女の子の買い物は長い
時刻は17時。
上級区に最近オープンしたお洒落なカフェ『サンサイド』
店長こだわりのコーヒーと店内のいたるところに飾ってある花が売りのこの店に、軽く目をつむり、ツヤツヤした顔でコーヒーを優雅に飲んでいる少女。アイリ。
その正面には、疲れでテーブルに突っ伏し、店の目玉であるコーヒーではなく、お子様のミルクを器用にちびちび飲んでいる青年(身長的には少年)。アオイ。
この、光と闇を体現したかのような僕ら二人は、異様な雰囲気を放っていた。
なぜかこのような状況に陥っているのかといえば、答えは簡単。
アイリの買い物に振り回され、何軒もの店をハシゴし、荷物持ちをさせられていた僕は疲労困憊。それに対し、荷物を気にせず気に入ったのものを片っ端から買っていたアイリは、有意義な1日を過ごすことができたことに満足しているのだろう。
しばらく無言でミルクを飲んd…え?なぜミルクかって?
そんなの決まっているだろう。コーヒーは苦くて飲めないからだ。
無言でミルクを飲んでいるとアイリが口を開いた。
「今日見ていて気になっていたのですが、アオイは何で身体の割に力があるのですか?」
アイリと僕が初めて会ったのは半年前だ。
冒険者をしていた頃の僕を知らないなら無理はない。
確かに体感で80キロ位あったからな。
「「身体の割に」は余分だろ。」
「私の荷物、結構重いと思ったのですが全部持っていましたよね。」
無視かよ…って
「お前が持たしたんだろ。それに重いと思ったら少しは手つd「ガッ」
僕の目の前の机にナイフが刺さる。
「つべこべ言わずに話してください。」
「は、はいっ。」
怖い笑顔ではある。
ここで魔法についての話になる。
別に難しい話ではない。
覚えているだろうか。魔力に命令を与えて魔法にするというやつだ。イメージがハッキリしている人の魔法ほど消費する魔力の効率が良くなる。要するに燃費が良くなるということだ。
そして強力な魔法ほどたくさんの魔力消費する。しかし魔力は人によって体内に貯めておける量(魔力保有量)に差がある。そして、この魔力保有量。これが多くなるに比例して、殆どの人が使える無属性魔法「身体強化」の効果が上がる。
何を隠そう僕の魔力保有量は世界一ィィィィ〜。
悪いこれはネタだ。大体10本指に入る位だろう。
え?それでも凄いって?照れるな〜(*´∀`)
それを踏まえてアイリに話した。
流石に10本指に入るとか言うと騒ぎになるので「他の人よりちょっと多い位」と言っておいた。
その後、アイリと荷物を家まで送り、帰路についた。
アイリの家から僕の店までは意外と遠い。
なんせアイリの家は王貴区にあるのだから。彼女も馬車も使わずによく来るよ。
僕は疲れた体にムチをうって、近道を使う為に裏路地に入った。
酒場が営業し始める19時頃、場所は自宅の裏口。
モゾモゾ、モゾモゾ。
僕は、怪しい動くゴミを見つけた。