復讐鬼
貧しいながらも平和だった俺の村は、突如、悪夢のような終わりを迎えた。
魔王軍に蹂躙され、最後には火を放たれたのだ。
焼け跡に、俺だけが呆然と座り込んでいる。
間もなく結婚する筈だった恋人達。
結婚して数年、漸く待望の子供を授かった夫婦。
結婚して十数年経つのに、ラブラブだった老夫婦。
憧れていた隣家のお姉さん。
幼馴染の友人達。
女手一つで俺を育ててくれた母親。
皆、皆…殺された。
どれだけ、動けずにいただろうか?
俺は、魔王を倒す決意を固めた。
勿論、直ぐには無理だ。
村を出て、魔物を狩って力を付ける。
最初は苦戦したが、直ぐにコツを掴む事が出来た。
ある日、逃げる魔物を追いかけていると、鎧を着た魔物が現れた。
俺の村を襲撃した魔王軍の兵士だ。
俺は憎しみのままに襲いかかり、惨殺する。
なんだ。弱いじゃないか。…いや、俺が強いのか。
善は急げと魔王城を目指す。
門番を倒し、破竹の勢いで魔王が居るであろう謁見の間へ突入した。
案の定、そこには魔王がいたが、情けなくも逃げようとしていた。
こんな腑抜けが魔王?! 弱い者にしか強く出られないような奴が?!
勿論、逃がしはせずに、魔王を守ろうとした兵士諸共惨殺してやった。
魔王は倒したが、俺の復讐はまだ終わらない。
魔王軍の残党も皆殺しにするのだ。
「ヒィ! 化け物~!」
魔王に虐げられていた筈の民衆が、残党狩りをしていた俺を見てそう叫んだ。
俺のどこが化け物だと!?
怒りのままに近付くと、腰を抜かした女の前に守るように立ちはだかった者が居た。
「もう、お止めなさい。彷徨える魂よ」
尼僧の言葉に、俺は、自分が襲撃で命を落としていた事を思い出した。
「100年もの妄執…かなりの怨念のようですが、もう充分でしょう?」
100年? 何を言っている?
『マダダ…魔王ノ手下…皆殺シダ…邪魔…スルナ!』
俺は、尼僧と女に化けた魔物を殺し、残党狩りに戻った。