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脇役の分際  作者: 猫田 蘭
高校生編
49/180

2月の脇役そのに

 見て見ぬふりをしよう、と決心したはずなのに、私は翌日から彼らの行動をじっくり観察し始めた。

攻略対象とそうでない相手の違いとやらをなんとしても見つけてやりたくて。これは女の意地だ、戦いだ。なんで私はダメなんだよ!


 二日ほど見ていて分かってきたことがある。基本的に、彼らが接触する女の子はダブっていない。(例外もいるのだが)

 しかし、そんなことよりも大事なことがあるんだ。……私、みんなのパラメーターらしきものが見えてるんですけど。


 例えば私の前の席の瀬名さんの頭上(空中部分)には、ピンク色の文字でこう書いてある。


 瀬名 くるみ(せな くるみ)

 6月30日(蟹座) O型

 ★A攻略中★

 「好感度」35 「親密度」20

 食べ物:マドレーヌ

 場所:雑貨屋

 プレゼント:?


 そうかと思えば右隣の貫井さんの頭上にはブルーの文字が躍っている。


 貫井 菖蒲(ぬくい あやめ) 

 12月1日(射手座)?型

 ★K攻略中★

 「向原」200 

 「好感度」0 「親密度」1

 食べ物:?  

 場所:?  

 プレゼント:薔薇


 基本的に彼氏持ちはブルーで、フリーの子はピンク。おそらくこれで対象を分けているのだな。彼氏持ちまで対象とは、なんて情け容赦のないゲームだろう。


 ブルーを攻略中なのは松澤君のほうらしい。好感度と親密度ってのはたぶんプレイヤーに対する数値だよね。200が満タンの状態みたいだから、貫井さんは向原君に首ったけなんですね。松澤君の入る余地なしだね。ザマミロ。


 そして、二人ともが接触している子はパープルである。パープル組は3人いて、篠崎さん、野島さん、手越さんがこれに属する。この子達がどういう分類なのかが謎だ。

 う~ん、篠崎さんと野島さんには村山君がいて、手越さんには平井君と山岸君がいるけど、はっきりした関係ではない、ということかぁ?


 最初は中川君の攻略対象なのかとも思ったんだけど、彼だけは今までとほとんど変わらないんだよね。なんか、パソコン持ち込んでパチパチ打ち込んでる姿は見るけど。

 ……これ作ったの、中川君っぽいなぁ。一体どんな超能力もってたんだよ中川君。でも、モンスターを狩って野生生活を楽しむゲームを選ばなかったのは賢明だよ。


 とにかくパラメーターがちらちら見えるせいで色々まずいこと知っちゃったんです。どうしよう。

 具体的にいうと1年のときのあの大恋愛カップルの内情である。いけないいけないと思いつつも、見えちゃうんだよ、仕方ないじゃん。


 出席番号10番、巽 文香さん。こちらは23番、北条 昭洋君とお付き合いが続いているはずなのだが……。パラメーターが大変な事になっている。


 「北条」80  「鈴木」80

 「好感度」40 「親密度」25


 松澤君の好感度が意外と高まってるのも問題なんだけど。その上の文字の方が大変だ。


 ……す、鈴木君が巻き返している! 鈴木君というのは出席番号7番、鈴木 久君の事で、1年のときに巽さんに横恋慕していた彼だ。今では北条君の幼馴染である14番、夏目 静さんとくっついているはずなんだけどな!


 そして夏目さんのパラメーターもすごい。


 「鈴木」20  「北条」180


 未だにほぼ北条君しか目に入ってないってことですよね?

 おいおい、これはひょっとしてひょっとするんじゃないかね。4月の私の懸念どおりこじれそうな気配が濃厚じゃぁないか? このリアルギャルゲーのせいで、入れ替えが起こってしまうんじゃないかなぁ……。あぁいやだ、そんなドロドロした第二部は知りたくない。


 こんなパラメーターが奴らにも見えているのなら、私、攻略対象外で全然構わないような気がしてきた。人様の恋心なんざ視覚化するものじゃないよ。そっとしといておやりよ、無粋な連中だな!


 しかし、なぜ私にこんなものが見えるようになってしまったんだろう。は、まさか私もプレイヤーになってたりする?

 奴らの魔の手から救う為に、先に女の子たちを口説けってか? えぇー、めんどくさぁい。(ごろごろ)


 冗談はさておき、階段で接触した時に聞こえたあのエラー音(だよなぁ、あのマヌケな音は)を聞いて以来、こうなったんだよね。クラス外の女の子見てもパラメーターは出てこないので、実は気付いたの翌朝なんだけど。


 ということは、今、彼らのゲームはバグってるということではないかね?

 バグって、ゲームとかの製作者にとっては消去対象ですよ、ね?


 ……よし、やはり見て見ぬふりに戻ろう。間違っても私にパラメーターが見えていると気付かれちゃいけないね。階段でも「これ」呼ばわりされたくらいだし、すごくアッサリと消去されちゃいそうだ。


 数日間は平和に過ごせた、気がする。どうしても見えてしまうパラメーターの数値変動や、聞こえてきてしまう好感度アップダウンの音さえ意識しなければ、全くと言っていいほど平和な日常だった。


 しゃらららら~ん。

 ぷっきゅる~ぅ。

 しゃらららら~ん。ちゃららっ。

 ぷっきゅる~ぅ。


 ……耳栓して過ごせればなぁ。

 てゆーか流石リアルギャルゲー。そう簡単には好感度も親密度も上がらないのだな。


 彼ら自身も悪いんだよね。たまに余計な一言つけちゃうんだもん。お前らの失言のたびに間抜けな音聞かされるこっちの身にもなってくれ。一日中聞いていたせいか耳に残って、なんだか幻聴まで聞こえてきた。頭痛もする。あ、ほんとに痛い、すごく痛い、いたたた。


 私はたまらず、頭痛薬をもらいに保健室へと向かった。


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