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脇役の分際  作者: 猫田 蘭
大学生編
174/180

三月の脇役 その六

 ダイヤさんの超能力はテレパシーと、それを利用した軽い暗示である。

 彼女はいつもその方法で、戦う相手から戦意を奪ったり、時には仲間割れさせたりしていた。

 顔に似合わずエグいことをするよね!


 そんなダイヤさんの力を受け継いだということは、米良さんもそういうことができるようになったわけで。

 やけにはしゃぐ米良さんの提案で、それぞれ離れた部屋に移動して、テレパシーでお話しましょうということになった。


『もしもし~? 盛沢さん聞こえる~?』

 うん、聞こえる。聞こえるんだけど、どうやって返事したらいいんですかね? さすがに3階のはじっこの客間と、地下のワイン倉は遠すぎると思うんだ。これじゃ気軽に質問もできない。

 は、それとも実は既に思考でつながっちゃってたりする? 私の考えてることだだ漏れ?


『もしもしぃ? 聞こえてたら返事して~』

 ……でもなかった。(ほっ)

 じゃぁまだ、イベント丸ごとハブられた私にわざわざ力をみせびらかすなんて鬼か、この鬼っ! とか考えてもだいじょーぶなんだね。

 あー、なんか、今ならエルヴァさんと組んで世界滅ぼすのもいいような気がしてきた。そして、主役も脇役もない新しい世界を作るんだ。


 …………こほん。まぁ冗談はさておき。

 返事をしたくてもできないのに、やたら催促されているこの状況はいただけないなぁ。

 チャージもきちんとしてあるパスモが、なぜか繰り返し改札機で引っかかる、みたいなイラっと感があるではないか!


 かといって聞こえてるよと返事をするために地下まで降りるのもめんどくしゃい。

 電話ないの~? せめて呼び鈴みたいなもの。


『あ、そっか! そうですよねハートさん。ごめん盛沢さん! そうだよね、返事のしかたがわかんないんだね?』

 おぅ? さては私以外とはもう繋がりずみか。指摘されるまで気付かないとか、米良さんはうっかりさんだなぁ。

 そうなんだよ、他の二人はともかく私は全くの初心者なんだからお手柔らかに。


『あのね、わたしのことを思い浮かべて、伝えたいって念じるの!』

 念じる、ですか……。

 えーと、米良さん~、米良さん~めらさんにとどけ~。


「つぅっ?」

 突然、ずぎゅっ、という痛みが脳を貫いた。とたんに頭の中で米良さんとクローバーさんとハートさんのイメージが点滅するみたいに浮かんでは消える。


 うわなにこれきもちわるい。


『あはは、ちょっとびっくりするよねぇ』

 ん、なるほど。こうなると思考が筒抜けになっちゃうのかな?

 ……注意しないと。

『あぁん? それでなんかマズいことでもあんのかよ』

 め、滅相もございません。(あんたと違ってこっちは複雑な思考回路持ってるもんでねぇ)


『ケンカ売ってんのか、あ”ぁっ?』

『そぉよねぇ。クローバーみたいに、口を開く前に銃ぶっぱなすようなおバカとは違うわよねぇ』

 ひぃしまった! 副音声の本音が漏れたっ!


 やだー、もぉやだこれ。プライバシーもなにもあったもんじゃないよ。

 てゆーか、なんで私までつながらなきゃいけないの?

『コツは、伝えたい言葉と思考を切り離すコトね。ま、数年もすれば慣れるわよ』

『わたしはダイヤさんの記憶が教えてくれたけど……。盛沢さん、作戦の間だけだから、がまんしてね?』


 数年もこんな物騒なトコいませんよっ? なに言ってるんですか。

 そもそもなんで私まで「生き残り大作戦」に参戦することになってるのっ? しませんからね。安全地帯で待ってますからね! できればヒロイン組の末席あたりに加えていただけるとうれしいです。


 そしたら私、窓越しに、止まない雨を見つめながら不安そうな顔で唇かみしめたり、目を閉じてそっと名前を呼んでみたりして時間つぶしてられるんで。

 帰ってきたらみんなで食べるお料理のメニューとか考えながら、健気に(ぬくぬくと)待ってるんで!


 だいたい、オリジナルさんたちとのイベント丸々ハブられた時点で、私は部外者だもの! ただの巻き込まれた通りすがりだもの!

 今更メインキャストに加われって言ったって遅いんだからぁっ!


『……盛沢さんって、実はそういうキャラだったんだ?』

『はっ。ふてぶてしい女』

『あら、カシコイのよ。ねぇ?』

 な、なにさなにさ。自分がかわいいのはしょーがないじゃん? それに私、本当に何の力もないからすぐ……ぁ。

 

 あ~あ~あ~!

 だめだめ、思考停止、シャットダウン。

『え、なに? どうしたの盛沢さん。今、なにかリングみたいな……』

 なんでもないったら、ないっ!


