第008話 入学試験!!
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 アルフォード・ウィンザー
冒険者ギルドを出て、北に足を向けて歩いている。そして、今、門の前にいるのだが、どうも部外者なので入りずらい。まあ、ここの学生になる事だし、入学の手続きといえば問題ないか…昨日ここに来ているので、教官室までの道順は分かる。
そうして歩いていると学生が模擬戦をしているのが見えた。遠目で見ていると、意外に白熱しているように見えたので、少し興味があって近づいて見ていると、遠目からは分からなかったが、動きが遅く見えた…これが現実なのだろう…レベルの差…バトルカウンターがあれば大体の強さが分かるだろうが…今は持っていない。模擬戦は10対10で、チーム長らしい人が忙しなく指示を出し、納得出来ないのか指示も強い口調になっている。しばらく様子を見ようかと思ったが、参考になる可能性がないので、そのまま教官室に行く事にした。
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 教官室 アルフォード・ウィンザー
教官室のドアを開けると、一斉に視線を浴びた…その中で見覚えのある教官、そう、アイオロス教官がいる。アイオロス教官に、フレイヤ理事長にお目通りをお願いした。理事長は在席しているようで、理事長室に入るように勧められた。
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 理事長室 アルフォード・ウィンザー
入ると同時に理事長から声を掛けられた…
「ようこそ…どう、この学園の生徒になる決心はついたの?」
『はい。』
「そう…B+の冒険者が当学園に入れば良い刺激になるわ…」
『すいません。出来ればB+の冒険者という事を公表しないでほしいのです。』
「どうして…」
『正直なところ、今の私ではそこまでの実力はありません。ど素人なのです…いろいろな期待に応えられるとは思えません。それに…』
「それに…?」
『今日、冒険者ギルドに行って、ここの医師でもあるグレースさんにクリスタルの状況を見て貰いました。クリスタルが砕けている状況だそうです。なので、半年は静かにクリスタルの回復を待ちながら暮らしたいし、その中で技術的な知識を覚えたいので…』
「そう…それは困ったはね…B+が公表出来ないのは…」
『それに、いきなりレベルが違う者が入れば、他の学生さんも気落ちするかもしれない、刺激というより、逆効果になるかもしれません。』
「そうね…そういう理由もあるか…困ったわね…」
『困ったというと…』
「基本的には、この学校の定員は毎年250名と決まっているの…募集人員をオーバーした場合は落ちているのよ…だから特待生として入学させようと考えていたのよ…」
『そうですか…B+の冒険者というステータスがなければ、入れられないという事なのですね…』
「ランクを隠しても、実際には良い刺激になると思うわ…教官たちに話して反対意見がなければ問題ないと思うけど…反対があった場合は…試験を受けてもらう事になるわ。」
『試験ですか…僕には生活の知識しかありませんよ。』
「それについては心配していないわ!!レベルが段違いよ…4年生でもレベル15位だもの…攻撃を受けても蚊に刺された程度よ…きっと。それに1年生は討伐の経験が無いでしょ…だから全員がレベル1なの…暫定というレベルで管理しているけど…それでもレベル5以下…あっちが全力で攻撃しても効かないわ。だけど…問題は攻撃よ…手加減しないで、攻撃したら普通の手刀で死にかねないわ…手加減出来る?」
『分かりませんよ。やった事が無いですから…』
「死なない程度なら、私が治療魔法が使えるので何とかするしかないでしょうね。それでは教官に話をしましょう。」
『模擬戦で命を落とす可能性があるというのはどうかと思うのですが…』
「結界を張れば、その問題はクリア出来るけど…その準備には時間がかかるのよ。使うのは、入学試験時の模擬戦と競技大会での個人戦・団体戦位よ…今回はあなたに頑張って貰うしかないわね。威圧すれば良いのよ…それで戦意喪失になると思うわ…」
学園長は不安な顔押している。多分、僕も同じような顔をしているに違いない…
■クリスタニア大陸 クリスタニア クリスタニア学園 教官室 フレイヤ・ミッターマイヤー理事長
教官室に来ると、教官全員が立ち上がり、理事長に挨拶をする。それに対して答礼した。
『突然ですが、このアルフォード・ウィンザー君を我が学園の特待生で迎えたいと思います。教官の意見を聞きたいのですが、何方か意見ありませんか?』
そうすると、周りを見ながら教官が意を唱えた。
「そのアルフォード・ウィンザーという子は何者なんですか?それが分からないのに…この学園は定員があります。特別な理由がないのに入れれば、試験に落ちた人が可哀相です。」
いきなり最もな意見が出てしまった。僕はどうするのかなぁと思うと、示し合せたように、アイオロス教官が、理事長の意見と教官の意見を取り入れて試験をすればと提案してきた。意見した教官は全てに納得した訳ではないが、試験をするならと納得したようだ。
『それでは、試験をするというアイオロス教官の意見を採用します。競技は何になさいますか?』
そうすると先程意見をした教官が再び手を挙げて話す。
「先程、理事長が特待生で迎えるという事でした。そういう事であれば、どうでしょう。新人のチーム長の誰かと模擬戦というのは…」
その提案に多くの教官は…それは無理だというジェスチャーを取ったが、理事長が納得したように返事をする。
『それもそうね…特待生なのだから…』
その事で、名のある家の子を無理やり入学させろと言われて、断る口実がないから理事長は遠まわしに言ってるのではと各教官は思ったに違いない。そうして僕は模擬戦に参加する事になった。
それにしても不思議な事がある。理事長の考えた事が100%現実になっている。後でその事を理事長に話したら、2人の教官に念波を送って、他の教官の意見を封じたのよと言われた。先程のやり取りが演技だったとは…僕のこの後の模擬戦でも演技をする必要があるだろうか…