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脇役の分際  作者: 猫田 蘭
大学生編
179/180

三月の脇役 その十一

 まぁつまり、米良さん達は彼女の必殺技ドミノ倒しによって、案の定全滅しかけたわけだ。

 ある意味、うん。期待通りと言ってあげるべきなんだろうか。ドジっ子ヒロイン的に。

 そこから例の世界に飛ばされて、傷を癒したりじゃれたりと、一ヶ月くらい過ごして、やっと全員ひきつれて帰ってきたらなぜか「三日しか経っていなかった」、と。


 三日しかってなにさ、三日しか、って! 待つ方にとっては「三日も」だよ、心配したんだから!

 特に一角獣なんか情緒不安定になって私の事いじめようとするしさ。ライオンだって、なんだかんだいって不安がってたし。

 だ、だからその、二人を慰めようとしてあんな恰好してたんだよ、私は。(ということにしておきたい)


「そうだったんだぁ……。心配掛けてごめんね、盛沢さん」

「え? あ、うん」

 ごめんなさい後半嘘でした。魔がさしただけでした。そんなに真剣に謝られるとちょっと、うん。

 心が痛いよ? 視線合わせらんないよ?


 仕方がない、会話の対象を広げよう。

「で、でもみなさん無事に帰ってきてくださって、うれしいです」

「でもってなんだ」

 ひぃ、クラブさんから即突っ込みいただいちゃいましたぁ!


 確かに今の繋ぎ方は唐突だったかもしれないですけどね? ほんと、心からそう思ってるんですよ。

 だってこのままハートさんの秘密指令「ライオンと一角獣の事、頼んだわよ計画」を実行することになったら大変だったもん。とても面倒見切れないし。


 ってゆーか、元の世界に戻る手掛かりが米良さんとクローバーさんなんだから、帰ってきてくれなきゃ本気で困るところだった。

 だから、ちゃんと約束守ってくれてありがとう。


「あ、そういえば元の世界……」

 米良さんが、ぽん、と手を打ち鳴らした。え、まさか忘れてた?

「わ、忘れてたわけじゃないよ? ん~そっかぁ、やっぱり盛沢さんは帰りたいかぁ」

「え、こっちに永住する気だったの?」

「それもいいかな~って。だって、『Nobody』の幹部全員とお友達になれたんだよ? すごくない?」


 な、なんとゆー作品愛……!

 いやいや、ご家族とか、何より滝川君はいいの?

 え、付き合ってるわけじゃないし口うるさくて最近ウザい? で、でもそれはほら、彼の個性だし。

 多分米良さんのためを思って色々言ってるところもあると思うんだけどな~。な~……。(これが倦怠期か!)


「米良さんの気持もわかるけど、私はやっぱり帰りたいな。一応仕事もあるし。あ、家の手伝いだけどね」

「だよねぇ。わたしも、こっちで暮らすとしてもお母さんに挨拶くらいはしたいしな~」

 それにあの作品の続きも気になるし、「Reincarnation of the last edge」が深夜枠でアニメ化するって噂もあるし、と悩みだす米良さん。


 未練たっぷりじゃん! そんなんじゃ絶対、帰った方がいいよ。後悔するよ。やっぱり異世界トリップ定住ってのは余程の覚悟か諦めがないとなかなか難しいと思うんだ。……穂積さんみたいにさ。(ぼそ)


「あー、でもみんなと別れたくないよぉ!」

「そこなんだけどねぇ。盛り上がってるとこ悪いんだけどね、桃果」

「私たちも、そちらにおじゃましようと思っているのよ」

 へ?


「俺達はもう、ここにいるべきではない存在になってしまったからな」

「うむ、それがよさそうだ。なに、お嬢さん方に迷惑は掛けんよ」

 え、ちょ、オリジナルのみなさん何言い出すですか?

 私の聞き違いかな? なんか、みんなで(世界を)引っ越そう、みたいな雰囲気なんだけど、まさかね?


「そのまさかだよぉ。きゃは、楽しみぃ☆」

「全ては我が主の御心のままに」

 だ、ダイヤさんが乗り気だ。しかも今心読んだよね? 勝手に読んだよねぇ? だったらわかるでしょ、困るんですってそういうの!

 スペードさんもそろそろ自分の意見持とうよ。せっかく生還したんだしさぁ。


「ほんとにっ? ほんとにみんな、来てくれるの?」

 こらこら米良さん、目をキラキラさせて食い付かない。

 駄目だって、こんな物騒な人達連れてかえったらまたえらいことになっちゃうって! 滝川君から散々その危険性について語られただろうにこの人はも~!

