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脇役の分際  作者: 猫田 蘭
高校生編
5/180

5月の脇役そのに

 敵対する宇宙生物を見事捕獲し終わったら、きちんと元通り生き返らせて任務から開放してやると、脅迫にしか思えない申し出をされて何とか立ち直った5人は、色分けまでさくっと決めてしまった。

 どうせやるなら童心に帰ろうという半ばやけっぱちなハイテンションなのが丸分かりで、見ているこっちは気の毒すぎていたたまれない。


 中山君がレッド。

 野球部の熱血少年にはふさわしいポジションだ。レッドといえば基本は熱血正義漢(ちょっとバカ)だもんね!

 日焼けしたつり目気味の顔は向こうっ気が強そうで、いかにも考えなしに無茶な事しますって感じ。レッドは無計画に突っ走ってトラブルメーカーになるものだもんね。


 根岸さんはホワイト。

 イエローはどうしても嫌なのだそうだ。カレーが嫌いだからという理由で。今時イエロー=カレーと直結するのって古くない? いや、分かる私も古いんだけど。

 彼女とは同じ文芸部で、珍しく実体のある部員なので少々交流がある。

 メガネをかけて髪をキッチリ編みこみ三つ編みにしている知的美人で、全く隙がなさそうな人だと常々思っていた。マニア受けしそうだ。

 この5人組はきっと彼女が仕切ることになるだろう。


 福島君はブルー。

 普段から制服は着崩してシルバーアクセじゃらじゃら、茶髪にたれ目、しかも左目の下に涙黒子まである、もうホストになったらいいんじゃないかな、みたいなチャラい外見の、みるからにダルそうな彼にはまぁ、似合う色だろう。

 私の個人的な先入観では、5人戦隊のブルーって知的クール系なんだけど、それだと根岸さんとかぶっちゃうもんね。それに、あのやる気の無さをクールと表現すれば……。う、うぅむ。

 そもそも彼みたいな人が練習に遅刻もせずやってきたことも意外だ。もしかしてチャラそうなのは見た目だけなのか? 実は真面目? ギャップ萌え狙い?


 水橋さんは、髪の毛ふわふわで、ちっさくてかわいい。

 テニス部所属で、その割にあまり日焼けしていない。いつもコートで元気いっぱいにボールを追っかけている。理想的な小動物キャラで、もう、当然ピンクである。

 ピンクは可愛くなくてはいけないと世界の法則で決まっている。よかった、水橋さんがいてくれて。


 そして5人戦隊モノとして一番意外だった竜胆君は、始終無言であったけれども、ブラックということになった。

 この竜胆君は、私が今年の初めにチェックした「武士っぽい人」である。

 どう武士っぽいのかと突っ込まれると説明し難いが、今時の若者にそぐわぬほどキリっとした顔つきと、全体的にしっかり身体が出来上がっていそうなところが武士っぽい。ほら、現代っ子って、結構甘やかされて育ってるから顔つきも甘いイメージじゃぁないか。


 いやぁ、てっきり彼は剣道関係のイベントを起こすと踏んでいたのだが……。剣道部だし。戦隊モノのスーツとか着て欲しくないというかなんというか。


「で、盛沢さんはどうしよっか?」

 え。なんて言ったの水橋さん。私の存在に気付いてた?今まで空気みたいな扱いだったのに今更?

「え、わ、私? 無理だよ、戦うとか。そもそも私……」

 死んでないし、とはいかに無神経でも口にするべきではなかろうと飲み込んだ。


 私にとっては、彼らの身に起こったことは「主人公イベント」だが、わが身に起きた立場では少なくとも喜ばしい事ではない。でも、あの、脇役業もご遠慮したいんですぅ。

 あと、物語の途中から追加される6人目の助っ人的立場はもっと御免こうむります。


「盛沢さんは、私達のサポートをしてほしいの。何か起こったときのつじつまあわせとか、アリバイ作りとか。ね?」

 根岸さんが意味深に微笑む。いや、正義の味方だよね?犯罪みたいな言い方しないでほしいな!


 まぁ正義の味方って、色々偽装して身分を隠すものだもんね、必要な事だね。あの変な語尾の毛玉さえ押し付けられなければ、5人戦隊のサポート業務くらい引き受けても、いい、かなぁ……。ハハハ。

 そう、毛玉であるが、名前は地球人には発音が難しすぎるので「ケセラン様」と呼ぶことになった。様を付けるのはご本人(?)の希望である。

 うっとうしさがレベルアップして握りつぶしてやりたい。せめてしゃべり方を矯正しようとしたのだが……。

「む、言語が間違ってるなう?語尾に『なう』とつけるのがこの地域の言語じゃないなう?」

それは限られた世界での話だと思う、通常会話では止めた方が良いと進言したが、「今更設定を変えるのめんどくさいなう」と却下された。あぁ、叩き落としたい。

 てゆーか設定って、翻訳機とかですか?その身体のどこについてるんですか。あと、さっきの棒どうやって使ったんですか、手足無いのに。超能力?


 ……ケセラン様は、厳正なる押し付け合いの結果リーダー(=レッド)が引き取るべきだということになりました。


 さて、ところで私は異世界トリッパーの相談役に加え、5人戦隊のサポート係まで兼任する事になったわけですが、これはやはり、別個に秘密にしておくべきことだよねぇ。


 あぁ、やっぱりめんどくさい。「おうさまのみみはろばのみみいいいいぃぃぃ!」と叫んだ人の気持ちが良く分かる。そもそも、それぞれに対して私は微妙に人格を変えているので、今後混同してボロを出さないように注意しなくてはいけませんな。

 一々ころっころ人格変えて演じるのは面倒だから、差し障りの無いようになんとかすりあわせなくてはなるまい。片や不思議好き天然風、片や引け腰の気弱系(むしろこっちが地に近い)、さてどうやって融合させたものか。


 週明けて月曜日、会長からお土産として鍵つきの宝石箱をもらった。たぶんこれ、装飾自体が宝石だよね、価値ちゃんと分かってんの? 異世界でどんな暮らししてんの?


 会長から土産をもらっているところを、例の、我が家のお庭に興味津々らしい3人組に目撃され、こそばゆい勘違いをされた。

 付き合ってなんかないから。ヤツはあっちで3人の姫君に囲まれてハーレムよろしくやってるから。って、言えないいいいい! 「本の貸し借りしてるだけだよ」と誤魔化すのが精一杯だ。とても悔しい。

 何が悔しいって、私が照れて否定してると思われてるところが。なんだその甘酸っぱい設定。


 にしても、お土産はちょっと人目に付きにくいところで渡されたはずなんだけど。ストーカーか?見張ってるのか? そんなにガーデンパーティがしたいのか?

 どうやら会長のファンというわけでもなさそうだし……。という事はこの子達も厄介ごとなんだろうなぁ。(遠い目)とりあえず次の厄介ごとは中間テストが終わってからでありますように。


 球技大会? 我らがヒーロー(けっ)光山君と、スーパー戦隊(涙目)の大活躍で、バレーは見事無敗で優勝した。

 私? 私は補欠仲間の7名マイナス1名、つまり6名で雑用のようなことをさせられて大活躍でしたよ?

 全員女の子(マイナスの1名はエスケープ常習犯の男子なのでノーカウント)だったのでチアリーダーでもさせようかという話も出たけれど、元々全員運動が不得意ゆえに補欠なのでそんなキビキビした動きはできまい、と、めでたく却下になった。


 でもスポーツドリンクの配達も、グラウンドや体育館がやたらと多いこの学校では、なかなか疲れるお仕事だったのですよ……。

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