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脇役の分際  作者: 猫田 蘭
大学生編
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五月の脇役 その三

 文字通り手も足も出せない魔女っ娘達。キュピルは問題外。さぁ、どうする?

 とりあえず「み~の~む~し~ごーろごろっ」とか歌いながら転がって逃げようか、どうしようか。あ、でもお腹のキュピルが邪魔できっとスピードが出ないまま捕まっちゃうね、アハハ。

 ……足手纏いどころじゃないな、このキャベツ。(ちっ)


 毎度の事だけど、だれかたすけてー!


 確か、前回あの眼鏡3人組(今は掛けてないけど)に絡まれた時は、光山君がいかにもヒーローっぽいタイミングで助けに来てくれたんだよねぇ。でもなぁ、さすがに今回はだめだろうなぁ。

 ってゆーか、来たら来たでコメントに困る。連休中の私のスケジュールも把握してるんですか、なんて怖い事聞いてしまいそうになる。


 そもそもコレって、正確には私のぴんちではないんだよね。魔女っ娘のぴんちに巻き込まれてるだけで。……ってことは、もうそろそろ魔女っ娘用のヒーローでも現れるんじゃない? お腹にキュピルがくくり付けられている限り、ついでに私も助けてもらえるに違いないよね?


 ダークナイト達はなぜか攻撃の手を止めてニヤニヤ笑いながら魔女っ娘達を眺めている。

 いやいやいや。ちょっと、早く助けてあげようよ、なんかすごく彼女達が不憫だよ。


 なんでもいいからはやくきてー、はやくぅ、と一心不乱に祈っていると、やがて期待通りにその辺の空間(多分魔女っ娘の頭上なんだろうけど地面に転がっているという不本意な体勢なので遠近感が……)がぴかーっと光った。


 やったー、救援だぁ。だって将軍がひるんでいるもの。

 ……光の色が緑であることから察するに、多分アレはお野菜だ。まぁ、いいけど。別にミステリアスな謎の青年とかを期待してたわけじゃないから。


 光はある程度の大きさで一旦収束すると、突如縦に伸びた。ほんとーに、転がっているせいで正しくはわからないけれど、多分電柱ほどに伸び、やがて形をとった。


 そして現れたのは巨大なアスパラガス。アスパラ……。緑の電柱みたいなアスパラ。ここまで伸びるとおいしいのかどうか不明だなぁ。いや、はっきり言うとまずそう。


「キサマはっ! 我が宿敵アルルンかっ!」

「久々あるるん、バードック……」

「き、キサマっ、いつのまにそんなに伸びたのだ!」

 35年ぶりに再会した宿敵への最初の質問がそれか。さては長さで張り合ってたな、あんたら。将軍も長いと思ったけど、残念、アルルンの圧勝だ。


 将軍は悔しさのあまり(?)「うぐぐぐぐ」なんて呻いている。

「おのれ、おのれぇっ! 35年前のあの日、キサマの騎士に折られてさえいなければ……!」

 折ったんか! 先代、思い切ったことしたなぁ。


 アルルンはそんな将軍にはお構いなしに、キョロキョロとあたりを見回した。

「キュピル? キュピルはどこあるるん?」

 お宅の役立たずは私の腹に張り付いて絶賛気絶中です、という私の心の声が聞こえたのか、アルルンはこちらにぐいっと身体を傾けた。ひぃぃ、倒れてこないでっ、潰されるぅ。

 どうでもいいけど、語尾にフルネームくっつけるのは自己主張激しすぎるとおもうんだ!


「キュピル、しっかりするあるるん」

 アルルンが呼びかけると、その頭の先からぽわ~っと光るものが出てキュピルにふりそそいだ。よーせーさんの粉的なものだろうか。


「きゅ、ぴぃ……」

 キュピルがうっすらと意識をとりもどす。

「キュピル、こんなところで倒れてはダメあるるん。女王様のためにがんばるあるるん」

「きゅぴぃ……じょ、おう、さま……」

 女王様、という存在が相当大きいのだろう、反応がしっかりしてきた。


 ……ところであの、ちょっといいですか? このキャベツを復活させるより、あなたがその立派なお身体でダークナイトを一気になぎ払ったほうが解決早いと思うんですけどね?

 それともあれか、お助けキャラにありがちの「本人はすっごく強いけど、後輩の成長を期待して、あえて手は出さない」タイプですか?

 そんな悠長な事ばっかり言ってるから、あとから更なるトラブルが発生するんですけど、その辺しっかり考えた事ありますか?


