ヒズミ、センセイを叱咤する 2
「いやー、運よく洞窟が見つかってよかったですね、センセイ」
「そうだなー」
突然の雨に降られた私たち。
しかし幸運にも、なんとか雨風をしのげる場所を見つけられた。
ぐぎゅる~~
でも、逃したウサギは大きかったのだ。
私たちはお腹がすいてしまい、その場にうずくまった。
「……お腹、すきましたね、センセイ」
「国を出るときさ、なんか携帯食料的なものを
持ってきてなかったっけ?」
「全部食べちゃったでしょ。ほとんど、センセイが」
「……そうだっけ」
そうなんだよ!
いつまでもこんなところでうずくまっていても仕方がない。
私は荷車の中から小さな手鍋を取り出すと、雨水を集めようと外へ出た。
(お茶の葉だけは余りがあるから、とりあえず急場をしのごう)
山々に降り注ぐ雨。薄い雨雲の向こうに見える太陽の光。
なんて幻想的な雰囲気なんだろう。
この山を越えた先に、魔法の国があるんだ。
はやく魔法の国にたどり着いて、さっさと
あのぐーたら男とオサラバしたいものだ。
(そういえば、どうしてセンセイは魔法の国に行きたいんだろう)
出発の時は余裕がなくて、
そんなことを気にもしていなかった。
私は雨水がたまった手鍋を持って、洞窟の中に戻った。
しかし、そこにはセンセイの姿はなかった。
私がいくら呼んでも、センセイは見つからなかった。
ただ一つ見つかったのは、
洞窟の奥から何者かがやってきたらしい『足跡』だった。
(この足跡……この大きさからすると、
この辺りに出ると聞く半獣半人の化け物か?
もしかして、センセイ連れ去られたんだろうか……)
この機会に、センセイを見捨てて出発してしまおうか。
しかし、出発前に私を応援してくれた人 (スポンサー)の顔が思い浮かぶ。
『ヒズミさん、私の息子をよろしくね。
こんなにか弱い子だけど、魔法の国まで連れて行ってほしいの』
よろしくね……
よろしくね……
よろしくね……っ
「ああっ、もう、仕方ないなぁ!!」
私は火打石でいそいそと松明をつくると、
足跡を追って洞窟の奥へと進んでいった。