 うぅ、私一人で説得できるかなぁ。難しそうだなぁ。でも、やるだけやってみよう、これからの平和な生活のために。


「あの。私としても皆さまと離れ難い気持はあるんです。あるんですけど、それはちょっと問題ではないでしょうか。例えば住む場所とか」

「そうねぇ。しばらくはホテル暮らしかしらねぇ。ハート、せっかくだからのんびり一緒に旅行にでも行きましょうか」

「あら、それならアタシ、クルーズに行きたいわ。地中海あたりでのんびりしましょうよ、お母様」

 さすが発想がお金持ちだ……。アパートを見つけようとか、そういう方向には行かないんだ。手ごわいな。


「さ、先立つものは……」

 この漫画は現代日本を舞台にしているから、多分お札のデザインなんかは一緒だとは思うんだけど。

 でも、厳密には造幣局が違うわけで、ということはこちらでは正規のお札だったとしても、あっちに持って行ったら偽札になってしまうんじゃないだろうか。どうなんだろうそのへん。


 物語でたまに見る、貴金属売り払うって手もなぁ。

 実際は、名の知れたメーカー品じゃないと結構買い叩かれるって聞くし。金も、刻印がないとどうなんだろう。

 あぁもうめんどくしゃーっ!


「それにそれに、戸籍とか!」

「……あのなぁ。オレ達をなんだと思ってンだ?」

「は、犯罪集団……」

「わかってんじゃネェか」

 クローバーさんがくっくっく、と悪そうに嗤った。あ、やばい。これはスルーしとくべきだったかもしれない。グレイゾーンより先は知りたくないよ!


「わかりました、聞きたくないですごめんなさい」

 素直に負けを認めて謝れば、カップさんから「良い子ね」と褒められた。ついでにクルーズに誘われた。ち、地中海!

 ……遠慮しといたよ、春休み中に帰って来られなくなる可能性大だったから。


     *****


 クローバーさんが、御愛用の銃の銃口を、自らのこめかみにピタリとつけた。

 あ、別に自棄を起こしてるとか、そういうんじゃないから。どうやらこれが、彼の能力の発動条件みたいで。

 ほら、彼ってば遺伝子をいじって超能力を持った人間を作ろうっていうプロジェクトの、失敗作って事になってたじゃない? そのせいでグレて、ああいう凶暴な人格が形成されちゃったんだけどさ。(あれ、でもクラブさんもなんか……あれ~?)


 ところがこの一連のトリップ騒動は、無いと思われていたクローバーさんの超能力が原因だったらしいんだ。

 まぁ薄々そうじゃないかと思ってはいた。少なくともクローバーさんと爆発が関係あるんだろうなって、ずっと思ってた。

 正しくは「クローバーさんが命の危機に瀕しているときに近くで爆発が起こるとトリップする」らしい。


 それで、どうして頭に銃口向けてるのかっていうと、弾丸が発射されるときのちっちゃな爆発もカウントされることがわかったから。

 こっちに飛ばされて来た時。天井に向かって発砲した、あれがまさに引き金だったわけだ。でも、わざわざ頭に向けんでもなぁ。大丈夫ってわかってても怖いよ!


「覚悟は良いか?」

 ちゃき、と撃鉄の音。

 うわぁ、こんな時でもなんか、カッコいいように見えるのはすごいなぁ。さすがスタイリッシュアクションファンタジー漫画だぜ……。

「いつでもイイわ。もったいぶっていないで、さっさとしてちょうだい」


 ところでハートさんを含め、「Nobody」の幹部の皆様(と、ライオンと一角獣人間バージョン)は揃って軽装なんだけど、いいんですか?

 着のみ着のままって感じなんだけど、ほんとに……あ、いや、もう詮索しません。調達方法なんか聞きたくありませんからっ!


「じゃ、イクぜ」

 うぅ、これでうっかり「やっぱり超能力があるっていうのは勘違いでしたぁ」なんてオチがつきませんように! グロ禁止。グロ禁止だからね、くれぐれもお願いしますよ!

 私は両手で顔を覆って、更にぎゅっと目をつぶった。見てられないもん!


 ぱんっ。


 プラスチックの板を思い切りよく割るような音。

 それから、目の前が真っ白になった。


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