「じょ、おうさまの、ために、キュピルは、キュピル、は……」

「そうあるるん。今こそ本当の力を目覚めさせるあるるん!」

 私のお腹と半ばから曲がった電柱(緑色)の感動的なシーンはまだまだ続く。

 魔女っ娘は相変わらず吊るし上げられたまま。ダークナイト達は「アングルが……」とか「やはり三次元はこのくらいが限界……」とか「腹減ってきた」とか、暢気におしゃべりしている。 


 あぁ、懐かしいなぁ。そうだよね、この人達ってこうだったよね。いつも三人で集まって、周囲の状況には目もくれずゲーム機つきあわせて自分達の世界を作り上げてたよね。


「これを受け取るあるるん!」

 アルルンが、箱を掲げた。なるほど、あの節のところにある葉っぱみたいなの(ハカマとか言うんだっけ?)が手なんだなぁ……。二枚だけやけに長いと思ったら。


「そ、それは、まさかっ」

 キュピルより先に将軍が目を見開き、叫んだ。

「何をしているっ! 我が騎士達よ、あの箱を奪い取るのだ! アレには、先代のライトフェアリーの騎士の魔力がっ」

 折られた事が余程トラウマなのか、先代の騎士の力の詰まった箱とやらに動揺した将軍が、サボっているダークナイト達をけしかけた。


 将軍の慌てた声に、いち早く反応したターメリック卿(あえて、騎士としての名前で呼びたい)が、さっきの「ダークストーム」を繰り出すが、大木のようなアルルンには堪えない。

 エシャロット卿、ラディッシュ卿の攻撃にもびくともしない。ほんと、アルルンが自力で戦ってくれたらすぐなんだけどなぁ。


 ダークナイト達がちくちくと攻撃を仕掛けているのを無視して、一玉と一本は見詰め合い、「先代の……」「そうあるるん。先代の親衛隊が残した力……」なんて話を進めている。

 双方の会話から察するに、先代の魔女っ娘はどうやら魔力重視タイプだったようだ。なんで今回は物理攻撃重視なんだろう? 本人達の適正ゆえ?


「きゅ、きゅぴいいいいいい!」

 アルルンに激励され、キュピルが叫んだ。

 おー、本当の力とやらを目覚めさせるのか? 覚醒しちゃうのか? バージョンアップして、こんどこそ理想の妖精さんスタイル(本体はかわいい女の子で、ドレス部分がキャベツ)に進化するのか?


「ぴっ!」

 ふんっ、と息を吐き出すようにして、キュピルは「剥けた」。べりっと。そして、私のお腹から脱出した。


 ……脱皮? え、まさかそれだけ?


「オレンジ! ストロベリー! ピーチ! 今助けるきゅぴー!」

 若干ピカピカのつやつやになったキュピルが、アルルンから受け取った箱を魔女っ娘達に向けて開け放つ。

「し、しまった!」

 バードック将軍は大慌てで「汚いぞ、ライトフェアリーどもめっ」なんて叫びつつ飛び回る。

 んー、まぁ、ここぞというタイミングで大逆転アイテムが出てくるっていうのは、主人公特典とはいえズルいよね。私だって敵側だったら反則だって声高に主張するよ。(でも今は主人公側の脇役だから見て見ぬフリ)


 さて、何がでるかなーとわくわくする事30秒。「ごぽっ」という音とともに大量の泡があふれ出してきた。そしてみるみる膨れ上がる。


 泡、泡、泡。

 虹色の泡があふれ出て、魔女っ娘達を縛っていた鞭(ってゆーか、蔓)を溶かし、さらにはダークナイト達と将軍に襲い掛かった。


「おかしいあるるん……。シャボン玉だったはずあるるん……」

「古くなってたきゅぴ~?」

 い、いま、なんか怖い事聞いた! 古くなってた魔法の泡って、なんか怖い! 助けてほしいけど触りたくない!


 束縛を解かれた魔女っ娘達は、泡に溺れて魔法を使いあぐねているダークナイト達を蹴る、殴る、引っかく。う、うわぁ、やっぱり肉弾戦だと強いなぁ。猫の喧嘩みたいだけど……。


「くっ、今日のところはこのくらいにしておいてやるっ!」

 魔法を封じられたダークナイト達の劣勢っぷりに、将軍は今時信じられないほどお約束のセリフをはいて撤退していった。「おぼえてろっ」とか、完全に負け犬フラグだから。

 今後、出るたびにそう言うはめになるフラグだから!


 新たな強敵(?)を撃退して喜ぶ魔女っ娘達とキュピル、そしてアルルン。を、地面に転がったまま見上げる私。

 あの謎の泡に触れないですんでよかったと思うべきか、最後まで転がされてた事を悲しむべきか。


「あ、あのぅ……」

 私は、彼女達の興奮が一段落つくまで待ち、声をかけた。

「たすけてください」


 とりあえず一件落着してなにより。でも、なみだがでちゃう。だっておんなのこですもの。(しくしく)


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