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Short Story  作者: 神崎 紗穂
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act.4 籠の中の鳥の歌

 どうしてボクはここにいるのかな?


 白い雲の浮かぶオゾン色の空とエメラルドに光る青い海を見て、茶色い地面に生える緑の草と赤や黄色の四季折々の花の匂いを楽しみ、雨上がりの透き通った風を感じながら、ボクはそこにいるはずなのに。


 どうしてボクは、ここに一人でいなくちゃいけないのかな?


 いつも近くに流れていた音。とても安らかで落ち着く音。

その音を聞くことが好きだったボク。

だけど今はどんなことをしても、あの音を聞けたあの場所には、もどれない。


 彼女の声。ボクに話しかけてくれた、優しくて穏やかな声。

ボクはいつも彼女の声を聞きながら眠りについていた。

それがボクの習慣だったから。そして、彼女はとても、あたたかかったから。


 ボクが見てみたかった世界。空を飛ぶ鳥のように、自由にはばたける場所。

もしもボクがそこで勝手気ままに飛んでいたら、彼女はきっと心配そうな眼で

ボクを見ていたのだろうね。

もしかしたら、時には怒りながら、時には笑いながら、ボクのことを追いかけまわして、それでも彼女はボクのことを愛してくれたんだろうね。



 こんな夢を見るようになったのは、多分ボクがここに一人でいるようになってからだと思う。

ここからは、月がとてもよく見えるから。

夜になると辺りはとても静かで、秋になると虫たちが演奏会を開くんだ。

ただね、新月の夜は泣きたくなるくらい、ひっそりしているんだよ。

そんなときにはね、ボクは独りぼっちなんだなぁって、しみじみしてしまうんだ。


 そういえば、今日は彼女に逢える日だったっけ。

ボクはね、この日をいつも楽しみに待っているんだ。だって、一人じゃない時間を過ごすことができるんだよ。

もちろん、道になんて迷わない。ボクを迎えてくれる目印があるんだもん。

ああ、もうすぐ着くよ、ボクの……。



「今日は、あのコが還ってくる日ね……」

「そうだな。一一生まれていれば今年11才だったな……」

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