の体を叩きつければ、お前を感電死させることができる。どっちだと思う? 俺が今考えているのは」

「面白いね。女だからといって甘くみると、痛い目に遭うよ」

「残念。不正解。自殺か拷問の二択問題に、目の前にいる構成員と格闘なんて答えはないぜ。残念だったな。あいつらと同じように拘束していたら、ゆっくり拷問を楽しめたはずだ」


 この瞬間、サンダルフォンは思考の迷宮に迷い込んだ。スパイの自殺を止めるためには、彼の腕を掴めばいい。だが、それをやればスパイに体を投げ飛ばされて、電流の流れるドアに激突。

 一瞬の内に、最悪な事態を回避する作戦を思いついたサンダルフォンは、銃口を公安の鼠の足元に向ける。そして彼女は、銃弾を彼の右足に放つ。だが、男は撃たれたにも関わらず、平然と立っている。

「賢いお前は、それを選ぶと思ったぜ。だが、その程度の銃弾だったら、目を瞑っていても避けることは可能。俺は、そこらの公安警察とは違う。あらゆる拷問に耐える精神力と銃弾を避ける身体能力。二つを兼ね備えた最強の公安警察官だ!」

「確かに情報不足だったわ。拘束していたら、あなたが壊れるまで、拷問できたのに。完全なミスね。精神力と身体能力。それに付け加えて、天才的な頭脳の持ち主。公安の中にも厄介な奴がいたのね。でも、組織内にはあなたと同じような芸当ができる幹部が、結構いるんだよ? 超人的な身体能力と精神力。天才的な頭脳を持った幹部。そんな連中で構成されているからね。たった一人で私達の組織を壊滅させるなんて不可能」


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