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07 異物調査

 ■システィーナの視点



 コックリは波動砲の聖魔法を足に集めて宙を駆け、ゆっくりと落下しながらも小さな波動で落下速度を調整し、緩やかに青い氷山の上に降り立つ。



「よし、到着!」

「じゃな〜い! もう! もう!」



 私はお姫様抱っこされた状態で、コックリの胸をバシバシ叩いた。コックリは…………イタズラっぽい顔で笑ってる…………もう! いつもこの笑顔でごまかして! もうっ! もうっ! もうっ! 大好き! ああ〜、顔が熱くなる! なんで私は顔に出やすいの!?



「さて…………ここが氷山の上か。」



 コックリは辺りを見渡した。

 あ、あのぅコックリ…………うう〜嬉しいんですけれど…………あの、そろそろ…………そろそろ下ろしてくれないと…………うう〜…………胸が…………ドキドキして…………心がおかしくなっちゃいそう…………。うう〜、コックリの汗の匂い…………好き…………温かい体…………好き。うう〜。



「おお〜、すまんすまん。」



 コックリは私をうやうやしく下ろしてくれた、はあぁ助かった。下ろされたとたんに足元にひんやりとした感覚が走る。わあ、やっぱり氷だから冷たいのね…………。陽射しは強くて暑いのに、周りの空気はひんやりと冷たく、寒いぐらい…………変な感じ。



 私は周りを見渡した。

 この氷山は起伏に富んでいて、所どころ先端のとがった柱が飛び出ている。亀裂もあるわ。それにしても…………本当に美しい青い氷…………まるで水色の絵の具を混ぜたような、氷の青さ…………。透きとおるような美しい青。ええ、なんでこんなに氷が青いの?



「氷山は太陽の光のうち赤色の光を吸収して、青色を放射するようだ。それで氷山は青く見えるみたいだね。」



 そうなのね…………さすが神殿騎士は物識りね。

 コックリは氷を触ったり、削ったり、いろいろ調べている。アゴ髭を触りながら、ブツブツ呟いている。



 亀裂や斜面に気を付けながら、コックリと私は氷山を調査する。ああ、氷が少し溶けて青い泉ができている部分がある。わあぁ綺麗………本当に綺麗。触ると、ひゃあ! 冷たい! 冷たいっ!



 はあ、それにしても本当に寒いわね。

 私はひとが十人輪になって手を繋いでやっと手が届くかと思われるひと際太い、飛び出た氷柱に手をついた。グローブを持ってきて良かったわ。



「ん? シス…………なんだ、その氷柱…………。」

「え?」



 私は氷山を見た。相変わらず、青い綺麗な氷だ。

 …………けれど、あれ?

 全体的には青いのだけれど、中心部分がなんだかくぐもった色で、茶色っぽい?。



 中に何かがあるような……………………。



「はわ!」

「中に何かある!」



 私はビックリして急に動いたため、ツルッと滑ってしまった! 背中から落ちる! と思ったら、コックリが私の腕をつかんでフワッと私を抱き寄せる。はわあぁぁぁ! またお姫様抱っこだ! 顔と顔が滅茶苦茶近いっ!



「はわ、ぁ、ありが……とぅ。」

「いや、こちらこそだ。シスが触れなかったら気がつかなかった。なんだろう…………何が入ってる?」



 コックリは私をお姫様抱っこしながら氷だけに集中している。もうっ! こんな顔の近くで抱きしめたままで他のものに意識を集中しないで! もうっ! もうっ! もうっ! このひと! 女心を! なんだと思っているの!? もうっ!



 コックリは怒っている私に気づかず、氷柱に意識を向けたまま私を立たせた! もうっ!

 コックリは氷柱をたたいたり、音を聞いたり…………そしてアゴ髭を触りながら考えること数秒。



「よし、この氷柱だけ、割ってみよう。」



 コックリは私を下がらせた後、剣を引き抜いた。

 なるほど、波動砲だと中の物体まで粉々になる可能性があるから、剣を使うのね…………。コックリは剣を肩に担ぐと、何か思案気味に立っている。ああ、どこを切るか、迷っているのかしら? と思った次の瞬間、肩に担いだ状態から私の眼には止まらぬほどの速さで薙ぎ払っていた! 速っ! 本当、右肩に担いでいた剣がいつの間にか左の方に抜けているんだもの――速っ! ノーモーションよ、速っ!



 太い氷柱が斜めに切られて、重力に従って滑り落ちる。



 ズズンッ!



 という音と震動が体を震わせる。果たして切断面は何か? 樹木だったら年輪でわかるけれど……んん? 凍っているけれど……肉っぽい? 動物の肉ではなく、海の生物の…………。



「これはもしや…………。」



 コックリはそういうと、切り落とした氷柱の氷を剣で薄く削ぎ始めた。わあ、すごい切れ味でどんどん氷がなくなっていく。ある程度氷が落ちて、コックリは大まかな全容が分かったようだ。



 そこから出てきたもの…………何なのコックリ。



「これはおそらく…………。」

「おそらく…………?」

「おそらく、アンモナイトかオウムガイの『 ヒゲ 』だ…………しかも、超巨大な…………海の魔物と呼ばれるクラスのものだ。」

「海の魔物……。」

「…………この氷山の形…………ホールケーキ状だったが…………もしかして…………。」

「う、うん。もしかして…………。」



 ■現状のデータ

  季 節 : 初夏(6月)

  場 所 : アラルフィ(温暖なテラメディウス海)

  現 象 : 氷山が流れ着く

  大きさ : 高さ十メートル、幅三十メートル

  形 状 : ホールケーキのような円柱形?

  その他 : 氷柱の中に、巨大アンモナイトor巨大オウムガイのヒゲ?

        もしかしたら……この氷山の中身って…………。





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