 ぶちっ


 回線が途切れる感覚がして、私はくたりと床に崩れ落ちた。

 あ、あぶにゃー!

 より重要度の高い秘密を隠すためとはいえ、色々本性をさらけ出しすぎた気がする。だってだって、とにかく何か考え続けてないとさぁ……。

 うぅ。みんなばっかりコントロールできちゃってズルいよ……。ひどいよ……。

 なんかこう、大事なものをいくつも失ったような気持ち。


 そこまでして隠そうとしたってのに、結局指輪のことがちらっと浮かんじゃうしさぁ。あぁ、バレたかな? 聞こえちゃったかな?

 指輪の事がバレるとなし崩し的に光山君や竜胆君のアレとかコレにつながるし、あとはもう、芋蔓式だからなぁ。


 さすがに人様の秘密を勝手にバラすわけにはいかないよ。特に米良さんは、大喜びで突撃取材かましそうだし。怖い怖い。

 あ~、怖いと言えば、ちょっと前に私の後ろで聞こえた「ちゃき」って音の発信源もこわいな~。


「で? さっきのはなんだぁ?」

「うぅ、もうこんな世界イヤだ。なんでもかんでも銃で解決するしか能のない男なんてサイテーだ……。ほろびたらいい」

「言うようになったじゃねぇか」


 身体能力「だけ」はずば抜けているクローバーさんが、ベランダ越しに1階からよじ登ってきたようです。あぁ、今はスペードさんの力を受け継いでるから透視も使えるのか。

 わぁ、鬼に金棒というより、なんとかに刃物ですね。(にこ)


「アレは私の個人的な情報です。公開する気はありません。ってゆーか、こんなか弱そうな女の子にいちいち銃をつきつけるのやめてください」

「ハートとそっくりすぎてか弱くみえねぇんだよ! それになぁ、今更俺に猫かぶって見せても仕方ねぇだろうが。お前、第一印象から怪しかったんだよ!」

「ええ~?」


 え、どこが? 大抵の初対面の皆様から、「よくできたお嬢さんねぇ」とご好評いただいているこの私の、どこがっ?

「はじめ俺がお前をハートと間違えた時、わかってたんだろ、本当はよぉ」

「な、なにがですか?」

 えっと、あの時何したっけ私。


「俺が本物の、その、……漫画のキャラクターで、本気でお前をハートだと思って。自分が違う世界に飛ばされたって気付いてない事まで、全部わかってすっとぼけやがっただろ?」

「……ぁ~」

 あ~あ~。はいはいはい思い出しました。うんまぁ、うん。ご推察の通りですが?

 いやぁ、よく覚えてたねぇ。


「俺が倒れてる現場さえ見なかったお前が、漫画から飛ばされてきたなんてフザけた設定、簡単に受け入れられるわけがねーんだ。涼だってはじめは否定したんだからな。桃果だけだぜ、そんなアホ」


 マジであいつは、とんでもねぇアホだ。とクローバーさんは苦笑した。

 わぁ、口ではディスりながら微笑むとかなにフラグ? ねぇねぇ何フラグ?


「ってことは、だ。もしかするとお前は、そういうことが起こり得るって元から知ってたんじゃねぇか、と思い至ったワケだ。幸い時間だけはたっぷりあったからな。で、さっきのやりとりで確信した。……お前、妙なことに関わるの、これが初めてじゃねぇんだろ」


 くっ。クローバーさんのくせに、この私を言葉で追いつめるとは! やるなっ!

「あっちにいた頃からおかしいとは思ってたんだがな。さすがにもう、誤魔化せねぇぞ」

 クローバーさんはぐっとこちらに顔を寄せて、正面から私の目を覗き込んだ。え、なに、いきなりそういう展開?


「お前、あの変なオンナが言ってた通り、ハート……それか、カップの生まれ変わり、なんだろ? だから、こうなるってわかってたんだろ!」

 ぐはっ! と、途中まですごくいいとこついてたのに、最後そう来たかぁ。


 クローバーさんの目は真剣だ。いたって真剣だ。

 ということはコレ、本気で言っているらしい。生まれ変わる前と後の魂が同じ時間軸に同時に存在するのって、アリなのか? すっごくパラドックス的な何かが起こってしまいそうな気がするんだけどな~。ナシだよな~。


 しかし、本気で正解を当てたと思い込んでいる彼に、どう答えたものか。

 やはりここは意趣返しも兼ねて焦らすのがセオリーだろーか。毎度毎度銃を突きつけられてるんだから、ちょっとからかうくらい、許されるよね?


 私はできるかぎり謎めいて見えるだろう微笑みを浮かべてから、そっと目を伏せた。

 クローバーさんがたじろぐ気配がする。


 ……うふふ、た~のしぃ。(にたぁ)


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