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脇役の分際  作者: 猫田 蘭
高校生編
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12月の脇役そのに

 それから、篠崎さんによる嫌がらせ(としか思えない行動)が始まった。シューズボックス、ロッカー、机の中から出てくるありとあらゆる御札、御札、御札! いじめ? ねぇこれ、いじめ?

 無言で片付けていると村山君がどこからともなく現れて「監督不行き届きですみませんっ」と言いながらゴミ袋に回収していく。


 私が彼女たちに絡まれていることを知ると、誰もが口をそろえてこう言った。「ロシアンルーレットに当たっちゃったようなものだよ」と。でも私、いつ引き金引いたんだろう……。


「なんで私なんだろう……」

 考えてもサッパリわからないので、貫井さんに「献血」をする代わりに相談にのってもらうことにした。

「そぉねぇ。くぅちゃんって、変わり者をひきつけちゃう体質なのは確かなんでしょうねぇ」

 貫井さんはケタケタ笑いながらアッサリ言った。あなたもその中の一人ですよね?


「魅了と言い切るには意思でのコントロールができてないみたいだけど。いっそのこと練習してみたら?」

「もうちょっと真面目に!」

 血を提供するんだからそれなりに知恵を貸して欲しいものだ。長生きしてるみたいだしさ。


「んー、確かに『篠崎』と『野島』っていうのは、聞いたことがあるわ。篠崎は、昔はそれなりの力を持った陰陽師の家系で、野島はそこに代々護衛として仕えてきた家よ」

 ……ち、本人の妄想設定じゃなかったのか。


「でもねぇ、そもそも篠崎家は3代くらい前に力を失って、零落したって聞いたけどー?」

「じゃぁ、彼女はお家復興とか考えてるの?」

 それで手当たり次第に難癖つけて退治しようとしてるのか。ヘボだけど。見当違いだけど。


「さぁ? たぶんそうなんじゃないかしら。でも、本人には全く力なんかないわよ。保証する。さ、篠崎さんと野島さんの情報はこれでオシマイ」

 う。貫井さんの目が……。

「さぁ麗しの乙女よ。甘きしずくを我に差し出せ」

 芝居がかった調子で言って、彼女は私の首筋に、牙を立てた。


 だるー。貧血と戦いながらなんとか家にたどり着くと、魔女っ娘どもがお出迎えしてくれたので更に脱力した。なんでいるの? なんで夕食のお支度してるの?

「あ、おかえりなさぁい」

 瀬名さんがエプロンをつけてお出迎えしてくれた。ワァイ、新婚さんみたい。

 じゃなくて。


「なにしてるの……?」

「いやぁ、パトロールしてたら、盛沢ちゃんのおかーさまに会ってね」

「コンサート行ってくるって。病気で行けなくなったお友達のかわりに。今日はお父様も学会で遅いから、盛沢さんが一人で寂しくないように、良かったらって」

 由良さんがかき回しているお鍋の中身は多分クリームシチューと思われる。牡蠣が入ってるといいなぁ、バターで軽く炒めたやつ。

 いや、だからそうじゃなくて。


「えーと、それで母から鍵を預かって夕食作ってくれてたの、かな?」

「そーそ。いつも果物ご馳走様って、お茶までいただいちゃったよー」

 あははー、と、一人リビングのソファーでくつろぎきっている氷見さんが能天気に笑った。キュピルは生意気にクッションを重ねた上で熟睡している。寝息さえ「きゅぴー」とは……。


 軽く暖めたクロワッサンとシチュー、そしてサラダというメニューで夕食が始まった。

食事中の話題はもちろんここ最近の私のスキャンダルである。

 やけになった私は、先月中学生に拉致された時会長が助けてくれなかった事をいいつけてやった! どうだ、ヤツは優しくていい人なんかじゃないんだぞ!


「でも、盛沢さんが好きなランチボックス買ってるのみたよー?」

「イチゴ牛乳も買ってたしねぇ」

 イチゴ牛乳が好きな事まで知られている!


 あ、いや、違うんだよ。イチゴ牛乳が好きな女の子は実はイチゴ牛乳ではなくてそれを買って「可愛い」と言われる自分が好きなんだ、と陰口を叩く人もいるけど、私が好きなのはあのピンク色の安っぽい見た目とそれを裏切らない味なんだ。すごく安心する。だから決してぶりっ子してるわけじゃないんだ。分かってくれるよね?


「う、まぁ、お蔭でお昼は食べられたんだけど……」

「ほらぁ。愛されてるねぇ盛沢ちゃん。多分光山君はさぁ、寂しくてすねてたんだよ」

 ヤツがそんな可愛いタマか! なんであんたたちはそんなにアイツに肩入れするのさ。


「そもそも光山君とは付き合ってるわけでもないんだったら」

「えー、じゃぁ本命は竜胆君なのー?」

 瀬名さんがぐっと身を乗り出してきた。……そういうわけでもないんだよなぁ。

 たまにキュンとくるのは確かなんだけど、彼と恋人になった自分が想像できない。結婚生活は想像できるのに。

 ってそんなことは良いからもっとご近所の平和に目を向けろ!


「そ、それよりも新しいタイプのダークフェアリーが出たとか先月聞いたけど……」

「ダークフェアリーの気配きゅぴい!」

 丁度いいタイミングでキュピルが飛び起きた。よしよし、たまには役に立つな。寝ぼけただけなのかもしれないけど。ほらいけ、女王親衛隊。あ、寒いからコート着ていこうね。


 新しいタイプは人の影を盗んで実体化するらしい。お陰で真冬に全裸で踊る可哀想な人を見ないで済むようになった。それと同時に本体に危害を加えなくて済むようになったため、魔女っ娘達の過激さはますますエスカレートしていた。

 ひっ、今、あの由良さんが、あの大人しそうな由良さんが飛び蹴りをっ?


「フェアリーバトン!」

 瀬名さんが叫ぶと赤い光の中から、中世の騎士が振り回していたようなメイスっぽいものが現れた。バトンか。それをバトンって言っちゃうのか。まぁいいけど。

 とにかく鈍器まで参戦して大変な惨事である。良かった、敵が生身じゃなくて。ありがとう、進化してくれた悪い妖精さん!


 氷見さんが『フェアリー・プリフィケーション!』と大絶叫(ご近所の人が見てませんように!)しながら喰らわせた踵落としを脳天にうけ、敵は撃沈した。もうあれだよね、なんでもフェアリーつけりゃ良いって思ってるよね。


 相も変わらず、魔女っ娘ものとしてはいまいちな戦闘であった。むしろこれは格闘ものなんだろうか。あぁ、私に任せてもらえたらもっと夢いっぱいに改造するのに。

 まずはその、学校指定のセーラー服から改造したくてたまらない。ふりる! ぱにえ! 絶対領域! みたいな? 一体変身の責任者は誰なんだ……。


 時間も時間なので、三人にはそのままうちに寄らず帰るように勧めた。標準の武器が学校指定のバッグという人達なので忘れ物もないし、食事もほぼ終わっていたし、あんまり遅くなるとまずいだろう。女の子なんだから。


 片付けを手伝わない事を謝りながら帰っていく3人を見送って、さぁ帰ろうときびすを返し、二回ほど角を曲がった所で。

「みたわよぉ、盛沢さん!」

 ……まずい相手に、出くわした。


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