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向こう側のシューズ
少し、昔話をしよう。なに、ほんの四年前の僕らが一番幸せだったときの話だ。
四年前のナミカワ家では、週末に服一式を研究所まで届けるという恒例行事があった。
僕らの両親は研究所勤務で―――僕らは今もなお何を研究していたのか知らないが―――週末だけ研究所に泊まり込む二人に、その日も妹と一緒に服一式と祖母と一緒に作った焼き菓子を持って出かけた。
研究所内では、何時も通りだったと思う。
お姉さんたちはお菓子をくれたし、父と母は頭をなでながら「ありがとう、助かったよ」なんて笑いかけた。